出張時の時間外勤務(残業の発生)
当社の就業規則では、「出張を命ぜられた者は、予め別段の指示をした場合のほか、所定勤務時間を勤務したものとみなす。」となっています。当社ではいかなる理由があっても「出張」となった社員は所定労働時間を勤務したことになると認識しており、出張時は所定時間を超えて管理職が業務命令を出したとしても超過勤務手当や深夜勤務手当などは支給していません。この取り扱いは正しいのでしょうか? 特に出張時に業務命令で「取引先との関係強化を目的とした懇親会に出席せよ」という命令が出るのですが、その場合でも所定時間内になってるので時間外ではないのか、「懇親会」は業務命令であっても、関係強化が目的であれば業務ではないので、そもそも関係ないのか、ご教授いただけますでしょうか。ちなみに当社は懇親会には管理職が必ず出席し、同行する一般職員は一応拒否できますが、気持ち的にはほぼ強制参加に近いです。
投稿日:2023/07/20 11:13 ID:QA-0129077
- ジョンスミスさん
- 東京都/銀行業(企業規模 101~300人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
出張中の時間外勤務(移動時間を含む)は労働時間にはならない
▼結論的には、出張中の移動時間は「使用者の指揮命令下にある」といえるような特段の事情がない限り、労働時間とはならないことになります。 そうすると、もともと移動時間が労働時間ではないため、移動時間が延びたとしても「残業(時間外労働)」の問題にもならないということになります。
▼出張の移動時間は労働時間にならなりません。会社から出張を命じられたときには、出張先によっては前泊することや、早朝に家を出発するといった対応が必要なケースもあるでしょう。労働者からすると、一定程度拘束される部分があるので、出張時の移動時間を労働時間として捉えてもよいと感じるかもしれません。
▼しかし一方で、移動時間中をどのように過ごしているかといえば、スマートフォンで好きな動画を見たり睡眠をとったりと自由に過ごすこともできます。そのように考えると、移動時間を労働時間と捉えることの問題もお分かりいただけると思います。
▼判例・通達
この点については、「実際に得意先で商談に要した時間が労働時間であり、移動時間は日常の出勤に費やす時間と同一の性質といえるので労働時間ではない」と判断している裁判例があります(横浜地方裁判所川崎支部 昭和49年1月26日)。
厚生労働省が発行しているリーフレットでも、「出張に伴う移動時間について、移動中の業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合には、労働時間に該当しない」旨が明記されています。
▼結論
判例・通達の考え方から、原則として出張中の移動時間は労働時間にはならないといえます。然し、例外的に「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている」といえるケース(物品の運搬や移動中パソコンで仕事を進めることを上司から指示されているなど)では、労働時間になる可能性があります。
投稿日:2023/07/20 12:41 ID:QA-0129080
相談者より
早速のご回答ありがとうございます。
ここでの残業は移動時間ではなく、出張地で所定勤務時間を超えて業務をさせることをイメージしました。わかりにくい質問で誠に申し訳ありません。社員が自由に過ごせる移動時間はご指摘のように業務ではないかもしれません。ただ質問させていただきたかったのは、出張地において所定時間に収まると思ってた業務が何らかの事情で遅れてしまい、結果所定時間を超えてしまった場合も、当社の規定では出張した場合は所要時間労働したこととみなすとなっていたので、そういった規定はいいのかどうかお聞きしたいところでした。加えて取引先との関係強化を図ることを目的に、管理職の指示での参加や、断れない雰囲気での参加はその業務の範囲に入るのかどうかも教えていただきたかったところです。わかりにくい文章で申し訳ありません。
投稿日:2023/07/20 17:58 ID:QA-0129093大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
懇親会は原則としては、業務との関連性が薄いため、労働時間とはなりません。
取引先との関係強化を目的としたということですから、懇親が目的ということになります。
また、同行する一般職員は一応拒否できますということですから、労働時間とはならないでしょう。
一方、懇親会であっても、営業が目的で、その場でプレゼンを行うですとか、取引先のキーマンが出席し、大勝負の懇親会であり、業務命令での強制参加ということであれば、例外的に、労働時間とされるケースもあります。
投稿日:2023/07/20 17:32 ID:QA-0129091
相談者より
ご回答ありがとうございます。よくわかりました。関係強化というものは業務としてはなかなか難しいということが理解できました。
投稿日:2023/07/20 23:22 ID:QA-0129108大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
判例などでは業務性がなければ残業にならないといったものもあるようですが、個人的には、書かれている「一応拒否できますが、気持ち的にはほぼ強制参加に近い」という部分が気になります。
実質的に拒絶すれば低評価になる、いやみを言われるなど、著しい不利益があればそれは任意ではないからです。
それよりも本当に接待が収益に結びついているのか、経営者が判断すべきことのように思います。昔からの慣例だった出張や会議も、コロナによって「無くても済んでしまう」ことが明らかになった例もあります。
特に若い世代にとって、「個人の時間を取られて目的や意味合いが不明瞭な接待をさせる会社」というのはきわめてネガティブなもとの受け止められる可能性もあります。
投稿日:2023/07/20 21:41 ID:QA-0129100
相談者より
ご回答ありがとうございます。大変参考になりました。コロナ禍を経て、いわゆる「懇親会」の本当の必要性を検討するいい機会かもしれません。ただ現実はご自身は楽しい「懇親会」の復活を望んでいる、上の方も多いのが現状です。「飲めばわかる」は今の世代にはピンときてません。
投稿日:2023/07/21 11:01 ID:QA-0129119大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、まず「所定時間を超えて管理職が業務命令を出した」とされますと、実際に労働時間数の算定が可能となる状況といえますので、いわゆるみなし労働時間制は適用されす、それ故指示された時間相当の賃金支払が必要になるものといえます。
そして、後段の懇親会に関しましても、強制またはほぼ強制に近い参加態様であれば、業務扱いされるのが妥当といえるでしょう。例えば、直接業務と関係無い清掃作業等であっても、強制指示されますと労働時間扱いされるのと同様といえます。
投稿日:2023/07/20 22:28 ID:QA-0129101
相談者より
ご回答ありがとうございます。大変参考になりました。ただ、当社の就業規則では、「出張を命ぜられた者は、予め別段の指示をした場合のほか、所定勤務時間を勤務したものとみなす。」となっていて、たとえば終業時が午後5時とすると、「今日の業務終わらないので午後6時までやりましょう。」と管理職が指示しても就業規則で1時間の残業は認めていません。この認識はいけないものなのでしょうか。
投稿日:2023/07/21 11:06 ID:QA-0129121大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
再度お答えいたします
ご返事下さいまして感謝しております。
ご質問の件ですが、「今日の業務終わらないので午後6時までやりましょう。」と管理職が指示されている状況であれば、まさに管理者が同行しており労働時間を算定出来る状況と思われます。
先の回答の通りみなし労働時間につきましては、法令上労働時間の算定が困難な場合にしか適用が認められていませんので、このような具体的な時間の把握や指示が可能な場合には就業規則の定めに関わらず実労働時間での対応が必要といえます。
投稿日:2023/07/21 11:16 ID:QA-0129122
相談者より
再度のご回答ありがとうございます。とても参考になりました。みなし労働が適用されないんですね。就業規則が出張時の残業を一切無いような書き方だったので誤解していました。今後の取り扱いに注意します。
投稿日:2023/07/22 21:58 ID:QA-0129163大変参考になった
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