試用期間→本採用後の条件変更の可否につきまして
いつもお世話になっております。
下記の条件で雇用契約を結んだ営業職の正社員について質問です。
・試用期間中:25万
・本採用:30万
(※給与以外の雇用形態等の変更は無し)
3か月の試用期間を設け、問題なければ本採用となる予定だったのですが、試用期間中の業績が想定以上に思わしくなく、就業規則に則り延長を行いました。
徐々に結果が出始めてきたため本採用に進める予定ではございますが、当初(入社時の雇用契約)通りの30万への給与改定ではなく、28万に一旦上げる等の対応は可能なのでしょうか。
投稿日:2025/11/27 12:44 ID:QA-0161219
- アライヤさん
- 東京都/不動産(企業規模 11~30人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
原則:不可(リスク高)/ 例外的に可能(要“合理性+合意”+“契約文言の構造”)
今回のように
試用期間25万円 → 本採用時30万円(※入社時に明示)
と契約書や労働条件通知書に記載している場合、原則として本採用時に30万円に引き上げる義務が生じます。
したがって、
本採用時に30万円 → 28万円へ引上げ幅を縮小
これは 労働条件の不利益変更に該当し、
合意がなければ認められず、
合意があっても“合理性”の説明が必要になります。
2.法的根拠
(1)労働契約法第 8 条
労働条件の変更は労使双方の合意が必要
→ 本採用後は 30 万円、と入社時に明示していれば、それが労働条件となるため、28 万円は合意がなければ不可。
(2)労働契約法第 3 条(合意原則・説明義務)
求人・契約時に明示した労働条件は、労働契約内容となり、これと異なる内容への変更は本人の合意が必要。
(3)判例(試用期間は例外的に「解約権留保」)
三菱樹脂事件(最判昭48.12.12)
試用期間は本採用拒否が例外的に認められるが、
本採用後は通常の労働契約に移行し、当初明示の労働条件が適用される。
→ 今回は“本採用拒否ではない”ため、本採用時の取り扱いは通常の労働条件変更。
3.実務的判断
・28万円スタートは法的に完全NGではないが、以下の要件が必要
本人の明確な同意があること(口頭不可・文書が要)
本採用時に30万円が“確定条件”ではなく、“上限又は目安”として明示していた場合
評価基準と整合した合理的理由を説明できること
→今回のケースのリスク判定
(高リスク)
既に「本採用:30万」と明確に書いているため、
労基署・裁判所では
本採用時に30万円にする契約上の義務
と判断される可能性が高い。
4.可能にするための“唯一の道”
以下3点を満たせば28万円スタートは実務上は可能です。
(1)「本採用時の給与は30万円を上限とし、評価により決定する」
という評価結果に基づく合理的な説明を行う。
(2)本人の自由意思による合意(“不同意でも不利益扱いしない”旨の説明)
※強制・示唆があると“合意無効”になる。
(3)合意書を締結
→「本採用に伴う労働条件変更同意書」など。
5.実務対応(安全・推奨順)
(1)最も安全:予定どおり30万円に昇給
※後から改善評価で“昇給幅が小さい”等の対応がベスト。
(2)次善策:本人同意のうえ「段階昇給(例:28→30)」
ただし、以下の文書化が必須。
面談記録
同意書
賃金決定理由書(評価表)
(3)避けるべき対応:
30→28を強行
同意書を取らず既成事実化
→後日「不利益変更だ」と争われる典型例です。
6.実務で使える文書案
▼本採用に伴う労働条件変更(合意)書(案)
本書は、雇用契約書において本採用時の給与を月額30万円とする旨を
記載しているところ、試用期間中の勤務状況・業績評価を踏まえ、
当面の給与を以下のとおりとすることについて、労使双方が
自由意思に基づき合意するものである。
1.本採用日:202X年X月X日
2.本採用後の給与(月額):280,000円
3.上記金額は本採用後の初期給与であり、評価により昇給の機会を妨げない。
4.本合意は労働者の自由意思によるものであり、不同意であっても不利益な
取扱いは行わない旨を会社は確認する。
5.その他の労働条件に変更はない。
年月日
会社 代表者 印
従業員 署名・押印
7.まとめ
今回のケースは、
「本採用時30万円」と明示していた以上、原則は30万円に上げるべき
が“法的には最も安全”です。
どうしても段階昇給をしたい場合は、
合意書
評価基準
面談記録
の3点セットを整備したうえで
“本人の真意による合意” を確保してください。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/11/27 13:58 ID:QA-0161220
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
雇用契約時に本採用時の給与条件を30万円としている以上、会社側から一方的
に変更することはできません。一方的な不利益変更は法令で禁じられております。
但し、本人の合意にもとづき、28万円に減額される分には問題はありません。
合意を取る際、最終的には、合意書(書面)での締結が後々のトラブル防止
に繋がりますので、書面をご用意ください。
なお、同意が得にくい場合も考えられますので、本採用後の数ヶ月後に
改善事項が改善された場合は再度、30万円への見直しを行うなどの条件を
加えると合意がスムーズに進むことが多いものです。
その際は、給与の見直しを実行する条件(成果基準)を具体的に提示の上、
合意書にて合意をなさってください。
投稿日:2025/11/27 14:08 ID:QA-0161221
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
原則としては、自由意志による個別合意がなければ認められません。
例外としては、合理的な理由があるかどうかです。
投稿日:2025/11/27 14:44 ID:QA-0161223
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
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