職場のモヤモヤ解決図鑑【第64回】
メンターに任命された!でも何をすれば良いの?[前編を読む]
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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志田 徹(しだ とおる)
都内メーカー勤務の35才。営業主任で夏樹の上司。頼りないが根は真面目。
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児玉 夏樹(こだま なつき)
社会人3年目の25才。志田の部下。ネットとサブカルが好き。
新入社員のメンターを務めることになった児玉さん。メンターには精神面のサポートを担うなど、単なる教育係にとどまらない役割を期待されます。メンターの役割やスキル、メンター制度のメリットについて説明します。
メンターとは
メンターとは、助言を与える人や指導者を意味する言葉です。企業内でのメンターは、仕事を教えるだけではなく、生き方全般の模範となるような存在を指します。メンタル面のサポートを含め、新人教育を担当する社員は「メンター」、サポートされる側の社員は「メンティー」と呼ばれます。
メンティーは、仕事の不安や疑問、キャリアなどさまざまなことをメンターに相談できます。現場で仕事を教えるOJTとは異なり、他部署の先輩がメンターを務めるケースも見られます。メンター制度は、新人や若手社員に安心感を与え、早期離職を予防する効果が期待できます。
- 【参考】
- メンター制度
メンターの役割と求められるスキル
メンターの主な役割には、以下のものがあります。
- ビジネススキルや業務の指導
- 精神面、メンタルのサポート
- キャリア形成のサポート
企業によっては、メンタルサポートとキャリア形成支援に特化したメンター制度を導入するところもあります。別部署の先輩など、あえて業務上のかかわりがない社員がメンターになることで、部署を越えたつながりが生まれます。その場合、メンターの過去の業務経験や、現在のキャリアでメンティーとの接点があると信頼関係を形成する助けとなり、エンゲージメントの向上が期待できます。
メンティーの不安を取り除き、自律的な働き方を助けるため、メンターには以下のスキルが求められます。
- 基本的なメンターのスキルの理解
(命令しない、説得しない、聞く姿勢を心がける) - 傾聴スキル
- コーチングスキル
- プライバシーの尊重についての理解
はじめてメンターを担当する社員は、事前研修でメンターの基本的な役割について理解する必要があります。メンターはただ仲良く話すだけでなく、メンティーが気づきを得るような問いかけをすることが重要です。傾聴やコーチングのスキルについて学ぶことで、適切な関わり方が身に付きます。
メンターがキャリアについて適切なアドバイスをするためには、評価制度やキャリアプランについて理解している必要があります。メンティーのプライベートな情報を第三者へもらすことのないように注意することも重要です。
メンターを担うメリットと注意点
メンター制度は、メンティーである新人社員の支えとなるだけではなく、メンターを担う社員が成長する機会でもあります。
メンター制度を設けるメリット
メンター制度には、以下のようなメリットがあります。
メンター自身の成長につながる
メンターを務める上で、コーチングスキルやマネジメントスキルが求められます。業務とは異なるスキルを磨くきっかけとなり、メンターを担当した社員の成長につながります。
若手人材の離職防止につながる
メンティーはメンターと信頼関係を築くことで、職場に居場所を感じられます。直属の上司や人事に話しづらい話題でも、打ち明けられる存在がいるという安心感も得られます。入社後の不安解消につながり、人材の離職防止にも役立つでしょう。
メンターのキャリアスキルの棚卸しになる
メンター制度は、メンターにとって自分自身のキャリアを振り返るきっかけになります。メンティーの育成を考えながら、自身の成長を見つめなおす機会となるのです。キャリアについて相談を受けることは、メンターが会社やキャリア形成について理解を深めることにもつながります。
メンター制度の注意点
企業がメンター制度を導入する際は、以下の点に注意が必要です。
メンター制度の目的、役割などを事前に共有する
メンターをはじめて担当する社員が、制度の目的やメンターの役割を理解するために、事前研修を行います。「感情的に叱らない」など、メンターとして望ましい関わり方を伝えることで、メンターを務める社員のスキルを向上できます。
メンターとメンティーの相性を検討する
メンターとメンティーの相性が悪い場合は、メンティーがストレスを感じるなど逆効果になる可能性があるため、相性を慎重に検討する必要があります。
メンターの業務負荷を考慮する
メンターを担うことで、メンター社員の業務負荷が重くなることのないよう、配慮することが大切です。メンター社員やメンターの上司と話し合い、場合によっては日常業務の量を調整します。
メンターの企業事例
直属の先輩以外のラインを多チャネル化|トヨタ
トヨタでは、新入社員を会社全体で受け入れるために、「めんどう見」と呼ばれるメンター制度を実施。直属の先輩以外のラインを設け、キャリアの悩みに応じて年次や経験などの共通点がある先輩を紹介し、コミュニケーションの場を設けています。
斜め上の経営陣がメンター|メルカリ
2020年4月からはじまったメルカリの「Exec Mentoring Program」では、選抜されたメンバーが、自分の「斜め上」にあたる経営陣と月1時間程度/半年間のメンタリングを実施します。業務に関するフィードバックだけでなく、キャリアプランも相談できるため、従業員の満足度も高く、視野を広げる機会となっています。
【まとめ】
- メンターは、メンティーとなる社員と信頼関係を築き、キャリア形成や仕事に関する悩みなどを聞き、精神面を支援する役割を担う
- メンター制度は、メンターを担う社員のスキルアップや、キャリアに関する理解促進につながる
- メンター制度の実施にあたっては、メンターとメンティーの相性を慎重に検討すること、メンターに求められるスキルを習得する研修の実施が重要
メンターは、仲の良い先輩になるだけじゃなくて、仕事の悩みとか、メンティーが話をしやすいような信頼関係を作る必要があるんですね
児玉さんと町田さんなら、良いメンター・メンティーの関係になれると思うよ
(私も、入社したての頃は社会人としてやってけるか不安でいっぱいだったなあ……)サポートできるようにがんばります
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!