インサイダーに関する誓約書について
インサイダーに関する誓約書を新たに従業員に提出義務付けを検討しています。
いわゆる、業務上会社の機密情報は他では漏らさないという内容ですが、退職後も漏らさないように求めることができるのか、または人事管理上望ましいのかを知りたく思っています。退職後も求めるなら、何ヶ月後迄とするのが望ましいのかも合わせて教えて頂けませんでしょうか?他社事例も踏まえて頂けますと幸いです。
投稿日:2006/02/03 16:18 ID:QA-0003557
- 人事担当さん
- 東京都/情報サービス・インターネット関連(企業規模 5001~10000人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
守秘義務について
■在職中の社員に対しては、就業規則に機密事項に関する守秘義務の定めと守秘義務に違反したときは懲戒処分をする定めをし、実際に機密を漏洩した従業員はその規定に基づいて懲戒処分にすることができます。
■しかし、退職後の守秘義務については簡単ではありません。なぜなら、在職中に身につけた技術やノウハウのすべてに守秘義務を強制することは、職業選択の自由を不当に侵すことになりかねないからです。しかし、一方では、企業にはさまざまなノウハウや顧客情報等の営業秘密が存在していますので、退職後も守秘義務を課すことがみとめられる場合もあります。そして退職者が違反した場合には、差し止め請求・損害賠償請求が可能であるとされています。
■このように本件はその具体的事案に応じてその都度判断されると思われますが、会社側の防止策としては、退職後も守秘義務があることを就業規則に定めておくこと、また特に必要のある者については退職後の守秘義務契約や競業避止契約を結んでおくことなどが有効です。誓約書、あるいは契約書は、在職中に作成、締結することが必要です。時々、退職時に、そのような誓約書を書くことを要求し、書かない場合は退職金の支払を拒否する会社がありますが、これは、無理な方法です。
■なお、何でもかんでも守秘義務の対象になる訳ではありません。営業秘密であるためには、① 秘密として管理されていること ② 秘密として有用性があること ③ 公然として知られていないことが必要です。違反したときは、損害賠償請求をすることがある旨を付記しておくとよいでしょう。ただし、実際に損害が生じたときは、機密漏洩と損害との間の因果関係を原則として会社側が証明しなければなりません。
■退職後の有効期間についての法的拘束はないと思いますが、会社、社員双方の利害のバランスを考えれば、1年ないし2年が落ち着きのよいところではないでしょうか
投稿日:2006/02/04 15:25 ID:QA-0003563
相談者より
ご回答有難う御座います。
補足のご説明を頂きたいのですが、今回の誓約書は、インサイダーにフォーカスしたものです。営業機密等の守秘義務に関する誓約書は、別途既に運用しています。
インサイダーにフォーカスした内容であったとしても、守秘義務と同じように考えるのが妥当ということでしょうか?若しくは、退職後の有効期間等、別の考え方があるのでしょうか?
投稿日:2006/02/04 18:19 ID:QA-0031450大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
Re:守秘義務について
いきなり「インサイダー」という呼称が出てきましたが、この呼称で定義される社員は、そのポジション、機密情報へのアクセス権限面などで、他の社員とどのように区分されている人たちなのでしょうか? また、機密情報はどのように定義されているのでしょうか? 機密情報へのアクセス面で他の社員に対するよりハイ・レベルな漏洩防止対策が必要な社員を「インサイダー」と規定されているなら、「飴と鞭」を使って、もう一段絞り込んだ対策が必要と思いますが、実態は如何がですか?
投稿日:2006/02/05 15:16 ID:QA-0003567
相談者より
ご説明が足りず、失礼致しました。
区分の実態ですが、総務、人事、法務、経理、秘書等、所属する部署によって他
の社員と区分しています。
誓約書記載事項は、現状では通常の守秘義務誓約書とほとんど違いはありません。仰って頂いた通り、機密情報へのアクセス面で他の社員に対するよりハイ・レベルな漏洩防止対策が必要な社員をインサイダーと規程して、誓約書提出を求めたいと考えています。その為、退職後の対応も守秘義務の1年とは異なる期間にしたいと考えています。
①2年程度とするのが望ましいでしょうか?
②インサイダー誓約事項の例を合わせて教えて頂けませんでしょうか?
投稿日:2006/02/07 11:31 ID:QA-0031453参考になった
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
Re:守秘義務について
■現行法上競業避止義務が課されるのは、取締役や支配人だけですが、競業禁止の特約は、職業選択の自由の制限、被用者の生活権の収奪に繋がる恐れが大きく、数多くの判例の積み重ねから、5点の特約の合理性判断基準に整理されています。
1. 根拠とする就業規則上の規定等を要すること(被用者と使用者のあらかじめの合意の存在)
2. 当該使用者のみが有する特殊固有な知識、技術や人的関係などの(一般的知識、技術でないこと)秘密の保護であり、正当な目的を有するものであること
3. 競業制限の職種、期間、地域的制限が被用者の職業選択の自由を不当に制約するものでないこと
4. 被用者の元使用者の下での地位・職務が営業秘密に直接関わるなど、競業避止を課すに相当なものであること
5. 相当の代償が与えられ、被用者と使用者の各々の法益保護においてバランスがとれていると判断されるものであること
■業種、業界によってもその類似性はかなり大雑把であり、ケース毎に秘密として保護されるべき特殊固有な知識、技術や人的関係も違ってくるでしょう。制約を強化するには、5.の代償の引き上げが必要になることもあります。要は、上記の合理性判断基準に則り、具体的範囲を当事者間で話し合いにより合意されるべきものと思います。
■敢えて特約の要件を挙げるなら、次の諸点でしょうか。
▽制限期間の限定 → 例えば2年間等
対象地域についての定め → 事案によっては全世界もありうる。
▽対象業種や業務の限定 → 会社の全営業種目というような包括的なものは原則的に認められない。
▽かかる制限に何らかの代償が支給されている → その代償は在職中の研究手当、開発手当、役職手当等でも差し支えない。
■誓約事項の例
《競業禁止》私は、退職後2年間は、下記地域内において、貴社の競業に従事し、または自営致しません。(地域→・・)
《秘密情報》
次に掲げる情報について、開示もしくは漏洩しません。
①技術上の情報、知的財産権に関する情報
②製品開発等の企画、技術資料、製造原価、価格等に関する情報
③人事上、財務上等に関する情報
④他社との業務提携、技術提携等、貴社の企業戦略上重要な情報
⑤貴社が秘密保持すべき対象として指定した情報
《損害賠償》
上記に違反して、貴社の秘密情報を使用、他に開示もしくは漏洩した場合、私には、これにより貴社が被った一切の損害を賠償する義務があることに同意致します
投稿日:2006/02/07 14:39 ID:QA-0003583
相談者より
投稿日:2006/02/07 14:39 ID:QA-0031458大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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