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人事マネジメント「解体新書」

若手社員のやる気を引き出し、自律を促す「メンター制度」(前編)
“人を育てる組織”をどう実現するのか

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「メンター制度」を導入することで、若手社員の定着・育成を図ろうとする企業は多い。さらには、メンター制度を運用していく中で、新入社員の定着・育成だけでなく、「メンター」としての先輩若手社員の成長にもつなげようとする企業が増えている。職場全体で人を育てていこうとする風土の醸成も期待されるが、具体的には、どのようにメンター制度を実施していけばいいのか。「前編」では、メンター制度の持つ意味と、運用する上でのポイントを解説する。

労働力不足の時代に求められる「メンター制度」
◆「メンター」がいることで、仕事に対する満足感、活躍実感が高まる

メンターとは「心の師」という意味だが、新入社員を中心に部下や後輩・同僚などに対して、ビジネススキルだけでなく仕事観や生き方まで、全人格的にサポートするリーダーを指す。地位や役職に関係なく、特色あるリーダーシップを発揮するリーダーと言ってもいいだろう。ビジネスパーソンとしての基礎ができていない新入社員が持つ不安・悩み事をメンターがフォローするために、「メンター制度」を取り入れる企業は多い。

メンター制度では、支援する側をメンター、支援を受ける側をメンティと呼ぶのが一般的だ。人事・教育部門が中心となって現場を巻き込みながら、メンター候補者の募集、選定、マッチング、導入教育、運用フォローなどを行うケースが多い。

メンターの持つ意義・重要性を知る意味で、興味深いデータがある。リクルートキャリアが実施した「就職活動と入社後の就業に関する調査」(2014年)によると、入社1年目時のメンター・教育担当者などの有無によって、新入社員の仕事に対する満足感、活躍実感に違いが生じているのだ。満足かつ活躍できた層では、メンター・教育担当者などがいる人が7割を超え、また「同じ部署の先輩」「上司」に目標となった人がいた割合は9割近くに達している(*赤字部分)。このように新入社員にメンター・教育担当者を付けることは、仕事に対するさまざまな不安を解消するだけでなく、本人のやる気や活躍にも大きな影響を与えることがよく分かる。

図1:入社一年目の「職場・仕事に対する満足感」と「同期と比較した時の仕事上での活躍実感」に与える「メンター・教育担当者」などの有無などの実態

 同期と比較して
~活躍していた
同期と比較して
~活躍していなかった
職場・仕事に対して
~満足していた
「満足×活躍」の特徴
・メンターがいた:72.8%
・目標となった人がいた:89.6%
・周囲からの評価実感:80%台
「満足×非活躍」の特徴
・メンターがいた:71.2%
・目標となった人がいた:78.8%
・周囲からの評価実感:40~60%台
職場・仕事に対して
~満足していなかった
「不満足×活躍」の特徴
・メンターがいた:52.7%
・目標となった人がいない:42.9%
・周囲からの評価実感:60~70%台
「不満足×非活躍」の特徴
・メンターがいた:51.6%
・目標となった人がいない:52.4%
・周囲からの評価実感:20%台
*「就職活動と入社後の就業に関する調査‐若手社会人の入社1年目の状況 分析編-」(リクルートキャリア/2014年)から一部加工した
◆一人前のビジネスパーソンとしての「基礎体力」を叩き込む

メンターは、メンティと本音で話し合うことができ、精神的に一体化できる存在と言える。メンターはメンティの自主性を第一にし、本人の自律を促す。自分で考え、判断し、決めることができるようにさせるのだ。人は他人から細かく指図されて行動するよりも、自分で考えて行動する方が自律意識が高まり、何倍もやる気が出るからだ。

上司はチームとして成果を出すことを第一に考えるため、部下に仕事を与え、「Plan-Do-Check」を通じて仕事を教え、スキルを磨かせることが多いだろう。しかしメンターは、業務上必要な仕事の技術はもちろんだが、それに加えて、部下が一人前になるための「モノの見方・考え方」を教えていく存在だ。例えば営業であれば、販売テクニックだけにとどまらず、営業という仕事の本質や本当のやりがい、市場や顧客の読み方など、本人が大きく育ち、自律する上での土台・基礎となる部分を教える。

極論すれば、上司から簡単に解決策や結論を教えてもらっても、そのスキルは本人の身にはならない。自分の頭で考えて選択肢を選び、失敗も経験する中で、初めて身に付くからだ。だからこそメンターは、そのプロセスの中で “伴走者”として重要な役割を果たす。そして、土台・基礎となる部分を教えてもらったメンティは生涯、メンターを「心の師」として考えるようになる。

◆一人のメンターが100人の「自律型社員」を生み出す

メンターに育てられた若手社員はその後のキャリアにおいて、自分もメンター的なリーダーになろうと努力し、やがて人を育てる存在になる。メンターに育てられた「子」は、「親」であるメンターのやり方や発想をそっくりとまねる。実際、リーダーの指導スタイルは、そのリーダー自身の育ち方、特に新入社員時代の上司のあり様が大きく影響することは、よく知られる事実だ。

このようにメンターとメンティの師弟の結び付きは次代への継承性が高く、仕事のやり方、考え方、部下指導の手法などを確実に受け継いでいく。その結果、一人のメンターが、多くのメンター候補を生み出すことになる。メンターによって育てられた人材がその下の世代を育てる「縦の関係」に加え、異動や転勤といった「横への拡散」とも重なり、組織内でじわじわと拡散していく。

仮に、一人を育てる(自律させる)のに1年かかるとして、10年なら単純に10人となる。そして、その10人がまた年に10人ずつ育てていくとすると、計算上、100人もの自律した社員を生み出すことになる。メンター制度により、自然拡散的に社員が社員を育成していく仕組みができ上がり、成果を出す社員が増えていくのだ。将来的に労働力不足が懸念されているが、メンター制度は人の育成と生産性向上という側面から見ても、重要な役割を担っていることがわかる。

 


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