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【ヨミ】エッキョウガクシュウ 越境学習

「越境学習」とは、ビジネスパーソンが所属する組織の枠を自発的に“越境”し、自らの職場以外に学びの場を求めることを意味します。企業内研修とも、自宅での個人学習とも異なる“サードプレイス”での学びと知的交流を重視することが越境学習の特徴で、働きながら社会人大学や民間のビジネススクールに通ったり、社外の勉強会やワークショップに参加したり、具体的な選択肢は多岐にわたります。組織の外に出て学ぶことは、異質な他者や知見による触発を促し、その経験が結果として、本人のキャリア開発や組織のイノベーションにまでつながると期待されています。
(2012/12/10掲載)

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越境学習のケーススタディ

「社外での学び」がキャリア発達を促す
組織変革にも結びつくかは研究途上

組織を越境して、職場の外で学ぶ――「越境学習」という概念が経営学の俎上にのぼるようになったのは、それほど古いことではありません。企業のマネジメント層や人事担当者からすると、社員が一歩会社の外へ出れば、そこは基本的に手のとどかない領域。いわば管轄外の場であり、それゆえに研究がほとんど進んでいなかったのです。

しかし昨今は、転職志向の浸透や自らのキャリアに対する不安を背景に、社外の勉強会など外で学ぶビジネスパーソンが増えており、そうした意識変化を受けて「越境学習」の考え方にも少しずつ注目が集まるようになってきました。

社外に出て学ぼうとする人は、その学びの場に参加する異質な他者に対し、自分が何者なのか、なぜこの場にいるのか、いまどんな課題に直面しているのかなどを説明し、理解してもらわなければなりません。越境という行為には必然的に、内省と自己洞察によって自らを整理し、言語化する責務がともないます。いいかえれば、社外での学びの場に参加することで、本人が自分自身の仕事やキャリアを客観的に見つめ直し、そこにあらためて意義を見出すという「キャリア発達」の効果が期待されるわけです。

越境学習が注目されるのは、個人のキャリア発達という観点からだけではありません。例えば大学のビジネススクールであれ、有志の勉強会であれ、そこが自発的な学びの場であれば、多様な人材が集まることで異なるものの見方・考え方のぶつかり合いが生まれます。自分とはまったく異なる業界の人の意見や素朴な疑問が、自社の常識を相対化し、自分自身がいつの間にかとらわれていた固定観念の呪縛を解く糸口になることも少なくないでしょう。越境学習については、そうした社外での個人の経験を社内に還元することで、所属する組織に変革をもたらす「イノベーション」の効果も期待されているのです。

ところがこの分野の専門家である舘野泰一さん(東京大学大学院学際情報学府博士課程、中原淳研究室所属)によると、これまでの研究で、越境学習によるキャリア発達の効果は検証されているものの、イノベーションに関する影響はまだ明確に検討されていないとのこと。舘野さんが共著『職場学習の探究 企業人の成長を考える』(日本生産性出版)の中で、社外で学ぶビジネスパーソンの実態調査を行ったところ、社外勉強会などに参加している人からは「外に出ていることを会社では話しにくい」「話すと足をひっぱられる」といったネガティブな声も多く聞かれたといいます。

組織を超えて学ぶことがイノベーションの可能性につながりそうだという、漠然とした期待はあるものの、実際に社外で得た知見・人脈を社内の組織改革や新事業の創出にどうつなげていけばいいか、有効な道筋は示されていません。その答えもまた、組織学習論やイノベーション論など、多様な関連分野の枠を“越境”した学際的な学びの場から見えてくるはずです。

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