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【ヨミ】ストレスチェック

ストレスチェック

ストレスチェックとは?

「ストレスチェック」とは、労働者のストレス状態を調べるための簡単な検査です。労働安全衛生法の改正に伴い、2015年より50人以上の労働者がいる事業所では、ストレスチェックの実施が義務化されました。ストレスチェック制度の目的は、ストレス状態を適切に把握することで労働者自身による早期のセルフケアを実現するとともに、職場の環境改善につなげるなど、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことにあります。

更新日:2022/12/26

1.ストレスチェックの義務化とは

労働安全衛生法の改正により、2015年12月からストレスチェック制度が義務付けられました。対象となる事業所や対象者、実施時期、実施しなかった場合の罰則のほか、義務化に至った背景などを見ていきます。

ストレスチェックの対象事業所

ストレスチェックの実施は、労働安全衛生法が適用されるすべての事業所が対象となります。ただし、労働者の人数によって、実施が義務付けられている事業所と努力目標とされている事業所があります。

ストレスチェックの実施が義務付けられている事業所:労働者が常時50人以上の事業所
ストレスチェックの実施が努力義務とされている事業所:労働者が50人未満の事業所

ここでいう「事業所」は、法人を指すのではなく、支店や営業所などの事業所単位となります。事業所における労働者数がストレスチェックの実施基準となり、企業全体の労働者数ではない点に注意が必要です。

ストレスチェックの実施時期・対象者

ストレスチェックの実施は1年以内ごとに1回で、定期的に実施することが定められています。実施時期については、事業所が定めてよいことになっています。

ストレスチェックの対象となるのは「常時使用する労働者すべて」です。ただし、以下に該当する労働者は対象外としても差し支えありません。

  • 労働契約期間が1年未満の労働者
  • 労働時間が短い労働者(当該事業所において同業務を行う通常労働者の所定労働時間の4分の3未満)

ストレスチェックを実施しない場合の罰則

ストレスチェックを実施せず、労働基準監督署へ報告書を提出しなかった場合は、労働安全衛生法違反や労働契約法違反に該当します。

労働安全衛生規則第52条の21によると、一連のストレスチェックの実施後、事業者は労働基準監督署に「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(様式第6号の3)」を提出することが定められています。

労働基準監督署への報告を怠った場合、労働安全衛生法第120条の5により、50万円以下の罰金が科されます。また、ストレスチェックが未実施である(労働基準監督署へ報告がない)場合、罰金だけでなく、労働契約法の安全配慮義務違反に該当する恐れがあります。

安全配慮義務とは、事業者に課されている義務の一つです。労働者が安全を確保し、安心して労働できるように、事業者は配慮しなければなりません。健康診断やストレスチェックも安全配慮義務に含まれます。安全配慮義務に違反した場合、事業者は損害賠償を命じられる場合もあります。

ストレスチェックでは、労働安全衛生法ならびに労働契約法の二つの法律に違反しないよう、留意する必要があります。

ストレスチェック義務化の背景と現状

ストレスチェック制度が義務付けられた背景には、労働者のメンタルヘルス悪化により、うつ病や過労死などの問題が深刻化したことがあります。厚生労働省の調査結果を見ると、制度が実施される以前の2010年は、精神障害の労災認定件数が308件。その後も増加を続け、2014年には497件まで達しました。メンタルヘルスへの対応は、早急に手を打たなくてはならない課題となっていました。

近年の状況を厚生労働省の「労働安全衛生調査(実態調査)」(2018年)で見てみると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は59.2%。メンタルヘルス不調により連続1ヵ月以上休業した労働者がいる事業所の割合は6.7%、退職者がいた割合は5.8%となっています。しかし、労働者の状況を見ると、「現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄があるか」という質問に対して、「強いストレスと感じる事柄がある」と回答した労働者は全体の58.0%にも上りました。2013年から2018年まで50%を超える数値が続いています。

また、厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」(2019年度)によると、仕事による強いストレスが原因で精神障害を起こし、労災保険給付が支給された件数は509件でした。2017年度は506件、2018年度が465件と、依然として500件前後の水準で推移しています。

これらの結果を見ると、単にストレスチェックを実施しただけでは十分な効果があるとはいえず、改善に向けた積極的な取り組みが求められています。

参照:精神障害の労災補償件数の推移と主なできごと|こころの耳 厚生労働省
参照:平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)|厚生労働省
参照:令和元年度「過労死等の労災補償状況」を公表します|厚生労働省

2.ストレスチェック導入・運用フローについて

ストレスチェックを実施するに当たって、まずは全体の流れをしっかり理解しておく必要があります。ストレスチェック制度の概要は以下の図の通りです。

出典:労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成26年法律第82号)の概要|厚生労働省

医師や保健師などが、労働者に対してストレスチェックを実施します。労働者は実施期間内にストレスチェックを受検します。

労働者が調査票への記入を終えたら、実施事務従事者(産業保健スタッフ、事務担当者など)が回収し、医師や保健師へ提出します。結果は労働者本人へ直接通知され、本人の同意を得ない限り、事業者に結果が通知されることはありません。

ストレスチェックの結果、高ストレス者と判断された労働者は、医師による面接指導を事業者へ申し出ることができます(希望制)。申し出を受けた事業者は医師の面接指導の手配をし、実施します。面接指導の手配時には、時間外労働の状況や該当労働者の勤務の様子などを報告することになっています。

医師の面接指導が終わると、医師から会社への意見聴取があり、当該労働者に対してしかるべき就業上の措置を取るなどの指導が行われます。

ストレスチェック実施者・実施事務従事者の違いとは

ストレスチェックでは、それぞれの役割を担う担当者を選定して実施体制を整える必要があります。まずは、担当者の役割を正しく理解しておくことが重要です。

  • ストレスチェック実施者:医師や保健師、一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士などに限定されます。外部委託も可能です。調査票の選定、ストレスチェック実施の企画および結果の評価を担当します。
  • ストレスチェック実施事務従事者:実施者の補助的な役割を果たします。担当者の資格は問わないため、事業所内の総務担当者などが担当することも可能です。調査票の回収やデータ入力、面接指導の勧奨などを行います。ただし、解雇や昇進、異動などの人事決定権を持つ管理監督者などは、調査票記入後の業務(調査票の回収や結果通知など)を担当できません。
※面接指導を担当する医師:高ストレス者の面接指導を担当する医師です。産業医が担当することもあります。

なお、ストレスチェック実施者になるための研修は、労働安全衛生規則第52条の10第1項第3号の規定に基づき、厚生労働大臣が定めたものとされています。また、看護師や精神保健福祉士などで、3年以上、労働者の健康管理などの業務に従事した実績があれば、研修を受講せずに実施者になれる場合があります。

ストレスチェック制度の流れ

ここでは、ストレスチェック制度の実際の流れを説明します。社内で行うことは大きく次の6ステップです。

  1. 導入前の準備
  2. ストレスチェック実施(質問票の配布、記入、集計、評価)
  3. 本人への共有
  4. 面接指導
  5. 集団分析と各部署へのフィードバック
  6. 労働基準監督署への報告

1.導入前の準備

まずは、ストレスチェック導入に当たって必要な準備をします。以下のことを明確にする必要があります。

  • ストレスチェックを行う上での会社の方針を決める
  • ストレスチェックの実施体制を整備する
  • 衛生委員会でストレスチェックの実施方法を審議して決める(実施規定、実施計画、実施方法など)
  • ストレスチェックの実施について社内へ周知する

ストレスチェックの実施体制が整い、実施計画ができたら、社内規定として明文化した上で全労働者に周知します。伝える際は、実施目的や実施方法、スケジュールなどを明確にし、従業員の理解を深めるよう配慮することが大事です。

また、ストレスチェックの実施規定は社内イントラ上などにアップし、全労働者が常に閲覧できるようにしておくことも重要です。

2.ストレスチェック実施(質問票の配布、記入、集計、評価)

ストレスチェック実施期間に、実施事務従事者よりストレスチェックの質問票を配布します。質問票は紙またはオンラインのどちらでも構いません。

各労働者が質問票への記入を終えたら、質問票を回収します。回収は実施者もしくは実施事務従事者が担当します。実施者や実施事務従事者以外の第三者や人事決定権を有する者が回収してはなりません。回収した質問票を基に、実施者はストレスチェックの結果集計や評価を行います。ストレスの状況を分析するだけでなく、高ストレス者に該当するか、面接指導が必要かといった評価も行います。

3.本人への共有

労働者本人へ直接、ストレスチェックの結果を通知します。第三者へストレスチェックの結果が漏れることのないよう、結果配布時には細心の注意を払わなければなりません。労働安全衛生法第66条の10第2項により、本人の同意なくストレスチェックの結果を事業所へ伝えることは禁止されています。

4.面接指導

ストレスチェックの結果、高ストレス者と判断された労働者は、医師の面接指導を受けることができます。労働者が面接指導の申し出を行った場合、事業者は産業医や地域産業保健センターなどに相談し、医師による面接指導実施の準備を進めます。なお、事業者は面接指導の手配を行うのみで、実際の面接指導には同席しません。面接指導は、医師と労働者のみで行います。

面接指導後、事業者は面接指導を実施した医師の意見を聞くことになっています。当該労働者への就業上の措置が必要かどうか、必要な場合はどのような措置が必要かを確認します。医師からの意見を踏まえて、事業者は当該労働者に対して適切な措置を取ります。

また、面接指導の申し出や実施、医師の意見聴取は定められた期間内に行う必要があります。

  • 労働者から事業者への面接指導の申し出:ストレスチェック結果の通知からおおむね1ヵ月以内
  • 医師による面接指導の実施:労働者の申し出からおおむね1ヵ月以内
  • 医師の意見聴取:面接指導からおおむね1ヵ月以内

面接指導が必要であると判断された労働者が面接指導を申し出ない場合、実施者もしくは実施事務従事者は面接指導の申し出を勧奨することができます。勧奨を行う場合は、過度な勧奨や強制とならないよう、十分に注意しなければなりません。

5.集団分析と各部署へのフィードバック

実施者はストレスチェックの結果を部署やグループなどの集団ごとに集計・分析し、結果を事業者や各部署などに提供します。事業者が部署・グループ単位でのストレス状況や傾向を把握できるようにするためです。例えば、特定の部署で過重労働の傾向が見られたり、高ストレス者が多い部署がわかったりすれば、仕事量の調整や環境改善に役立てることができます。

集団分析を受けた事業者は、衛生委員会などの調査審議を経て、職場環境の改善に向けた取り組みを行います。ただし、職場環境の改善は現時点では努力目標であり、義務ではありません。

●集団分析に関する二つの注意点

・集団分析を行う対象人数が少ないときに注意
集団の人数が少ない場合、個人が特定される恐れがあります。そのため、集団分析は10人以上の集団が対象です。全員の同意を得られている場合は、結果の提供を受けることが可能です。

・分析結果の閲覧権限
集団分析結果を閲覧できる人は、事業所内で限定しておくほうがよいでしょう。なぜなら、集団分析の結果が当該集団の責任者などの評価につながる可能性があるからです。例えば、高ストレス者が多い集団の責任者が、不当な動機・目的によって配置転換されるなど、不利益を生じる可能性があります。

集団分析結果といえども、ストレスチェックの結果は非常にデリケートなものです。取り扱いに注意が必要です。

6.労働基準監督署への報告

高ストレス者の面接指導までが完了したら、事業者は労働基準監督署へストレスチェックと面接指導の実施状況を報告します。様式は、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を使用することと定められています。報告書は厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。

ストレスチェックを行う際の注意点

ストレスチェックを行う際は、以下の二つに注意する必要があります。

  1. プライバシーの保護
  2. 不利益取り扱いの禁止

労働者が安心してストレスチェックを受検できるよう、労働者を保護しながらストレスチェックを実施することが大切です。

プライバシーの保護

先述の通り、ストレスチェック制度を実施する上では、労働者の個人情報やプライバシーが適切に保護されるように注意しなければなりません。ストレスチェックの結果を入手する際は、労働者の同意が必要です。事業者は、ストレスチェックに関する労働者の秘密や回答内容を、不正に入手してはなりません。

また、実施者や実施事務従事者には守秘義務が課せられています。ストレスチェックに関して知り得た情報を漏えいさせてはなりません。守秘義務に違反した場合、刑罰の対象となります。

さらに、事業所へ提供されたストレスチェックの結果や面接指導の報告書は、適切に管理し、事業所内での閲覧権限を必要最小限にしておく必要があります。

不利益取り扱いの禁止

事業者は、「ストレスチェックを拒んだ」「医師の面接指導を受けない」「ストレスチェックの結果を提供しない」などを理由に、労働者へ不利益な取り扱いを行ってはなりません。ストレスチェックの受検や結果提供、面接指導はすべて労働者の意思が尊重されます。

また、医師の面接指導の結果を基に、解雇や雇い止め、退職勧奨、不当な動機・目的による配置転換・職位の変更を行うことも禁止されています。

3. ストレスチェックの項目について

ストレスチェックの質問票は自社で選択することができますが、基本となる「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の項目が含まれていなければなりません。

項目の考え方

ストレスチェックの調査項目は、以下の三つの領域に関する項目が必須とされています。

  1. 仕事のストレス要因:職場での心理的な負担の原因に関する項目
  2. 心身のストレス反応:心理的な負担による、心身の自覚症状に関する項目
  3. 周囲のサポート:職場における、ほかの労働者からの支援に関する項目

これらは、米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が定義する職業性ストレスモデルの要素となるものです。仕事のストレス要因が引き金となって、イライラ感や不安感、抑うつ感などのストレス反応が続くと、メンタルヘルス不調になります。

仕事のストレス要因には、仕事のボリュームや身体的負担、自己のコントロール感、対人関係、やりがいなどさまざまなものがあります。しかし、ストレス反応は、個々の性格・価値観・思考などの個人要因と、家庭の問題といった仕事外要因、上司・同僚などのサポートによる均衡要因の影響を受け、強まったり弱まったりします。

参照:NIOSHの職業性ストレスモデル|東京都
参照:ストレスに気づこう|厚生労働省

ストレスチェック 項目の例

ストレスチェックの調査票の様式は、法律で定められていません。「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の領域を含む項目であれば、事業所が独自に調査票を作成することも可能です。

ここでは、厚生労働省が推奨している調査票と、東京大学が開発した調査票の二つを紹介します。

厚生労働省推奨の「職業性ストレス簡易調査票」

厚生労働省は、職業性ストレス簡易調査票(57項目)と職業性ストレス簡易調査票(簡略版23項目)を推奨しています。

職業性ストレス簡易調査票(57項目)は、「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(厚生労働省)内で推奨されている調査票であり、多くの事業所で利用されています。

職業性ストレス簡易調査票(57項目)を簡略化したものが、職業性ストレス簡易調査票(簡略版23項目)です。簡略版23項目は調査項目が少ない分、回答の負荷を軽減できます。ただし、詳細な結果を得られない点が懸念されます。

「新職業性ストレス簡易調査票」

厚生労働省の調査票を基に新たな項目を追加し作成されたのが、「新職業性ストレス簡易調査票」です。仕事の負担に関する尺度を広げているほか、職場環境要因をより詳細に測定できるようにしている点が特徴です。この調査票は東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野のサイトに掲載されています。

参照:心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針|厚生労働省
参照:実施者向けストレスチェック関連情報|厚生労働省
参照:新職業性ストレス簡易調査票の公表について|事業場におけるメンタルヘルスサポートページ(東京大学)

4. 高ストレス者とは ―選定方法と対応法―

高ストレス者とは、心身の自覚症状に加え、ストレスの状況や周囲からのサポート状況が著しく悪い労働者とされています。高ストレス者は、事業主へ申し出ることにより、医師の面接指導が受けられます。

高ストレス者の選定方法

高ストレス者の選定方法には、ストレスチェックの評価点数から選定する方法と、ストレスチェックの結果と面談とを併用して選定する方法があります。いずれの選定方法を用いるかは、衛生委員会や実施者の意見を聞きながら事業所が決定します。

ストレスチェック制度による労働者のメンタルヘルス不調の予防と職場環境改善効果に関する研究」によると、高ストレス者は受検者全体の14〜19%という結果でした。高ストレス者がいることは決して珍しいことではない、といえます。企業には高ストレス者について理解し、正しく対応することが求められています。

ストレスチェックの評価点数から選定

職業性ストレス簡易調査票(57項目)では、「心身に自覚症状がある労働者」と「仕事にストレスを感じ、周囲のサポートが乏しく、やや自覚症状もある労働者」の二つの観点から高ストレス者を選定します。調査票の合計点数を用いて評価すると、以下のようになります。

  1. 心身のストレス反応の合計点数が77点以上
  2. 仕事のストレス要因・周囲のサポートの合計点数が76点以上かつ心身のストレス反応の合計点数が63点以上

1.または2.に該当する労働者を、高ストレス者として選定します。

調査票と面談を併用して選定

ストレスチェックの結果に加え、補足的に面談を用いて、高ストレス者を選定する方法です。具体的には、実施者や産業医などの医師が労働者へ面談を行い、実施者は面談した医師などの意見を踏まえ、ストレスチェックの結果と面談内容から高ストレス者を選定するという流れです。高ストレス者の選定は実施者が行い、面談した医師などが行ってはいけません。

高ストレス者に対する面談方法と注意点

高ストレス者本人からの申し出後、おおむね1ヵ月以内に医師の面接指導を実施します。面接指導に際しては、注意点が二つあります。労働者が安心して面接指導を受けられるようにすること、面接指導の結果を保存することです。

労働者が安心して面接指導を受けられるようにする

面接指導の実施に際しては、労働者のプライバシーが損なわれるようなことがあってはなりません。

実施事務従事者は、面接指導の日時や場所を面接指導希望者へ連絡します。面接指導を希望している労働者や面接指導の実施内容について、第三者に知られないよう、連絡方法にも配慮することが大切です。口頭での連絡より、メールなどのほうが望ましいでしょう。

また、面接指導を実施する旨をあらかじめ当該労働者の管理者へ連絡しておく必要があります。面接指導希望者が指定された日時に面接指導を受けられるよう、配慮してもらうためです。

面接指導の記録を作成する

面接指導は記録を作成し、5年間保存しなくてはなりません。記録の様式に定めはなく、以下の5点を含んでいれば、医師からの報告をそのまま保存しても構いません。

  1. 実施年月日
  2. 労働者の氏名
  3. 面接指導を行った医師の氏名
  4. 労働者の勤務の状況、ストレスの状況、その他の心身の状況
  5. 就業上の措置に関する医師の意見

5. ストレスチェックを職場改善にどう生かすか

ストレスチェックでは、労働者自身がストレス状態に気付き、早期にセルフケアができるという利点があります。しかし、調査結果を職場改善のきっかけにすることもストレスチェックの目的の一つです。

昨今はテレワークが増え、仕事のストレスも多様化しつつあります。ストレスチェックで顕在化した職場環境や働き方の問題点・課題を検証し、労働者が安心して働ける職場づくりを目指すことが重要です。

集団分析の結果を次のアクションに生かす

集団分析には標準集団と自社の分析結果が載っているため、比較によって現在の事業所の課題を把握することができます。特に健康リスクが高いと思われる項目を優先的に改善するなど、施策に役立てることができます。

例えば、仕事量が多くて周囲との協力体制がないことがストレス要因となっている場合、単に仕事量を見直すだけでなく、無駄の多い作業を洗い出したり、進捗共有の方法を工夫したりするなどすることで改善された例もあります。

参照:これからはじめる職場環境改善~スタートのための手引~|独立行政法人労働者健康安全機構・厚生労働省

取り組んだことを振り返り、良い点・課題点を洗い出す

職場環境の改善を成功させるには、取り組み内容を振り返り、良い点・課題が残る点を整理して次につなげるPDCAを回すことが重要です。具体的には、「今回の取り組み内容でよかったのか」「手順は妥当であったか」「実施する上で難しかったことや困ったことはなかったか」などを明確にするとよいでしょう。

具体例を挙げると、曙ブレーキ工業株式会社では、実施する事業所の順番や話し合いの時間を工夫し、まずは職場改善をスムーズに進めることを重視して取り組んだ結果、長期的に継続できる土台ができています。

有益な取り組み事例はストックをする

職場改善の振り返りをした結果、成果を上げている良い取り組み事例をストックするのも有益な方法です。社内全体に共有することで、相乗的に効果を高められるほか、新たなアイデアが生まれるヒントになることがあります。また、他社の成功事例を集めて自社に合うものを取り入れてみるのも一案です。

働き方が多様化している現代、ストレスチェックは有効に活用すべき

現代は、働く場所や勤務時間が多様化したこと、また、業務に使うツールなどが進化したことで、働き方が大きく変わっています。良い方向に向かうための変化であっても、変化にはストレスが伴うものです。ストレスチェックは労働者自身のケアだけでなく、職場としてどのような環境を整えるべきなのかを見直す上でも大いに役立ちます。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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