逮捕後不起訴となった従業員の取扱いについて
入社1年ほどのキャリア採用従業員が、勤務時間中にSNSで知り合った女性に対し不同意わいせつ罪の疑いで警察に逮捕されました。
その後、嫌疑不十分により不起訴処分となり、釈放・復職予定となっております。
このような状況において、以下の対応についてご教示ください。
①釈放・復職後、会社が自宅待機を命じた場合、給与の支払い義務はあるか?その場合、全額もしくは休業手当(6割)など、どの程度保証する必要がありますか?
②今回の件を理由に解雇することは可能か?また解雇が難しく自主退職を促す場合、従業員に残りの年次有給休暇を消化させてから退職とする必要はありますか?
なお、こちらの事件は地元の新聞に掲載され、従業員の実名も公表されました(会社名は非公開)
投稿日:2025/06/13 19:39 ID:QA-0153975
- 青木秋生さん
- 東京都/石油・ゴム・ガラス・セメント・セラミック(企業規模 301~500人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
対応
一般的に不起訴であれば、解雇などの理由と認められない可能性が高いと言われます。
きわめて高度な法律的判断が必要なので、掲示板ではなく、弁護士に直接相談いただくべき事象だと思います。
投稿日:2025/06/16 09:42 ID:QA-0153999
相談者より
ご回答、ありがとうございます。
顧問弁護士ともよく相談してみます。
投稿日:2025/06/16 11:51 ID:QA-0154014大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
1について、
就業規則において懲戒処分の調査のために無給の自宅待機命令を命じることが
できることを定めているケースでは、無給とすることも適法とされています。
(東京地方裁判所平成30年1月5日判決)
一方、就業規則に上記の定めが無い場合は、過去の裁判例からも、通常賃金100%
を支払っておくのが無難な対応かと思案いたします。
ご参考までに、会社が調査のために行った自宅待機命令期間中に会社が給与を支
払わなかったことは違法であるとして、会社に対して自宅待機命令期間中の給与
の支払いを命じたものがあります。(平成3年7月23日名古屋地方裁判所判決 日
通名古屋製鉄作業所事件)
2について、
懲戒解雇を行うにあたる事実確認ができない限り、不当解雇のリスクはございま
す。警察では、嫌疑不十分により不起訴処分とのことですので、今後の調査次第
で新たな事実が判明した際は、ご検討いただけるかと思います。
また、自主退職を促す場合の年次有給休暇の取扱いですが、他の選択股として、
両者合意に基づく、有給休暇の買取りもございますので、スピード感を重視
される場合は、有給休暇の買取りもご検討ください。
なお、本件につきましては、民法等が絡みますので、詳細につきましては、
民法に精通した弁護士へご相談いただくことをお勧めいたします。
投稿日:2025/06/16 09:47 ID:QA-0154000
相談者より
ご回答、ありがとうございます。
弊社では就業規則に定めが無いため、通常賃金を支払う対応となる旨承知しました。また不当解雇のリスク・有給買取りなどのご意見を参考に対処いたします。
投稿日:2025/06/16 12:17 ID:QA-0154015大変参考になった
プロフェッショナルからの回答

- 小島 康
- ダン社会保険労務士事務所
回答いたします
1について
自宅待機命令は「自宅で待機する」ことを業務とする命令ですので、給与の支払が必要です。「休業」ではありませんので、休業手当の適用はありません。なお、自宅待機を発令するにあたっては業務命令権の濫用とならないように相応の事由が必要になります。いただいたご相談の情報からは、自宅待機を命じる理由が想定できかねますので、自宅待機の発令にあたっては業務命令権の濫用を主張されないようご留意ください。
2について
嫌疑不十分による不起訴処分ということですので、不同意わいせつ罪が成立するだけの事実があったかどうか自体が不明です。解雇するとなると懲戒解雇となりますが、懲戒事由に当てはめるべき事実が不明であって認定できないということになりますので、不同意わいせつを理由とする懲戒解雇はできないと考えます。他方、地元の新聞に掲載され、従業員の実名も公表されたとのことですが、会社名は公表されていない状況では、会社の名誉や信用の毀損が懲戒解雇事由にあったとしても、懲戒解雇は難しいと考えます。
今回の事案を受けて退職勧奨する場合、労働契約の合意解約の形をとれば、退職日は会社と当該労働者との間の合意で決められます。退職日の合意にあたって、年次有給休暇の消化を考慮する必要はありません。
なお、嫌疑不十分による不起訴処分となっている背景がありますので、退職勧奨にあたっては退職の強要にならないよう十分配慮して対応することが必要です。
投稿日:2025/06/16 10:07 ID:QA-0154003
相談者より
ご回答、ありがとうございます。
業務命令権の濫用には注意を払い対処いたします。また合意解約の形をとれば退職日は会社と当該労働者との間で決められる旨、有休消化の考慮は不要なことと併せ承知しました。
投稿日:2025/06/16 12:24 ID:QA-0154017大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
はじめに
今回のケースは 労務管理上・法的リスクが高く、慎重な対応が必要 です。以下、各ご質問に法的根拠と実務上のポイントを交えて回答いたします。
1.釈放・復職後の自宅待機命令と給与支払い義務
(1)結論
会社が業務上の必要に基づき自宅待機を命じる場合、原則として「全額の賃金支払い義務」が生じます。少なくとも休業手当(平均賃金の6割)の支払いは必要となる可能性が高いです。
(2)解説
自宅待機は、使用者の指示により労務を提供できない状態にするもので、「会社都合の休業」に該当します。
労基法26条によると、「使用者の責に帰すべき事由」により労働者を休業させた場合、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があります。
本件のように、嫌疑不十分で不起訴となり、復職予定の社員を会社の判断で自宅待機とする場合は、労働者に責任があるとはいえず、会社都合と見なされやすいため、休業手当の支払いが必要です。
加えて、裁判例では、合理的理由のない待機命令に対しては、全額賃金の支払い義務があるとされた例もあります(例:日本ヒューレット・パッカード事件 東京地裁 平成14年9月)。
(3)注意
「不起訴=無罪」ではないが、刑事責任を問えないと判断された段階で、労務提供を拒否するには明確な職場秩序維持上の理由が必要となります。
2.今回の件を理由に解雇することは可能か?
(1)結論
本件のみを理由とする懲戒解雇・普通解雇はいずれも極めて困難です。不起訴である以上、解雇理由としての客観性・合理性・社会的相当性に欠けます。
2.解説
ア 懲戒解雇の場合
懲戒解雇には就業規則上の根拠に加えて、厳格な証拠と社会的に相当な理由が必要です。
今回のように、私人間の犯罪が不起訴で処分されている場合、本人の非違行為が会社の業務に直接的な悪影響を及ぼしたことの立証が求められます。
たとえ報道により名誉毀損等が発生していても、会社の信用を著しく毀損したとまでは言えない可能性が高いです。
イ 普通解雇の場合
普通解雇には「就業に耐えうる能力・適格性の欠如」等が求められます。
本人の私生活上の問題(今回のような事件)を理由とする解雇は、通常は**解雇権の濫用(労契法16条)**とされるリスクが高いです。
ウ 参考判例
類似のケースで、逮捕歴や不起訴の事実をもって解雇することは、権利の濫用に当たると判断された裁判例があります(たとえば「学校法人Y学園事件」東京地判 平成15年12月25日)。
3. 自主退職を促す場合、有休消化は必須か?
(1) 結論
義務ではありませんが、労使で合意があれば有休を消化しての退職は可能です。逆に、本人が有休消化を望まない場合、会社が一方的に有休を当てることはできません。
(2) 実務ポイント
有休の消化は本人の「時季指定権」に基づくため、原則は本人の意思による申請が必要です。
ただし、退職日が決まっていて、会社と労働者が「有休を使ってその日まで出社しない」ことに合意した場合、「合意による有休取得」での退職処理が可能です。
トラブル防止のため、「退職日」「有休取得日数」「出社最終日」などを明記した退職合意書を作成するのが望ましいです。
4.総括・推奨対応
論点→対応方針(推奨)
復職後の対応→一定期間の自宅待機は可能だが、休業手当(6割以上)の支払いは原則必要。全額支給のリスクも踏まえて検討。
解雇の可否→不起訴であれば解雇は非常に困難。リスクが高いため慎重に。
自主退職への誘導→本人の同意が得られるなら有休消化+退職で対応可。ただし強要と誤解されぬよう文書化が必要。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/06/16 10:42 ID:QA-0154006
相談者より
ご回答、ありがとうございます。
・自宅待機中の給与支払いについては「会社都合による休業」と判断され得ること
・不起訴である以上、解雇は懲戒・普通を問わず困難であること
・有休の取扱いに関しては、労働者本人の意思と合意が重要であること
などに十分留意し、社内対応を検討いたします。
投稿日:2025/06/16 12:33 ID:QA-0154018大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
1.いわゆる懲戒処分前の自宅待機命令の場合、
就業規則に通常賃金、平均賃金の6割支払う、あるいは、
無給とするなど根拠規定があれば、それに従います。
規定がなければ、平均賃金の6割支給は必要です。
2.解雇の理由は何かです。
これは、就業規則に根拠規定が必要です。
勤務時間中にSNSをやっていたことなのか。
あとは、本人に弁明の機会を与えたうえでの状況判断となります。
投稿日:2025/06/16 11:28 ID:QA-0154011
相談者より
ご回答、ありがとうございます。
解雇を検討する場合、就業規則における解雇事由の該当性を慎重に確認し、弁明の機会を設けた上での適切な判断が不可欠であることを認識いたしました。
投稿日:2025/06/16 12:41 ID:QA-0154019大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
嫌疑不十分により不起訴処分となり釈放されるのであれば、出勤させて勤務につかせることは可能ではあっても、職場での混乱は避けられず、他の社員の接し方も今までどおりとはいかないでしょう。
①自宅待機命令は、懲戒処分である出勤停止とは異なり、業務命令として行われるものであり、出勤停止が無給であるのに対し、自宅待機命令は原則として有給になり、通常どおりの給与を支払うのが適正かと考えます。
②嫌疑不十分により不起訴処分と検察官が判断し、釈放されたわけですから、解雇とするだけの合理的な理由は見当たらず、リスクも伴います。
自主退職を促すのが賢明であり、年次有給休暇をすべて消化してから退職してもらう、あるいは即日退職として残りの日数は買上げる、といった形で双方でよく話し合って決めればよろしいでしょう。
投稿日:2025/06/16 15:32 ID:QA-0154023
相談者より
ご回答、ありがとうございます。
復職に関しては職場内での感情的・心理的な影響も無視できない面があることを、改めて認識いたしました。
投稿日:2025/06/17 11:42 ID:QA-0154042大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
大まかな整理
【御相談】
(1)釈放・復職後、会社が自宅待機を命じた場合、給与の支払い義務はある
か?その場合、全額もしくは休業手当(6割)など、どの程度保証する必要が
ありますか?
(2)今回の件を理由に解雇することは可能か?また解雇が難しく自主退職を促
す場合、従業員に残りの年次有給休暇を消化させてから退職とする必要はあ
りますか?
【回答】
(1)
1)就労禁止については、概ね、懲戒処分としての「出勤停止」と、業務命令と
しての「自宅待機命令」があると考えられます。
2)前者については、就業規則等の根拠を要するものの、一般に賃金は支給され
ないものと認識されます。
3)一方、後者については、このような根拠を要さないものの、通常は賃金が全
額支払われるものと認識されます。これについては、自宅待機という労働を履
行しているとも考えられますし、使用者が労務の受領を拒絶しているとも考え
られます。
4)本件は、上記3)に該当しうるものと考えられます。
(2)
1)起訴された事案であっても刑の軽重や職務上の地位に鑑み懲戒解雇を無効と
した判例(日本鋼管事件1974年3月15日 最高裁判決)もある中で、本件につい
ては不起訴処分であることから懲戒解雇は困難であると認識されます。
2)退職日を最終的に決定するのは労働者であり、残りの年次有給休暇を消化し
たいとするのであれば、基本的にはそのようになろうかと考えられます。
投稿日:2025/06/16 19:07 ID:QA-0154026
相談者より
ご回答、ありがとうございます。
自宅待機は労働義務の履行または使用者による労務受領拒否のいずれかと解される点について、今後の社内規定の整備に際し、参考とさせていただきます。
投稿日:2025/06/17 11:46 ID:QA-0154043大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
問題が解決していない方はこちら
-
解雇通知書の件 今回1ヶ月の試用期間として採用し... [2005/06/21]
-
退職勧奨と解雇の違い 解雇の場合は1ヶ月前に告知、1ヶ... [2010/07/13]
-
正社員の解雇について 営業系正社員を解雇できる要件を教... [2005/06/22]
-
入社式と入社日は違う日でもよいのか? たとえば3/30に入社式を行い、... [2005/03/10]
-
解雇の時の、社内の人事発令について 今月中に、解雇となる社員がいた場... [2018/08/16]
-
退職希望者に対する懲戒解雇 解雇予告手当に関する質問です。自... [2007/07/05]
-
解雇予告通知書と解雇理由証明書 30日以上の期間をもって解雇予告... [2012/12/21]
-
時短にて復職する場合の労働条件通知書について この度、病気から復職する社員が出... [2022/09/12]
-
入社後、すぐ退職した従業員について [2023/07/05]
-
採用取り消し、解雇、入社辞退 中途採用した人が、入社日、その翌... [2011/11/02]
お気軽にご利用ください。
社労士などの専門家がお答えします。
関連する書式・テンプレート
復職申請書
復職申請書のテンプレートです。
傷病による休職を経ての復職の場合は、復職申請書と医師の診断書をもとに復職可否を判断します。また時期の明確化、記録のために復職許可証を発行するとよいでしょう。
解雇予告通知書
解雇の際にはしかるべき手続きを踏む必要があります。解雇をする前によく指導・検討してください。本通知書は解雇理由の例を記載しています。