サービス残業に関する懲戒処分について
サービス残業の撲滅に向けて、懲戒処分の検討をするように役員より指示がありました。
対象者は、明示、黙示に関わらずサービス残業の指示を行なった管理職と実際にサービス残業を行なった一般職層などです。懲戒処分を実施する上で検討すべきポイントや処分案についてアドバイスを頂けませんでしょうか。
<就業規則等>
・就業規則には時間外就業に関する定めがあり、原則上長の命令によるものとし、やむを得ず命令を受けずに行なった場合は、本人申告に基づいて上長が事後承認することになっています。
・時間外に関する協定も締結しています。
・就業規則の懲戒に関する定めには、出欠、早退その他勤務に関係し、虚偽の届出を行なった場合には懲戒に処すると明記しています。
※正社員、パートタイマーも同様です。
・懲戒処分の実施にあたっては、全従業員へ懲戒処分の対象とすることを周知したうえで、以降に発生した事案を処分の対象とする予定です。
・当然、未払い分の時間外就業については、正しく支払います。
<処分案>
①明示、黙示に関わらずサービス残業の指示を行なった管理職については、通常であれば出勤停止程度、悪質であれば降職・降格程度を想定しています。
②部下が業務命令外の時間外をしており、それが未計上になっていることに気づかなかった場合は管理不行届きで通常であれば譴責、悪質であれば減給程度を想定しています。
③明示、黙示に関わらずサービス残業の指示を受けて、サービス残業を実施した一般職については、通常であれば減給程度、悪質であれば出勤停止程度を想定しています。
④業務命令外の時間外を実施した一般職については、通常であれば出勤停止程度、悪質であれば降職・降格程度を想定しています。
<アドバイスいただきたい点>
・過去懲戒処分の対象としていなかった事案を、対象に切り替えるためにクリアすべき条件は何か。
・上記①~④のケースを懲戒処分とすることができるか。
・懲戒処分を実施する上で気をつけるべきポイント、満たすべき条件は何か。
・量刑のバランスは問題ないか。
・一般職の中に、パートタイマーも含めることは問題ないか。
よろしくお願い致します。
投稿日:2013/10/08 12:16 ID:QA-0056421
- *****さん
- 東京都/食品(企業規模 1001~3000人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、制裁内容につきましては明確な法的基準はございませんし、あくまで各会社が自社ポリシーを踏まえて社会通念に反しないと思われる範囲で決められるべき事項です。従いまして、この場合にこの制裁内容が適切といったような個別の判断や量刑バランス等まで私共で回答出来かねる件はご了承下さい。
その上でお答え可能な点に絞って申し上げますと、残業も含めた労働時間の管理につきましては、法令上会社が責任を持って行うべき事柄です。それ故、サービス残業を直接の理由とする制裁対象は指示した側(管理職や上司等)に限られるべきといえます。特に、文面のようにサービス残業の指示を受けて残業した一般職社員というのは、当該社員からすれば会社側(上司も指示している以上は一般的に会社側の行為者に含まれます)の指示に従った結果ですし、状況によっては法令違反と知りつつも断り難い事が十分ありえるはずです。そうした社員に対し直ちに制裁を科すというのは明らかに行過ぎといえますので、避ける必要がございます。
勿論、指示もされず管理者も気付かない状況で行われた勝手な残業については、残業代を支払う必要はございませんし、注意されても尚そのような行為を繰り返すようであれば労働契約に対する違反行為としまして制裁を加える事も可能といえます。この点につきましては、パートやアルバイトも含めた全従業員に関し当然適用されるべきですし、恐らくは現行制裁規定でも対応可能と考えられます。但し、残業をしたからそれだけで制裁‥というのでは、会社側の労働時間への管理責任を放棄したものと判断されかねませんので、そうした点には十分注意が必要といえます。
投稿日:2013/10/08 22:59 ID:QA-0056429
相談者より
ご回答ありがとうございます。
量刑については、その他の懲戒処分とのバランスを考慮した上で検討いたします。
明示または黙示の未払い労働の指示を受けたと判断されるケースについては、慎重に対応を検討します。
ただし、法令違反と認識していながら、指示を受けてそれを実行した者については、過去から譴責程度の制裁を課していた経緯があります。
法的リスクと当社の懲戒基準、考え方の全体バランスを踏まえて、役員への説明を行ないたいと思います。
また、勝手な残業については、数回指導を行なった上で、それでも改善が見られない場合については懲戒を検討するように目安を設けて対応します。
投稿日:2013/10/11 15:50 ID:QA-0056451大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
- 大隅 隆行
- 株式会社ビジネスブレイン太田昭和 人事コンサルタント/社会保険労務士
お答えします。
今回注目すべき一番のポイントは、「サービス残業の撲滅」です。
御社役員が、残業に対する現況を問題と捉え、「サービス残業の撲滅」を課題として対応するように、といった指示だと想定されます。従って、「サービス残業の撲滅」のテーマを掘り下げると、懲戒処分の検討に限らず、以下の事項も併せて検討し、その改善策をトータル的な視点で検討することが重要です。
①現場業務の改善の必要性(仕事の進め方に問題ないか)
②現場上長のマネジメントの検証(マネジメント手法に問題ないか)
③残業申請・承認フロー・ルールの改善・徹底等(ルール・運用が適切か)
④懲戒処分の検討(当該検討テーマ) など
社員に対するメッセージとして留意すべきは、④だけだとネガティブな印象を与えかねないので、あくまでテーマは「撲滅」としたうえで、①~③対策も併せて伝えることです。
また、社員の健康の確保するため、労働時間の把握・管理を適正に行なう必要があるということも、重要な視点・メッセージになると思いますので要素として入れても良いと思います。その結果④の充実を図ることを伝えた方が、より建設的な印象を与えると思います。
次にご質問の本題上記④についてですが、あくまで①~③のいずれかの改善策を実行・運用した後、不履行者処分としての位置づけで検討に入ることになります。
処分案の検討については、御社就業規則の懲戒処分規定の現況が分かりかねますので詳細は割愛しますが、ポイントとしては、他の懲戒処分及び懲戒事由内容との量刑と相対的に比較して判断してください。
次にアドバイスのご依頼について、下記回答します。
>・過去懲戒処分の対象としていなかった事案を、対象に切り替えるためにクリアすべき条件は何か。
>・上記①~④のケースを懲戒処分とすることができるか。
>・懲戒処分を実施する上で気をつけるべきポイント、満たすべき条件は何か。
⇒前述しましたとおり、①~③のいずれかの改善策を実行した後に懲戒処分案検討といったプロセスを作ることが大切です。その検討から入ればおのずとできなかった場合の処分事由等も明確になりますので、もしされていないのならば、その①→④の流れで再度組み込み判断されてみてはいかがでしょうか。
また、懲戒処分の実施には、就業規則上に根拠となる定めが必要です。権利の乱用にならないようにするために、相当性の原則や平等取扱いの原則を念頭に置きながら懲戒内容を検討する必要があります。これに加え、その実行のフロー(事実確認、意見聴取、懲戒決定のプロセス等)を明確にしておくことも必要になると考えます。
>・量刑のバランスは問題ないか。
⇒前述したとおりです。
>・一般職の中に、パートタイマーも含めることは問題ないか。
⇒御社パートタイマーの残業指示等の管理手法が分かりかねるため一概に言えませんが、社員との特段の区別がない管理手法であれば、同等に含めて問題ないと思われます。
以上、ご検討よろしくお願いします。
投稿日:2013/10/09 10:33 ID:QA-0056431
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
一般職が、サービス残業を強要され、懲戒処分される定めは、是正勧告もの
サービス残業の撲滅への経営陣の取組姿勢は賛とすべきですが、 抑え処を間違うと、 副作用を誘発します 。<処分案> ③ に関して、 命令される一般職は、 弱い立場にあり、 結果として 「 被害者 」 となります。 選択の余地なく、 サービス残業させられ、 挙句の果てに、 懲戒処分に付するといった発想は、 間違っています。 当該社員から基準監督署へ申告に基づき、 監督が実施されれば、確実に是正勧告の対象になるでしょう。 それ以外は、 可なり突っ込んだ処分案だと思いますが、 時間外・休日残業を命じる立場にある、 管理職社員への趣旨徹底、 教育訓練面の充実の方が、 より重要だと感じます
投稿日:2013/10/09 11:11 ID:QA-0056432
プロフェッショナルからの回答
弱者保護
やや厳しすぎる感はありますが、方向としてはきわめて正当であり、実現出来ればサービス残業撲滅の模範例となるかも知れません。ただ、「④業務命令外の時間外を実施した一般職」への懲戒が問題でしょう。なぜなら上司の無言の圧力や上司でもない先輩や周囲のプレッシャーサービス残業した場合等もあり得るからです。④はあえて設けずとも、主旨は達成できないでしょうか。
投稿日:2013/10/10 22:52 ID:QA-0056446
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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