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【ヨミ】メンターセイド メンター制度

業務だけに限定せず精神面でのサポートも行う「メンター制度」は、人材育成はもとより、社員の定着率の向上に貢献する制度です。近年、多様な人材の雇用が進むなかで浮上している、チームワークや組織風土における課題を解決する糸口としても注目されています。ここでは、メンター制度のメリット・デメリットの理解を深めるとともに、導入にあたって必要となるマニュアル作成方法や運用時の注意点についても詳しく見ていきます。
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1. メンター制度の概要

メンター制度とは

「メンター」という言葉には助言を与える者や指導者という意味合いがあり、仕事に限定せず、生き方全般において「師」となる存在を指します。仕事だけでなく個人的な問題や悩みなどにも広く相談に乗り、ビジネスパーソンとしての心の持ち方や基礎力を磨くための支援を行います。

メンタル的なサポートをする先輩社員を「メンター」、サポートされる側の社員を「メンティー」と呼びます。仕事上の上下関係が発生しやすい直属の上司ではなく、他部署などの先輩社員をメンターにするのが一般的で、メンターは特定のメンティーを担当します。

メンター制度は新人や若手社員の自律や定着を促す目的で取り入れられるケースが多くなっていますが、中堅社員や幹部社員も対象となります。女性活躍推進を目的に、結婚や出産などのライフイベントを抱える女性社員に特化したメンター制度を導入している企業もあります。

メンター制度が必要とされる背景

近年は、入社3年以内の若手社員の離職率が課題となっている企業が多く存在します。早期離職の原因として多く挙げられるのが、「社内の人間関係がうまくいかない」「仕事がうまくいかない」など、職場環境や仕事への適応に関するもの。こうした状況が起こる背景には、職場環境が時代とともに変化していることが挙げられます。

従来、日本の企業は終身雇用・年功序列制度のなかで、学校の延長的な「先輩」「後輩」という師弟関係を築きやすい職場環境にありました。「先輩社員は社会生活を含めて後輩を指導するもの」という図式が成り立ち、入社した社員は先輩を見習いながら、会社に貢献できる人材になるべく努めてきました。

しかし、バブル経済崩壊後は実力主義の組織体制へと移行する企業が増加。昨今は多様化への対応からフラットな組織へと方向転換する企業も多くなっています。結果、先輩が後輩を指導するという従来型の組織風土が形成されず、若手社員が孤立しやすいという課題を抱えるようになりました。

メンター制度が必要とされる背景には、日本の企業が従来持っていた人材育成やチームワークが醸成される風土を人為的に作り出そうという狙いがあります。

OJTやエルダー制度との違い

従来、企業が若手社員に実施している教育制度として、OJT(On-The-Job Training)があります。またメンター制度と混同されがちなエルダー制度やシスター・ブラザー制度などもあります。これらの制度とメンター制度では、対象である「人」と「目的」が異なります。

OJTはその名の通り、実際の現場での仕事を通して具体的な業務を教えます。一般的にエルダー制度は、職場や仕事の相談役となる先輩社員をつける点はメンター制度と同様ですが、対象を新入・若手社員に限定している点で異なります。とくに対象社員と年齢が近い先輩社員を相談役とするときに「ブラザー・シスター制度」と呼ばれることもあります。

メンター制度では、年次を限定せず全社員が対象になり得ること、実務だけでなくメンタル面やキャリア形成のサポートなどが目的となる点で他の制度と異なります

2. メンター制度導入のメリット・デメリット

メンター制度の導入にあたっては、メリット・デメリットを理解した上で目的を明確にすることが大切です。以下、具体的に見ていきましょう。

メンター制度導入のメリット

新入社員・若手社員のモチベーション維持

新入社員・若手社員は職場環境や人に慣れていないため、一人で不安を抱え込むことが少なくありません。メンター制度によって気軽にコミュニケーションを取れる先輩がいることで職場になじみやすくなり、早期離職の防止にもつながります。また、不安が解消されることで仕事への意欲を維持しやすくなるメリットもあります。

メンターとなる先輩社員の成長

人に教えることで、教える人自身もさまざまな学びを得ることができます。あらためて自分自身を見つめ直したり学び直したりするなど、メンター自身の成長にもつながります。また、多様な考え方や視点を身につけるきっかけにもなります。

他部署間のコミュニケーションを促進

OJTやエルダー制度では、基本的に同じ部署の先輩が教えることが多いのに対して、メンター制度では別部署の先輩社員が担当することが一般的です。そのため、業務で直接的な関わりがない社員間でのコミュニケーションが促進され、組織の活性化が期待されます。

女性の活躍促進をサポート

女性がキャリアを形成していく上で、妊娠・出産などのライフイベントやそれにまつわる迷いはつきものです。同性のメンターが自ら手本となり相談にのることで、キャリアビジョンを描くことができ、女性活躍推進に効果を発揮します。

キャリア社員のモチベーションアップ

中堅社員や幹部社員もメンターの対象となり得ます。キャリアを重ねてきた社員は、マネジメントやチームの実績などに追われ、プレッシャーやストレスを感じやすい上、待遇などに不満を感じやすい世代。キャリア社員に1対1のメンティーがつき、じっくりと相談に乗って今後のキャリアプランなどをアドバイスすることで、モチベーションアップにつながります。

メンター制度導入のデメリット

メリットが多いメンター制度ですが、一方でデメリットもあります。

相性によっては悪い結果を招く

メンター制度は基本的に、メンターとメンティーの間に良好な人間関係が築かれることが前提です。そのため、相性が悪いと、相談をするどころかメンティーがストレスを感じる結果になってしまいます。

逆効果とならないためにも両者の相性をよく検討して決めることが大切です。また、初回面談の状況から、場合によってはメンターを変更するなどの仕組みを整えておくことも必要です。

メンターとなる先輩社員の負担

メンターとなる先輩社員にとっては、メンターの役割は通常の業務にプラスされる任務です。そのためメンターとなる先輩社員は、業務上の負担が大きくなります。メンター選出の際には、候補となる先輩社員だけでなくその上司ともよく話し、メンターとして行ってほしいことを具体的にしておくとよいでしょう。

メンターの質のばらつき

メンターとなる先輩社員の知識やスキル、人柄によっては、メンティーとなる新入社員・若手社員の成長に差が出てしまうことがあります。メンターへの事前研修やレクチャーを行い、なおかつ途中で状況をヒアリングするなど、メンター任せの属人的な内容にならないように注意する必要があります。

3. メンター制度のマニュアル作成にあたって決めておくべきこと

メンター制度を運用していくために必要となるのがマニュアル作成です。作成するにあたっては、事前に次のことを決めておくとスムーズです。

メンターの役割の明確化

まずはメンターの役割や意義を明確にして、メンターとなる社員に共有することが大切です。

メンターの役割として挙げられるのは、主に以下のものです。自社の目的に合わせて、メンターに期待することを整理しておく必要があります。

  • メンティーのメンタル的なサポート、相談相手
  • メンティーが実現したい目標・ゴールの明確化
  • メンティーの目標・ゴールに対する現状把握
  • 上記に基づくメンティーへの行動計画アドバイス・支援

メンター選出における適性評価のポイント

メンターとなる先輩社員とメンティーとの相性が制度導入の効果を大きく左右します。メンターとしての適性評価をする際の判断基準には次のものがあります。

成功と失敗の経験があるか

メンターには、メンティーが仕事に行き詰まったときに適切なアドバイスを行える力量が求められます。メンター自身に成功と失敗の経験があるとより具体的な助言を行えるため、メンティーに対して説得力を持てるようになります。失敗が成長につながった経験などを持つ先輩社員を選出するのが理想的といえます。

コミュニケーション能力があるか

メンターとなる先輩社員には、気軽に話しかけやすい雰囲気やメンティーとなる後輩への積極的なコミュニケーションが必要です。また、メンティーの個性を理解することに努め、自分の意見を押しつけないなど聞き役に回れるコミュニケーション能力があるかどうかも重要なポイントです。

客観的な助言ができるか

メンティーの心情に寄り添うことは重要ですが、メンターはときに、道標を示してメンティーを導いていくことも必要です。目の前の問題に同調するのではなく、問題点を整理しながら客観的に物事を判断する力が求められます。

人の成長を喜べるか

メンターはメンティーを支援する立場ですが、決して上からの目線で指導する役割ではありません。親が子どもの成長を喜ぶように、メンティーに寄り添ってその成長を喜べるか、また愛情を持って人の助けとなることができる人柄であるかどうかも大切なポイントです。

メンターとの相性

すでに述べている通り、メンターとメンティーの相性はとても大切。相性がメンター制度の成否の鍵をにぎっていると言っても過言ではありません。メンターとなる社員の性格や人間性を考慮してメンターを選ばなければなりません。

目標設定

メンター制度で解決したい課題を整理し、目標を具体的にします。一般に、メンター制度は新入社員・若手社員の定着と自律を目的に行うことが多くなっていますが、その他にも有効な課題があります。以下、参考事例を見てみましょう。

目標設定の例 対象となるメンティー
新人・若手社員の定着・自律の促進 新人・若手社員
キャリア形成の促進 中堅社員・キャリア採用社員
幹部社員の育成 幹部候補社員・幹部社員
女性社員の定着・活躍推進 女性社員

メンターを選出する際は、目標達成に向けてもっとも適した人材を見定める必要があります。たとえば、結婚や出産を理由に退職する女性社員が多いことが課題となっている場合、出産や子育ての経験がある女性社員をメンターに選ぶことが望ましいといえます。

このように自社での課題を明確にした上で目標を立て、運用していくことが効果を高めるポイントになります。

運用体制の検討とルール策定

メンター制度をうまく機能させるには、メンターと運営側のコミュニケーションも重要です。そのため、以下をルール化しておくことが必要です。

  • メンターとの定期的な活動報告についてのルール
  • 問題があった場合の報告や指示系統のルール
  • メンティーとの面談にかかった費用の精算ルール など

結果を求めるだけでなく、メンターとなる社員が活動しやすい体制をつくることも成功に導くための重要ポイントです。

メンターに向けて事前研修を実施

メンターとなる社員は、メンティーのプライベートや個人的な悩みを聞く機会があります。そのため、守秘義務を徹底するなどメンターとしての適切な振る舞いを心得ておかなければなりません。事前研修ではメンターとしての役割を共有するほか、必要なスキルや注意点について理解を深めておく必要があります。

4. メンター制度のマニュアル作成方法

メンター制度のマニュアル作成にあたっては、次のような方法があります。

自前で作成する

ゼロベースから自社内でマニュアルを作成するのは容易ではありませんが、以下のサイトに参考となるモデルがあります。自社の課題や目的に合わせて、入れるべき項目を整理するとよいでしょう。

外部に依頼する

日本メンター協会や、メンター制度の導入支援を行っている企業に外注する方法です。個の場合、マニュアル作成だけでなく導入までのプロセスなど、メンター制度導入についての幅広い支援を受けることも可能です。まずは一度相談してみるとよいでしょう。

自社の課題に合わせてマニュアルのカスタマイズを

業種や企業規模、会社が置かれているビジネス環境などによっても、設定される課題や目標は異なります。マニュアル作成においては、自社の課題解決に即した内容となっているか十分に留意しなければなりません。

また、メンター制度が目指すゴールや意義を全社員に理解してもらうことも重要なポイントです。運用をスタートしたあともマニュアルの見直しを行い、自社にとって最適なものにカスタマイズしていく必要があります。

5. メンター制度の事例

ここでは、メンター制度の導入で効果を得られた企業の事例を紹介します。

若手社員の早期戦力化を目的としたA社(食品メーカー)の事例

課題 ・若手社員の即戦力化を人材育成にすえていたが、部門間における成長度合いのばらつきが顕著である
・現場の混乱を収束するためメンター制度導入に踏み切る
実施内容 ・新入社員配属が決定する5月〜翌年3月まで実施
・月1回はメンター・新入社員
・メンター上司の三者面談を実施
・四半期ごとに報告・振り返り・修正を行った
・一人のメンティーに二人のメンターをつける「ダブルメンター」も適用
メンターの選定基準 ・メンターは所属部門の上司が指名。選出に際しては「同じ部署に所属」「新入社員育成への興味・関心度」「忍耐力がある」「自分自身の仕事に情熱を持っている」などの選出基準を設定
・入社5年目までの30歳未満の若手先輩社員を対象とした
運用のポイント ・選出されたメンターは、年4回の育成支援研修を受講し育成スキルを習得。メンターがモチベーションを持てるように期待値を伝えることも重視した
・研修はグループワーク中心。意見を出し合い、質のばらつきを是正した
効果 ・新入社員の成長促進
・若手社員の育成指導力向上
・全社的な人材育成風土の醸成
・メンターの振り返りを通して、育成ハンドブックを作成(メンター制度を通したノウハウの蓄積)

出典:部下のやる気を引き出し、自律を促す「メンター制度」(後編) 新入社員を職場全体で育てていく、キーパーソンとしての「メンター」の役割とは?

全国の新人営業社員のメンタルフォローを目的としたB社(生命保険)の事例

課題 ・1万人あまりの従業員のうち8割が営業担当。若手営業スタッフのメンタル面の揺らぎが課題
・小さい支社では年の近い先輩がいない場合がある
・配属先は縁もゆかりもない地域の場合もあり、孤独感や不安が募るケースが見られる
実施内容 ・新人が配属される5月から翌年3月にかけて実施
・3月に外部講師を招いてメンターへの事前研修を実施
・4月にメンター・メンティーの対面式を実施
・メンターとメンティーは遠隔であるため、月2回の電話によるメンタリング ・メールによるメンタリングは原則NG
・メンターには専用掲示板を設置
・メンターは月1回の報告書作成
メンターの選定基準 ・社員の熱意と主体性が重要と考え、メンターは公募制とし希望者は原則全員受け入れた
・営業という職制上、利害関係のないマッチングを行った
運用のポイント ・管理職からもメンター希望者が多かったため、「メンターのメンター」となる「シニア・メンター」を設置。シニア・メンターがメンターへの助言を行い、チーム体制で運用にあたった。
効果 ・メンタリング終了後もメンターとメンティーの友好な人間関係が続いている
・新入社員の人脈拡大
・メンターの成長
・社外に対しても「人を大切にする会社」という印象づけができた

出典:部下のやる気を引き出し、自律を促す「メンター制度」(後編) 新入社員を職場全体で育てていく、キーパーソンとしての「メンター」の役割とは?

6. 制度導入の成否を左右するメンターの育成が重要ポイントに

メンター制度は、社員のメンタルをサポートするだけでなく、人材を育てる組織風土の醸成やコミュニケーションの活性化など、企業にさまざまなメリットをもたらすものです。

しかし一方では、メンターの質が問われるなど運用における難しさも指摘されています。現在ではメンター育成に力を注いでいる企業の事例も多くなっており、スキルや運用ポイントの可視化も進んでいます。導入を検討する際は、他社の成功事例なども参考にしながら、自社に適した方法を検討することが求められます。

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