試用期間の延長等の対応について
いつもご指導ありがとうございます。
福祉施設の総務担当者です。
福祉現場での職員採用は非常に厳しい状態で、応募者の適正や経験が十分に期待するレベルになくても、正規職員として採用に踏み切るケースが多くなってきました。試用期間は原則3ヶ月です。
その中で、①適性があると判断された試用職員と、②判断が十分にできない試用職員とを明確に区分するため、試用解除時の見極めにより、②について試用期間の延長は可能でしょうか。
また、試用期間が当初指定より延長された職員に対して、昇給や、賞与で評価を下げることは問題ないでしょうか。
因みに、現状の就業規則では試用期間中の給与等の規定がないため、試用期間から正規職員と同様の給与、手当を支給しています。
宜しくご指導願います。
投稿日:2025/11/25 11:28 ID:QA-0161099
- いわさきさん
- 山梨県/医療・福祉関連(企業規模 51~100人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1. 試用期間延長は可能か
(1)結論
就業規則に「試用期間延長の規定」があれば延長可能です。
逆に、規定がない状態で延長することは原則できません(労働契約法3条・6条の明示義務の観点)。
(2)根拠
試用期間は解約権留保付き労働契約です。
最判昭和48.12.12(三菱樹脂事件)により、
試用期間中であっても労働契約は成立しており
解約権(本採用拒否)行使には客観的合理性が必要
試用期間の延長も、契約内容の一部変更であり合理性が必要
とされています。
(3)合理的な延長の要件
就業規則に定めがあること
「業務遂行能力の見極めが十分でない場合には、○ヶ月まで試用期間を延長できる」等。
本人に事前説明・同意を得ること
※同意書は必須ではないが、後の紛争防止に極めて有効。
延長の理由が客観的で合理的であること
例:勤怠不良、介護業務の基礎スキル不足、コミュニケーション不全、事故防止のため追加教育が必要等。
2.「適性が判断しきれないための延長」は可能か
(1)結論
可能。ただし「不適格ではないが評価が保留」であることを理由に延長する場合は、記録化が必須。
(2)実務でよくあるOKな理由
介助技術が一定レベルに達していない
利用者トラブル対応に課題があり、引き続き教育が必要
夜勤業務・記録業務の習熟に遅れがみられる
コミュニケーション・指示理解に時間がかかる
事故・ヒヤリハットが複数回生じており改善状況を観察したい
これらは能力不足の補正のための延長として合理的で、福祉施設でも一般的に認められる運用です。
3.試用期間延長者の「昇給・賞与評価を下げる」ことは可能か
(1)結論
可能。ただし就業規則・給与規程の整備が必須。
(2)重要ポイント
就業規則・給与規程に「評価期間・評価方法」が明示されているか
→ 試用期間中も評価対象に含めるのか、別扱いとするのか。
試用延長=評価上の減点要素と位置づける旨を規定できる
※実務では「評価A~E」のうち、延長者はCまたはDとするなど。
試用期間中の給与が本採用と同じでも、賞与査定を下げることは問題なし
賞与は本質的に「支給義務なし・勤務成績反映」が前提(労基法24条の賃金性は認めつつも、支給額の裁量は大きい)。
(3)トラブル防止のための注意点
評価理由を書面で説明できるように記録を残す
他の職員との均衡説明ができるようにしておく
延長期間も評価期間に含まれる旨を規程に記載する
4. 現状の就業規則に「試用期間中の給与等の規定がない」場合の問題点
(1)リスク
延長後も同じ給与・待遇を維持すべきとの解釈にされたり、給与減額が難しくなる。
試用期間中の扱いが曖昧で、「不利益変更」「差別扱い」等と主張されやすい。
試用解除(本採用拒否)を行う場合、客観的評価指標の不備が紛争要因になる。
5.推奨すべき規程(就業規則・給与規程)整備案
以下の条文例を添付します。顧問先でそのまま使えるレベルかと思います。
・(条文例)試用期間と試用期間延長
(試用期間)
第○条 社員として採用した者は、採用の日から3ヶ月間を試用期間とする。
2 前項の期間中において勤務成績、能力、健康状態、適性、勤務態度その他本採用の可否を判断するために必要な事項の評価が困難である場合は、会社は試用期間を最長3ヶ月を限度として延長することができる。
3 前項の延長を行う場合、会社はその理由及び延長期間を本人に書面により通知する。
・(条文例)給与・賞与評価に関する取扱い
(試用期間中の待遇)
第○条 試用期間中の給与、手当は本採用後と同額とする。ただし、賞与および昇給については勤務成績等の評価により別途定める。
(賞与)
第○条 賞与は、会社の業績および社員の勤務成績、勤務態度、能力等を総合的に勘案して支給の有無および金額を決定する。
2 試用期間を延長された者については、当該延長期間を含めた勤務成績を踏まえて評価を行う。
6.実務運用:試用期間延長の手順(安全な運用フロー)
評価面談の実施
→ 評価票・記録を残す
延長理由の説明
→ 能力不足・教育継続の必要性
延長通知書を交付
(書面のほうが紛争防止に有効)
改善計画(OJT計画)を提示
期間終了時に再評価
7.まとめ(顧問先向けに伝えやすい要点)
試用期間の延長は就業規則に規定すれば可能
「適性が判断しきれないための延長」も合理性があればOK
延長者の昇給・賞与評価を下げることも可能(規程整備が前提)
現状の規程に試用期間中の待遇規定がないため、紛争リスクはやや高め
試用期間条項・延長条項・評価条項の整備が望ましい
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/11/25 11:57 ID:QA-0161102
相談者より
早速の回答ありがとうございました。
また、具体的な参考規定をご説明いただくなど、詳細なご説明ありがとうございました。
対応は可能とのことなので、規程の見直しを含め検討していきたいと思います。
投稿日:2025/11/25 12:52 ID:QA-0161106大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
すべてはコンプライアンスに則って進めなければなりません。その根拠は雇用契約です。
契約に記載されており、本人が署名したものであれば、有効となるでしょう。
ただし、「期待するレベル」と実態がどう乖離しているのか、証明責任は組織側にあります。「なんとなく」ではなく、明確に能力が数値などで測れる証拠が必要です。
例えば勤怠で、入社後から当日休みや遅刻早退など、不良状況がある。新人業務指導には通常〇時間かけているが覚えられず、3倍時間がかかった。利用者クレーム件数が他職員の〇倍・・・など、明確に能力不足を証明できる数字が必要でしょう。
また単にミスをカウントしただけでなく、ミスの度に指導をして内容理解を確認(サインなど)が重なるなどもきわめて重要な証拠です。
採用面接や入社受諾において、こうした試用期間の延長の可能性などにも触れておく必要があります。
投稿日:2025/11/25 12:00 ID:QA-0161103
相談者より
ご回答ありがとうございます。
しっかりとした根拠、規程、説明を行うことが必要だとわかりました。
評価結果が相互に理解できる仕組みを検討していきます。
投稿日:2025/11/25 12:58 ID:QA-0161107大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
試用期間の延長について、試用期間を延長する可能性があること、および延長が
できる場合の期間、要件(理由)を、あらかじめ就業規則または雇用契約書に明記
していれば、延長も可能です。一方、何ら明記が無い場合、延長は労務トラブルの
リスクがともないますので、合意のもとでの延長が基本対応となります。
また昇給や賞与で評価を下げることにつきましては、試用期間の延長自体を
評価を下げる要素には出来ませんが、試用期間の延長がされるということは、
能力・成果評価が十分されていないことが通常ですので、能力・成果に対する
人事評価として、昇給・賞与査定に反映することは、通常の評価ですので、
問題はありません。
投稿日:2025/11/25 13:04 ID:QA-0161108
相談者より
ご回答ありがとうございます。
実施する場合は、就業規則等を見直すとともに、職員にしっかりと説明、合意が必要だということがわかりました。
じっくり検討していきたいと思います。
投稿日:2025/11/26 13:25 ID:QA-0161175大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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