【ヨミ】アプリシエイティブインクワイアリー AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
(2015/7/31掲載)
従来、組織活性化というと、「もっと成果を上げるために、何が問題になっているか」という問題解決型のアプローチが一般的でした。コンサルティングなどの現場でも、もっぱら阻害要因や問題点がフォーカスされ、それを解消するさまざまな取り組みと成果に、議論の重点が置かれていました。しかしそれは、基本的に製品の“品質改善”と同じ発想であり、組織をまるでモノや機械のようにとらえるアプローチであるともいえます。生身の人間によって構成される実際の組織は、「これをしたので、こういう結果になった」という、たんなるカイゼンの積み重ねだけで変わっていくわけではありません。個人と組織の可能性を活かして、より自律的で、よりダイナミックな変革を促すにはどうすればいいのか――そこで開発されたのが、「AI」=アプリシエイティブ・インクワイアリーの手法です。
AIは、組織の真価を肯定的な質問によって発見し、その可能性を拡張させるプロセス。米国ケース・ウエスタン・リザーブ大学のデービッド・クーパーライダー教授と、シンクタンクであるタオス・インスティチュート創設者のダイアナ・ホイットニー氏らによって、1987年にはじめて提唱されました。最大の特徴は、あるべき姿とのギャップを問題ととらえて解決していく“ギャップ・アプローチ”ではなく、あくまでも組織や個人の核となる資源、強みに目を向けて、その強みを最大限に活用しようとする“ポジティブ・アプローチ”を基盤としている点にあります。人事領域でも最近注目されつつあるポジティブ心理学の理論を、組織において実践する手法としても有効です。
したがってAIでは、「成果を上げるために、何が問題となっているか」と問うのではなく、「成果を上げるために、私たちが持っている力や強みは何か」を考えます。問題をなくすこと、つぶすことを組織改革の目的とするのではなく、問題を「もっとほしいものは何か」「一年後、私たちはどうなりたいか」といった視点でとらえ直します。このようなポジティブな問いかけによって顕在化していない力や強みを見出し、それらの真価を認め利用してほしいものを獲得していく。組織の理想像やあるべきビジョンを実現していく。そのためのアプローチがAIなのです。AIはインタビューや対話を用いながら、以下の「4Dサイクル」といわれるプロセスに沿って進められます。
<AIの4Dサイクル>
●Discover(発見)
過去や現状における成功体験などについてインタビューを行い、個人や組織が潜在的に持っている強みを見出す
●Dream(夢)
組織や個人の持つ長所や内在する可能性をもとに、組織の理想像・ビジョンを描く
●Design(設計)
実現したい理想像やビジョンを共有し、可能性を最大限に生かした組織の姿を設計する
●Destiny(実行)
その理想像の実現に向けてアクションプランを実行し、持続的に取り組む
会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。
パワーハラスメント対策の難しさは、当事者にその意識がなくても結果的にハ...