夜勤専従職員が日勤で副業する場合の労働時間の通算について
いつもお世話になっております。
表題の件についてご質問させていただきます。
弊法人で週一回夜勤専従職員として16時〜翌10時で働いている職員がいます。ちなみに、弊法人は一カ月単位の変形労働時間制を適用しております。
当該職員より、金銭上の都合により、今後副業として日勤で週5日働きたいと申出がありました。
スケジュールとしては、弊法人で日曜16時〜翌10時(休憩2時間)勤務。月曜〜土曜日までのうち週5日、一日の所定労働時間8時間で勤務予定とのことです。
上記を踏まえ何点か質問させていただきます。
①所定労働時間は契約の先後、所定外労働時間は発生の先後と認識しております。この場合既に弊法人16時間、副業先40時間ですが、弊法人で残業をしない限り、弊法人で時間外手当を支払う必要はないという認識でよろしいでしょうか。
②仮に、上記スケジュールで弊法人で10時〜11時で残業をした場合、支払う分は10時〜11時までの1時間分という認識でよろしいでしょうか。
③36協定に関して、特別条項の場合には副業先は通算しなくてはいけないと思うのですが。上記スケジュールですと、既に56=弊法人16+他者40で既に毎週16時間の時間外労働が発生している、ここから時間外労働と休日労働の合計100時間未満、複数月平均80時間以内に抑える必要があるという認識でよろしいでしょうか。
ご多忙のところ申し訳ございませんがご回答よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/17 10:18 ID:QA-0159590
- アストラエルさん
- 東京都/医療・福祉関連(企業規模 101~300人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、1につきましては原則としてご認識の通りですが、当人から先方の会社へその旨伝えて頂き、先方が同意された上で勤務して頂く必要がございます。
2につきましては、1がOKという事であればその通りになります。
3につきましても、ご認識の通りになります。
投稿日:2025/10/17 11:03 ID:QA-0159599
相談者より
ご回答ありがとうございます。
追加で質問失礼します。
1.①と②において、仮に本人が副業先の会社に弊法人のことをお伝えせず、ご教示いただいた同意を得なかった場合どうなるのでしょうか。
2.その場合、弊法人に何か責任問うが発生することはあるのでしょうか。
ご回答よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/17 14:20 ID:QA-0159621大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.法的前提:複数事業場間の労働時間の通算
(1)労働基準法第38条の明文規定
労働者が同時に二以上の事業場で労働する場合には、その労働時間は通算して労働時間として取り扱う。
(労働基準法第38条)
したがって、本業・副業の別を問わず「事業場をまたいだ労働時間は通算」して判断されます。
ただし、通算の義務があるのは「法定労働時間を超える部分」に限られます。
2.今回の前提条件の整理
区分→内容
本業(弊法人)→夜勤専従:日曜16時〜翌10時(16時間勤務・休憩2h)=実働14時間/週1回
副業先→週5日・1日8時間勤務(例:月〜金)=40時間/週
労働時間総計→14+40=54時間/週(休憩除外)
3.質問(1)弊法人で残業手当が発生するか
「弊法人では残業をしない限り、時間外手当を支払う必要はないか?」
結論
→ ご認識のとおり、「弊法人単体では時間外労働がない限り、残業手当支払い義務はありません。」
【理由】
労働基準法第32条(法定労働時間)は「一事業場ごとに」適用されます。
弊法人の所定労働時間を超過しない限り、弊法人単独では「時間外労働」は発生しません。
ただし、副業を含めると週40時間超え(=法定外)となりますが、通算管理義務は「使用者間連携がある場合」に限るとされています(昭和23.11.5基発第1575号、平成30年厚労省ガイドライン参照)。
つまり、弊法人が副業先の労働時間を把握・管理していなければ、
「弊法人に通算管理義務まではない」というのが実務上の扱いです。
4.質問(2)弊法人で残業1時間した場合の取り扱い
「弊法人で10時〜11時に残業した場合、支給すべきは1時間分のみか?」
結論
→ はい、1時間分のみで差し支えありません。
【理由】
残業代支給義務はあくまで自社内の労働時間に基づいて発生します。
他社勤務との通算は、「法定時間超過が確実に判明している」場合のみ調整対象になります。
今回は弊法人勤務が週1回のみであり、副業先の勤務実態を把握していない前提であれば、弊法人では10時〜11時の実労1時間分の残業手当を支給すれば適正。
5.質問(3)36協定と上限規制の通算について
「複数就業者の時間外・休日労働は通算して100時間未満、平均80時間以内に抑える必要があるか?」
結論
→ 厚労省の指針上は“望ましい”が、法的義務としての管理責任は原則、各使用者ごとに独立します。
【背景:ガイドライン上の位置付け】
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和5年7月改訂)において:
各事業場の使用者は、労働者本人から他の就業先での労働時間情報の提供を受けた場合には、労働時間の通算管理に努めることが望ましい(努力義務)。
したがって、
法的には各社が独立して36協定を締結・運用する。
ただし、労働者本人が労働時間を通算して過重労働となる場合は、安全配慮義務(労安法第66条)上のリスクが生じます。
【本件スケジュールでの実質的労働時間】
副業先:週5日×8h=40h
弊法人:週1回実働14h
→ 合計 54h/週
→ 月換算 約216h(週平均労働時間54h×4週)
→ すでに週40時間の法定上限を14時間超過
→ 仮にこれが毎月続くと「時間外労働60時間超/月」に相当。
→ さらに休日労働があれば、特別条項の上限100時間未満/複数月平均80時間以内に抵触リスクあり。
したがって、
弊法人としては、「副業を行うことは本人の自由」としつつも、
過重労働防止の観点から就業制限(健康管理面談・申告制)を設けることが適切です。
6.実務上の推奨対応
区分→対応策→備考
(1)副業申告制→就業規則に「副業を行う際は事前届出・時間申告を要す」と規定→健康管理目的での確認に限定(兼業禁止ではない)
(2) 労働時間の通算→原則本人申告をもとに通算。弊法人側が他社分を把握できる範囲で確認→他社分を確認できない場合は「努力義務」止まり
(3) 安全配慮義務→週54h労働は相当な長時間。本人の健康診断結果・休息時間確保に留意→週1回16h夜勤の後に日勤5日連続は、睡眠障害・疲労蓄積リスク大
(4) 36協定上の取扱→各社別に締結。ただし労働者本人が両方で時間外上限を超過しないよう注意喚起→弊法人が単独で上限を超えなければ行政指導対象にはなりにくい
7.まとめ(結論)
質問→結論
(1) 弊法人で残業なしの場合、残業代は不要か→はい、弊法人単体では発生しない
(2) 弊法人で1時間残業した場合の扱い→ その1時間分のみ支給で適切
(3) 36協定上限との関係→ 原則各社別管理だが、本人の健康配慮上、通算管理努力・就業制限が望ましい
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/17 12:33 ID:QA-0159611
相談者より
明快なご回答ありがとうございます。
追加で質問失礼します。
弊法人が相手方の労働時間を本人申告により把握していた場合、①と②の回答はどうなりますでしょうか。
前提として、弊法人の契約が先でございます。
ご回答よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/17 14:16 ID:QA-0159620大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
追加のご質問にご回答申し上げます。
追加のご質問をいただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
考え方や規定等につきましては、ご説明申し上げました通りです。
追加のご質問
「弊法人が相手方の労働時間を本人申告により把握していた場合、(1)と(2)の回答はどうなりますでしょうか。
前提として、弊法人の契約が先でございます。」
につきましての最終の判断は、所轄の労働基準監督署が行うものと存じます。
つきましては、本ご質問は、所轄の労働基準監督署の監督官にご確認されることをお勧め申し上げます。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/17 15:03 ID:QA-0159627
相談者より
ご回答ありがとうございました。
投稿日:2025/10/21 14:23 ID:QA-0159723大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
再度お答えいたします
ご返事下さいまして感謝しております。
1.1と2において、仮に本人が副業先の会社に弊法人のことをお伝えせず、ご教示いただいた同意を得なかった場合どうなるのでしょうか
ー 至急本人から伝達を要請される必要がございますが、念の為御社からも先方に伝達されるのが望ましいでしょう。その上で、両社の労働時間を合算された結果既に発生済みとなる時間外労働の割増賃金等については、御社側で支払う必要が生じるものといえます。
2.その場合、弊法人に何か責任問うが発生することはあるのでしょうか。
― 上記賃金支払をされる件について責任が生じます。但し、先方と協議され先方が支払われる事で合意された場合はそれでも差し支えございません。
投稿日:2025/10/18 18:52 ID:QA-0159649
相談者より
ご回答ありがとうございました。
投稿日:2025/10/21 14:24 ID:QA-0159724大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ガイドライン
以下、回答いたします。
「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説」(厚生労働省)が御参考になると考えられます。既にご案内の場合、御容赦お願いいたします。
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000996750.pdf
(御相談1)所定労働時間は契約の先後、所定外労働時間は発生の先後と認識しております。この場合既に弊法人16時間、副業先40時間ですが、弊法人で残業をしない限り、弊法人で時間外手当を支払う必要はないという認識でよろしいでしょうか。
(御相談2)仮に、上記スケジュールで弊法人で10時〜11時で残業をした場合、支払う分は10時〜11時までの1時間分という認識でよろしいでしょうか。
⇒ 御認識の通りであると考えられます。
【p22】
〇 副業・兼業の開始後は、自社の所定外労働時間と副業・兼業先における所定外労働時間とを当該所定外労働が行われる順に通算します。所定労働時間の通算は、労働契約締結の先後の順となっており、所定労働時間と所定外労働時間で通算の順序に関する考え方が異なる点に注意してください。
〇 自社と副業・兼業先のいずれかで所定外労働が発生しない場合の取扱いは、以下のとおりです。
・ 自社で所定外労働がない場合は、所定外労働時間の通算は不要
・ 自社で所定外労働があるが、副業・兼業先で所定外労働がない場合は、自社の所定外労働時間のみ通算する
〇 通算した結果、自社の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、その超えた部分が時間外労働となり、そのうち自ら労働させた時間について、自社の36協定の延長時間の範囲内とする必要があるとともに、割増賃金を支払う必要があります。
(御相談3)36協定に関して、特別条項の場合には副業先は通算しなくてはいけないと思うのですが。上記スケジュールですと、既に56=弊法人16+他者40で既に毎週16時間の時間外労働が発生している、ここから時間外労働と休日労働の合計100時間未満、複数月平均80時間以内に抑える必要があるという認識でよろしいでしょうか。
⇒ 単月100時間未満、複数月平均80時間以内に関しては、御認識の通りであると考えられます。
【P30】
※ 通算して適用される規定
法定労働時間(労基法第32条)について、その適用において自らの事業場における労働時間及び他の使用者の事業場における労働時間が通算される。時間外労働(労基法第36条)のうち、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件(同条第6項第2号及び第3号)については、労働者個人の実労働時間に着目し、当該個人を使用する使用者を規制するものであり、その適用において自らの事業場における労働時間及び他の使用者の事業場における労働時間が通算される。
※ 通算されない規定
時間外労働(労基法第36条)のうち、労基法第36条第1項の協定(以下「36協定」という。)により延長できる時間の限度時間(同条第4項)、36協定に特別条項を設ける場合の1年についての延長時間の上限(同条第5項)については、個々の事業場における36協定の内容を規制するものであり、それぞれの事業場における延長時間を定めることとなる。また、36協定において定める延長時間が事業場ごとの時間で定められていることから、それぞれの事業場における時間外労働が36協定に定めた延長時間の範囲内であるか否かについては、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とは通算されない。
投稿日:2025/10/19 18:13 ID:QA-0159663
相談者より
ご回答ありがとうございました。
投稿日:2025/10/21 14:24 ID:QA-0159725大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
追加のご質問にご回答申し上げます。
追加のご質問をいただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
考え方や規定等につきましては、ご説明申し上げました通りです。
追加のご質問
「弊法人が相手方の労働時間を本人申告により把握していた場合、(1)と(2)の回答はどうなりますでしょうか。前提として、弊法人の契約が先でございます」
につきましての最終の判断は、所轄の労働基準監督署が行うものと存じます。
つきましては、本ご質問は、所轄の労働基準監督署の監督官にご確認されることをお勧め申し上げます。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/21 15:52 ID:QA-0159729
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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