「解雇」規定の運用について
弊社「就業規則」の「解雇」規定に「(2)精神、若しくは身体に故障があるか、又は虚弱、老衰、疾病等のため業務にたえられないと認めたとき」と定めた項目があります。
この項目を適用するとした場合、どの程度の状況を想定するものなのか参考例をお示しいただけましたら光栄です。
例えば、精神疾患で休職し、主治医の復帰許可が出て復職後2か月程度経過しても復調しないで欠勤がつづくとか(先日質問させていただきました。)、長期休職は「解雇要件」にはならないとすれば、この規定をどのように運用すべきなのか。規定は必ずしも「休職」とは関連しないと解釈しています。また、「認めたとき」というのは「誰が、いつ」、という点も解釈がどうなるのか教えていただきたい。
よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/17 10:48 ID:QA-0159593
- 苦労人 その1さん
- 長野県/運輸・倉庫・輸送(企業規模 51~100人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、就業規則を運用されるのは会社ですので、当然に会社側で個別事情に即して判断される事になります。
つまり、文言に該当するか否かについてあらかじめ決めれらておく事は困難ですし、産業医等の意見をきかれつつも最終的には会社が都度判断しなければなりません。
示された精神疾患等についても、個々の具体的状況によりますが、欠勤が続き今後も同様であると想定出来るようでしたら、通常の場合ですと解雇事由に当てはまるものと考えられます。
投稿日:2025/10/17 11:15 ID:QA-0159602
相談者より
ご回答いただきありがとうございます。
投稿日:2025/10/17 11:30 ID:QA-0159606大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
判断は全て貴社によります。
病状など千差万別で、事前の規定化はまず無理でしょう。
また、医師以外の素人は絶対に病状判定に触れてはなりません。
一方、就業能力については、医師など外部の人間は反対できません。
医師の診断書をもって、貴社が業務が遂行可能かどうかを判断することになります。
個別に取り組んで下さい。
投稿日:2025/10/17 12:19 ID:QA-0159609
相談者より
ご回答いただきありがとうございます。
投稿日:2025/10/17 14:13 ID:QA-0159616大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
就業規則上の「解雇」規定、とくにご提示の条文――
「(2) 精神、若しくは身体に故障があるか、又は虚弱、老衰、疾病等のため業務にたえられないと認めたとき」
――は、多くの企業の就業規則に見られる伝統的な定めですが、実際の運用には相当の慎重さが求められます。以下、実務的な視点から詳しく整理します。
1.この条項が想定する状況(典型例)
この条項は、「労働契約を継続しても使用者側に著しい支障がある場合」に限って解雇を認める趣旨です。
したがって、「一時的な体調不良」や「一定期間の休職」では足りず、恒常的に労務提供が不能な状態であることが必要です。
典型的な想定例
事例→状況→解雇の有効性判断の方向性
(1) 病気が長期化し、休職期間を満了しても復職不能→主治医も「就労不可」の意見→有効(休職満了解雇に近い扱い)
(2) 身体障害などにより、従前の業務・軽易業務ともに従事困難→配置転換等を検討しても不可能→有効の可能性あり
(3) 精神疾患により復職後も欠勤・早退を繰り返し、安定勤務が見込めない→医師の許可はあるが、実務上支障大→無効リスクあり(治癒見込み・再発防止策の検討不足とみなされやすい)
(4) 老衰・体力低下で安全に作業できず、他職務もなし→安全配慮義務・配置転換検討済→有効の余地あり
(5) 一時的なうつ症状や適応障害で短期休職→治療見込みあり→解雇は不当(早計)
要するに、「治癒不能または長期的に労務不能」「配置転換でも就労不能」という二重の要件が実務的に求められます。
2.「休職規定」との関係
この解雇条項は「休職満了解雇」とは別建ての条項です。
ただし実際には、休職制度を経て復職できなかった場合の最終手段として運用されるのが通例です。
実務上の整理
「休職制度あり」 → まず休職期間を経過 → 満了時点で「復職不能」と判断 → 解雇条項適用
「休職制度なし」または「短期間で復帰見込みなし」 → この条項の直接適用もあり得るが、相当慎重に判断が必要(労働契約法16条の「客観的合理性」と「社会的相当性」が問われる)
3.「認めたとき」の主体と判断時期
(1)「誰が認めるのか」
→ 原則として使用者(会社)です。
人事部門または代表者が、医師の意見、出勤実績、勤務状況等を踏まえ、最終的に「業務に耐えられない」と判断した時点が「認めたとき」となります。
ただし、会社単独の判断はリスクが大きいため、実務では以下のような手順を踏むことが望まれます:
主治医・産業医の意見聴取(就労可否・見込み)
本人との面談・意向確認
配置転換・短時間勤務等の合理的配慮の検討
社内での最終判断(代表取締役決裁等)
このプロセスを経て初めて「業務にたえられないと認めた」と言えると考えるべきです。
(2)「いつ認めるのか」
→ 客観的に回復が見込めないと判断できる時点です。
医師の診断書や勤務状況などの客観資料を基礎に判断します。
短期間(例:復職後2か月で欠勤続き)の段階では、「まだ治療継続で改善の見込みがある」と見られやすく、解雇は無効リスクが高いです。
4.裁判例の方向性(参考)
日本ヒューレット・パッカード事件(東京地裁H24.6.26)
→ 休職期間満了後も復職不能が続き、医師も就労困難と判断。
→ 解雇有効とされた。
東芝柳町工場事件(最判昭50.7.22)
→ 精神疾患の社員に対する復職拒否が違法とされた事例。
→ 「治癒見込みの有無」を客観的に判断せずに復職拒否・解雇するのは不当。
これらから、「医師の意見」「回復の見込み」「配置転換検討」の3要素が鍵です。
5.運用上の実務ポイントまとめ
検討項目→実務上の対応
判断主体→会社(人事部門・代表者)。産業医意見を必ず参照。
判断時期→医師の診断や出勤実績等に基づき、回復見込みがないとき。
前段階→休職・時短勤務・配置転換など合理的配慮を検討。
証拠資料→診断書、面談記録、勤務実績、医師意見書などを保管。
手続→本人に事前説明・意見聴取を行い、懲戒と同様に慎重な対応。
6.結論と実務助言
この解雇条項は、「就労不能の恒常的状態」を対象とし、「休職満了」や「配置転換不可」といった状況での最終手段として運用するのが適切です。
「復職後2か月の欠勤継続」レベルでは、一般的にはまだ「業務にたえられない」とまでは言えないと判断されやすいです。
「認めたとき」は、会社が医学的・客観的根拠に基づいて判断した時点と解釈します。
解雇の前段階として、再休職措置、短時間勤務、軽易業務の検討を経ておくと安全です。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/17 12:45 ID:QA-0159612
相談者より
非常にきめ細かい、実務的なが回答いただきありがとうございました。
投稿日:2025/10/17 14:15 ID:QA-0159618大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
どの程度の状況かについては、明確な基準はなく、会社の判断事項となります。
つまり、会社(使用者)が、労働者の心身の状態が業務にたえられないという
客観的事実を確認し、その状態が継続・固定化しており、回復の見込みがない
と判断した時点となります。
通常、決定に至る過程で、以下のような対応を尽くしている必要があります。
医学的な裏付けの取得:
主治医の診断書、会社指定医の意見、産業医の意見など、医学的な資料を
収集し、業務遂行能力の有無と回復可能性を客観的に判断します。
復職可能性の検討:
労働者に対し、業務遂行に必要な能力・健康状態の回復に努めるよう促すと
ともに、配置転換や業務軽減など、雇用継続のための手段を検討・実行します。
労働者本人への意思確認:
労働者に対し、現在の健康状態や今後の見通しについて丁寧にヒアリングを
行います。
最終判断と通知:
上記を踏まえ、業務にたえられないと認めた場合に、解雇日の30日前までに
解雇予告を行うか、または解雇予告手当を支払って即時解雇をします。
上記の認めた場合については、会社が客観的資料に基づき、解雇の正当性を
担保できる状態になった時点と解釈するのが適切です。
投稿日:2025/10/17 13:07 ID:QA-0159614
相談者より
ご回答いただきありがとうございます。
参考にさせていただきます。
投稿日:2025/10/17 14:16 ID:QA-0159619大変参考になった
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