コンサルタントを本気にさせる、求職者の姿勢とは
求職者も「本気度」を見せるチャンス 相談に「来てもらう」ことの大切さ
人材紹介会社のほとんどが、「転職希望者に直接会うこと」を転職支援の第一歩としている。しかし、転職希望者の大半は在職中で忙しく、来社を待っていてもなかなか会うことができない。そのため、職場や自宅の近くまで出向いて出張面談を行っているケースは多い。しかし、「来てくれるなら会ってもいい」という転職希望者の中には、まだ十分に転職の意思が固まっていない人材も少なからずいる。わざわざ出向いたわりに成果がなかったと落胆させられることも珍しくない。
本当に転職する気があったのか?
「お忙しいようでしたら、職場かご自宅の近くまでうかがいます。どうぞお気軽におっしゃってください」
在職中のためなかなか転職相談のアポイントが取れなかったYさん。何度目かの電話の時に、携帯の留守番電話にそんなメッセージを残しておいた。すると、数日後にメールで「この日なら…」と日時を指定してきた。「自宅の近くまで来てもらえると助かります」とある。
「もちろん大丈夫です。どこで待ち合わせましょうか?」
場所は東京郊外にある、Yさんの自宅の最寄駅の駅前の喫茶店と決まった。アポイントが取れたのは土曜日の午前中。私はターミナル駅から私鉄を乗り継いで現地に向かった。
「はじめまして、どうぞよろしくお願いします」
約束の時間に喫茶店に現れたYさん。休日らしく、ポロシャツにサンダル履きというリラックスしたスタイルだ。転職は初めてということで、まずはどんな準備が必要かという話をし、求人情報の見方や人材紹介会社のシステムなどについても説明した。
「ありがとうございました。またよく考えてご連絡します」
Yさんとの転職相談1回目は、微妙な手応えであっけなく終わった。
事務所に戻る電車の中で、私は考えていた。今日、Yさんは休日だったのだろう。土曜日の午前中であり、場所といい服装といい、そう考えるのが自然だ。だとすれば事務所まで来てもらうこともできたのではないか。少なくとも今日は、仕事が忙しくて出掛けられないという状況ではなかったのは間違いない。
「まだ転職の意思が十分に固まっていないから、わざわざ人材紹介会社の事務所まで出掛けたくなかったのだろうな…」
たしかに、ちょっと相談してみたいという人は多いし、人材紹介会社側でもそういう人を歓迎するとしている。しかし、現実には、そうした人材は転職までに時間がかかるので、「時々フォローする」といったリストに入れて終わりというケースが多い。ヘッドハンティングの対象になるような優秀なキャリアを持つ人材なら別だが、一般的には「すぐに転職したい」という熱心な人を優先的に支援することになってしまう。
実際、Yさんについても、その後何度か案件を送る程度のつきあいで現在に至っている。2度目の転職相談は、まだ行われていない。