人事異動に関して許容範囲
社員を人事異動させるにあたり相談させていただきます。
弊社はシフト勤務(24時間360日対応)の部署があります。
勤務時間は朝8時から夜20時30分と夜20時から翌朝8時30分です。
3日勤務、3日公休を繰り返しています。
異動させようとしている社員の現在の勤務時間は9時から17時30分、土日祝日は休みです。この場合、異動命令は許容されるのでしょうか。
教えていただけますと幸いです。
投稿日:2025/10/16 11:33 ID:QA-0159551
- A-Zさん
- 東京都/運輸・倉庫・輸送(企業規模 31~50人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
日本の人事部Q&Aをご利用くださりありがとうございます。
ご質問から推察するに、ホワイトカラー(営業・事務職)からブルーカラー(現業職)への配置転換と思われますが、本ケースの異動命令が許容されるためには、以下の条件を総合的に満たす必要があります。
1, 就業規則または労働契約に、職種の変更、夜間勤務を含むシフト制への配置転換、勤務時間変更の可能性およびその変更の範囲が明確に定められており、異動命令がその範囲内であること。
2,異動命令に客観的かつ合理的な業務上の必要性があり、労働者が被る不利益の程度(健康リスクや生活への影響)が受忍限度を超えないこと。
3. 異動先が変形労働時間制を採用している場合に、異動対象となっている労働者が育児・介護をしている者であれば、育児・介護を行うために必要な時間を確保できるような配慮がされていること。
就業規則や労働契約に、大幅な職種や勤務形態の変更(特に夜間勤務を含むシフト制への移行)に関する明確な規定がなく、労働者の不利益が極めて大きい場合、あるいは懲罰的な人事異動と思われる場合には、異動命令が権利の濫用として無効となることがあります。
人事異動を発令するにあたり、特に夜間勤務が加わることによる労働者の健康や生活への影響について、ご本人に対して十分な配慮と説明(安全配慮義務の観点からも)を尽くすことが重要かと思料いたします。
投稿日:2025/10/16 14:19 ID:QA-0159561
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
まず、異動の可否においては、就業規則や雇用契約書に、異動を命じる場合
がある旨の規定があるかが最も重要です。
これが労働契約の根拠となります。通常、この規定があれば、会社に人事権
があるため、業務上の必要性に基づいて異動を命じることができます。
一方で、本件の場合は、異動だけではなく、異動にともない労働条件が大きく
変わります。たとえ異動の必要性があったとしても、社員に対して大きな不利益
とみられる労働条件の変更を行う場合は、社員本人の同意をとっておくことが、
トラブル防止の観点からも重要と言えるでしょう。
投稿日:2025/10/16 15:49 ID:QA-0159564
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
就業規則に異動について規定があり、
雇用契約書においても異動の範囲として記載があり、
また、その異動が恣意的なものでなければ、許容範囲といえます。
投稿日:2025/10/16 16:08 ID:QA-0159567
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.人事異動命令の法的根拠と原則
(1) 根拠
一般に、就業規則や雇用契約書に「業務上の必要に応じて配置転換・異動を命じることがある」旨の規定がある場合、
会社には「人事異動命令権(配転命令権)」が認められます(労働契約法第7条・第8条)。
(2)判例の基本枠組み(東亜ペイント事件・最判昭和61年7月14日)
配置転換命令が有効とされるためには、
1. 業務上の必要性があり、
2, 労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益がなく、
3. 権利濫用(不当目的・報復人事等)がない
ことが必要。
2. 本件での「勤務条件変更」の影響分析
今回の異動により、勤務条件は以下のように大きく変化します。
項目→現状→異動後→変更の影響
勤務時間→9:00~17:30(実働7.5h)→8:00~20:30、または20:00~8:30(12.5h拘束・実働11h)労働時間・休憩・深夜労働が大幅増
勤務形態→日勤固定→シフト制(昼夜交代)→生活リズム・健康への影響
休日→土日祝日→3勤3休休日体系の大幅変更
勤務地→同一事業所内→同一(と仮定)→地理的影響は軽微
→ 勤務時間・勤務形態・休日体系の変更幅が極めて大きく、労働条件の本質部分に関わる変更であるため、
単なる配置転換ではなく、**実質的な労働契約内容の変更(労働条件の不利益変更)**と評価される可能性があります。
3.判例・実務上の判断傾向
(1) 配転命令が有効とされた例
業務上明確な必要性があり(新規プロジェクト対応、慢性的な人員不足等)
異動後も過大な負担ではない(勤務形態の変化が限定的)
家庭的・健康上の不利益が軽微
(2) 無効とされた例
業務上の必要性が弱く、個人への不利益が大きい
日勤者を交替制勤務へ一方的に変更(例:電電公社高松局事件・高裁昭和54年)
家庭・健康事情を無視した深夜勤務命令(例:国鉄事件、JR東日本事件)
4.実務対応:会社が取るべき手順
業務上の必要性の整理
- 人員不足、業務拡大、技能活用など、合理的な目的を明文化。
- その部署でなければならない理由を記録に残す。
本人への説明・同意手続
- 異動理由・期間・勤務体制・労働条件(割増賃金等)を説明。
- 同意書または確認書を取得(口頭同意では後の紛争リスクあり)。
不利益緩和措置の検討
- 深夜勤務手当・交替勤務手当の明示。
- 健康診断・勤務間インターバル確保。
- 一定期間の試行・段階的移行(例:日勤→準夜→夜勤)。
労使協議(労働組合・従業員代表)
- 36協定・就業規則改定が伴う場合は、代表者の意見聴取を実施。
5.実務的な判断基準まとめ
判断基準→本件評価→コメント
業務上の必要性→△(説明要)→その部署でなければならない理由が必要
不利益の程度→×(大)→生活・健康への影響大
同意の有無→要同意→一方的命令はリスク高
権利濫用の疑い→注意→会社都合(懲戒的配置)でないことの説明必要
→本人同意を前提とした異動(または期間限定・希望聴取型異動)が最も安全です。
6.推奨される会社対応
就業規則に「業務上の必要がある場合、交替勤務または夜勤への配置転換を命ずることがある」と明記する。
ただし、実際に異動を命じる際は、本人同意または十分な説明・不利益緩和を経たうえで行う。
書面(「配置転換同意書」または「勤務体制変更確認書」)で記録を残す。
7.まとめ
項目→結論
一方的命令の可否→業務上の必要性が極めて強くない限り、慎重にすべき(原則は同意要)
不利益の大きさ→大(勤務形態・休日・時間すべて変更)
推奨対応→説明・同意・不利益緩和措置を講じたうえで実施
書面化→配置転換同意書・勤務体制変更確認書を残すことが望ましい
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/16 16:21 ID:QA-0159569
プロフェッショナルからの回答
対応
雇用契約がどうなっているかが大前提です。就業規則等で、さまざまな業務、シフトが明示されており、人事異動についても対象となることが記載されていて、その上で雇用契約でも異動含む変更を納得で雇用されていれば、会社の裁量として異動命令可能でしょう。
投稿日:2025/10/16 16:40 ID:QA-0159571
プロフェッショナルからの回答
情報提供
以下、情報提供いたします。
(1)本件、職種の変更があるようにも思われます。この場合、以下の裁判例(ヤマトセキュリティ事件 大阪地決定 1997年6月10日)「事務系業務から警備業務への職種変更については個別同意が必要である」旨が参考になると考えられます。
※ 採用条件、採用後の勤務形態の違い、求人広告の内容と採用面接時における会社側の言動、警備業務に携わっている他の女子職員に関する採用状況を総合勘案すれば、社長秘書業務を含む事務系業務の社員として採用する旨の合意がなされたものというべきである。
※ 会社としては、採用する際において、将来事務系業務以外に警備業務を担当することもあり得ること、その際は警備業務に必要な資格書類の提出を求め、警備訓練を実施することなどを告知し、同意を得ておけば就業規程による異動を命じることができたものといえる。
※ (これらが無かったことから、)就業規程の適用はなく、警備業務への職種の変更については個別の同意が必要である。
(2)また、職種の変更に関連して、「能力・経験を活かすことのできない業務に漫然と配転した」とし、配転命令を無効とした裁判例があります。(安藤運輸事件 名古屋高 判決 2021年1月20日)
※ 本件配転命令は、そもそも業務上の必要性がなかったか、仮に業務上の必要性があったとしても高いものではなく、かつ、運行管理業務及び配車業務から排除するまでの必要性もない状況の中で、使用者において、運行管理者の資格を活かし、運行管理業務や配車業務に当たっていくことができるとする労働者の期待に大きく反し、その能力・経験を活かすことのできない倉庫業務に漫然と配転し、労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせたものであるから、本件配転命令は、権利の濫用に当たり無効と解するのが相当である。
投稿日:2025/10/16 22:03 ID:QA-0159579
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、通常の異動であれば問題ございませんが、当事案の場合ですと労働条件が大きく異なりますので、合理的な異動の範囲を明らかに超えているものといえます。
従いまして、どうしても異動させたいという事でしたら、当人の同意を得られる事が必要といえるでしょう。
投稿日:2025/10/16 22:38 ID:QA-0159581
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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