雇用契約書の内容変更について
いつもお世話になっております。
入社の際社員に雇用契約書を記載してもらいますが、基本給は基本的に昇給により毎年上がっていきます。
そのたびに契約書を書き換え再度サインしてもらう必要があるのでしょうか?
確かに本来はそうあるべきだとは思うのですが、地方の中小企業でも実際そういったことはしっかりやられているのでしょうか。
弊社はかなり小さな会社で、多方面で緩さがあります。
転職してきてからというものあまりにルールがなく驚くことばかりです。
ですが、前職でも基本給変更に伴う雇用契約書の再締結は実施していなかったため、気になって質問させていただきました。
よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/23 13:11 ID:QA-0159820
- 転職組さん
- 静岡県/建築・土木・設計(企業規模 11~30人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
労働基準法と労働契約法
以下、回答いたします。
(1)労働基準法第15条では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」とされています。そして、賃金については、原則、書面交付(労働条件通知書)によるものとされています。(雇用契約書が労働条件通知書を兼ねている場合があります。)
(2)一方、労働契約締結後については、「労働契約や就業規則の変更等により労働条件の変更がなされた場合に本条(上記第15条)の労働条件の明示を要するか否かについては、本条の適用はないと解すべきである」とされています。(令和3年版 労働基準法 上 厚生労働省労働基準局編)
(3)他方、労働契約法では、「労働契約の内容の理解の促進」に関連して、次のことが定められています。
第四条 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。
2 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。
(4)以上を踏まえれば、基本給変更に際し、以下のように認識されます。
1)「労働条件通知書の再交付(雇用契約書の再締結)」は、労働基準法上(取締法規上)の義務とはなっていない。
2)その一方で、労働契約の内容(基本給変更)の理解促進、書面による確認は労働契約法上(民事法規上)の努力義務とされている。
投稿日:2025/10/23 14:29 ID:QA-0159826
相談者より
労働基準法と労働契約法について詳細にありがとうございます。法律について勉強していかなければならないことを痛感しております。
参考にさせていただきます。
投稿日:2025/10/29 16:08 ID:QA-0160050参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
結論から言うと、基本給など賃金条件が変わるたびに雇用契約書を再締結(再署名)することが法的に義務付けられているわけではありません。
ただし、労働条件通知の更新・明示は必要です。
1.法的根拠と考え方
労働基準法第15条および施行規則第5条では、使用者は労働者を雇う際に「労働条件を書面で明示する義務」があるとされています。
しかし、これは「雇入れ時」に義務付けられているもので、その後の変更時に必ず契約書を再締結しなければならないとは定められていません。
つまり、
雇用契約書を再度交わす義務はない。
ただし、労働条件(賃金・労働時間・職務内容など)を変更した場合は、変更内容を明示(書面交付)する義務がある。
この「変更内容の明示」は、
・「労働条件変更通知書」
・「賃金改定通知書」
などの書面で行えば足ります。
2. 昇給時の一般的な実務運用
中小企業を含め、現実的な運用としては次のようなケースが一般的です。
パターン→実務対応→備考
年1回の昇給(定期昇給)→「賃金改定通知書」で対応→契約書の再締結なし
職種・雇用区分・労働時間なども変更→新しい雇用契約書に差し替え→実質的に別契約となるため
複数の労働条件が変わる(転勤・手当・勤務形態など)→新契約書または変更契約書→労働契約法第8条の「合意による変更」対応
3. 実務上の標準対応(推奨)
昇給が決まった際には次のように対応するのが望ましいです。
「賃金改定通知書」または「労働条件変更通知書」を交付し、本人から受領印をもらう。
契約書の再締結までは不要。
・通知書の記載例:
賃金改定通知書
氏名:_________ 殿
次のとおり、基本給を改定いたします。
改定前基本給 ○○円
改定後基本給 ○○円
改定年月日 令和○年○月○日
その他の労働条件については変更ありません。
令和○年○月○日
株式会社○○○○
代表取締役 ○○○○ 印
4.参考:現場での「緩い」運用との比較
実際、地方・中小企業では以下のような運用が多く見られます。
昇給時に「通知書を出す」だけ(再契約なし)
口頭で伝えるのみ→法的には×
人事給与システム上のデータ変更のみ→×
「書面で通知(サイン・押印または電子同意)」までは求められますが、
再契約書までは不要です。
5.例外的に再契約が必要なケース
以下のような場合は、雇用契約書の再締結が望ましい(または必要)です。
変更内容→理由
契約社員→正社員/嘱託社員など雇用区分変更→契約形態が変わるため
労働時間制の変更(例:固定→変形労働時間制)→労働契約の根幹に関わる
職種・勤務地が大幅変更→契約の本質的変更(労契法8条)
賃金体系の抜本改定(歩合制導入等)→労働条件変更の合意が必要
6.まとめ
項目→判断
昇給ごとに雇用契約書を再締結する必要→× 原則なし
書面での明示義務→ あり(賃金改定通知書等で対応)
地方中小企業の実態→通知書対応が多数(契約再締結は少数)
再契約が望ましいケース→雇用区分・職種・制度が変わる場合
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/23 14:37 ID:QA-0159827
相談者より
大変詳しくありがとうございます。
雇用契約書については基本的に再締結する必要はない旨、よく分かりました。
お恥ずかしながら「賃金改定通知書」や「労働条件変更通知書」なるものも社内には存在せず、口頭ですら通知していない状況です。
早急に対応準備をしなければならないことがよく分かりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/10/29 16:11 ID:QA-0160051大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
|そのたびに契約書を書き換え再度サインしてもらう必要があるのでしょうか?
実務的には、以下の対応をとる場合が多いです。
↓ ↓ ↓
雇用契約書の再締結ではなく、給与変更通知書(名称は仮)を対象者へ発行。
給与額は労働条件の重要事項ですので、金額変更の都度、対象社員へ通知する
行為が必要です。但し、通知は変更内容を書面に記載し、対象社員へ発行する
のみで足ります。著名・捺印などの行為は不要です。
投稿日:2025/10/23 15:23 ID:QA-0159830
相談者より
端的に分かりやすくありがとうございます。
再締結ではなく別途通知書で事足りる旨よく分かりました。
参考にさせていただきます。
投稿日:2025/10/29 16:12 ID:QA-0160052参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
契約を毎年更新するのではなく、給与の改定を文書で行い、解釈の齟齬がないように、明確に金額を提示する必要があります。
投稿日:2025/10/23 22:04 ID:QA-0159848
相談者より
契約の再締結ではなく別の書面にて提示の旨、よく分かりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/10/29 16:13 ID:QA-0160053参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
その必要はありません。
労基法第15条第1項前段に、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」との規定があります。
この規定は、あくまで採用時に労働契約を締結した際に適用されるものであって、契約締結後は、労働条件に変更があったからといって、都度、適用されるわけではありません。
ですから、昇給により毎年賃金額に変更があったからといって、そのたびに契約書を書き換え再度サインしてもらう必要はないということになります。
労働契約書というのは、採用時に交わすものです。
ただし、どうしても気になるというのであれば、「労働条件変更通知書」という形で変更内容のみ記載した書面を交付しておけばよろしいでしょう。
投稿日:2025/10/24 07:24 ID:QA-0159852
相談者より
>>あくまで採用時に労働契約を締結した際に適用
お恥ずかしながらこの前提が知識としてありませんでした。
大変よく分かりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/10/29 16:14 ID:QA-0160054参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、昇給の制度に関しましては、就業規則や雇用契約書にも記載されているはずです。
そうであれば、賃金額が変わっても既存の労働条件の範囲内での変更となりますので、都度雇用契約書自体を作成する必要性まではございませんし、特に正社員の場合ですと実際に作成されている会社は少ないものといえます。
投稿日:2025/10/24 21:30 ID:QA-0159910
相談者より
契約書の再締結が必要ないこと、そして実際に実行している会社が少ないとのお答えも非常に参考になりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/10/29 16:16 ID:QA-0160055参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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