役員報酬の遡り増額による月変の起算月
いつもお世話になっております。
昨年12月の株主総会で代表取締役の役員報酬を増額する決議がなされ、12月給与分から新たな額に変更となりました。
その際、「10月に遡って報酬額は変更になる。12月給与で10月、11月の2か月間分の差額調整も行うように。」との指示だったので、その通りに処理し、12月~翌年2月の3か月分の給与から随時改定を行い、3月から社会保険料変更。
翌月控除なので、4月給与から変更された社会保険料を控除。
このように処理していたら、税理士事務所から「10月から役員報酬が変更になるから社会保険料が変更となるのは3月ではなく、1月ではないか?」と指摘が入りました。
株主総会議事録を見ると「10月から役員報酬を○○万円(具体的な金額が入っています)に変更する」と明記されていました。
当初の処理の際に調べた資料(厚生労働省の事務取扱事例集)によると、
「遡って昇給が発生した場合、その変動が反映された月(差額調整が行われた月)を起算月として、それ以後継続した3か月間(いずれの月も支払基礎日数が17日以上)に受けた報酬を基礎として、保険者算定による随時改定を行うこととなる」
とあったので、これに基づいて差額調整が行われた12月を起算月としたのでした。
年金事務所にこの件を尋ねたら、「議事録に『10月から変更』と書いてあれば10月が起算月です」、との回答でした。
しかし、この回答と厚生労働省の事務取扱事例集の解説との違いが分からず、納得がいきません。
どなたか、この扱いの違いについてご解説いただければ有難いです。
投稿日:2025/05/13 00:18 ID:QA-0152188
- ritoさん
- 東京都/その他業種(企業規模 1~5人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご質問者様の処理(12月起算で3月随時改定)は厚労省の解釈に基づく正当な対応です。年金事務所の指摘は、「形式的な決議日・議事録の記載」を重視する立場に基づくもので、どちらが「間違い」とは一概に言えません。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
このご質問は、役員報酬の遡及改定と社会保険の随時改定(月額変更届)の取扱いに関する非常に実務的かつ重要な論点です。
まず、ポイントを整理した上で、年金事務所の見解と厚労省の事務取扱事例集との違いがなぜ発生するのか、ご説明申し上げます。
1.背景の整理
役員報酬を10月に遡って増額(株主総会議事録に明記)
実際の差額支給は12月給与(10・11月分を含む)
12月〜翌2月の3か月で報酬が安定 → 3月随時改定 → 4月から新しい保険料を控除
しかし、年金事務所から「10月が起算月では?」と指摘された
2.「随時改定」の基本ルール(標準報酬月額の変更)
厚労省や日本年金機構のルールでは、随時改定(いわゆる月変)の起算月は以下の通りとされています。
(1)原則
報酬が固定的に変動した月を「起算月」として、その後3か月間の報酬をもとに標準報酬月額を改定します。
遡及改定の扱い
遡及して固定的賃金(役員報酬など)が変更された場合、「差額の支給が実際に行われた月」=「報酬変動が反映された月」を起算月とする。(例:10月から報酬変更決議 → 実際の差額支給は12月 → 12月が起算月)これは、まさにご質問にある「厚労省の事務取扱事例集」に記載されている考え方です。
3.年金事務所の見解→なぜ「10月起算」になるのか?
一部の年金事務所では、役員報酬の決定が正式に「10月から」とされていて、遡及が確定している場合において、その時点から報酬が固定的に変動したとみなすという立場を取る場合があります。つまり、「実際にいつ差額を支払ったか」よりも「報酬額として何月から変更が確定しているか」を重視する立場です。
これは、特に役員報酬のように本人の勤務実績に基づかず、会社の意思で一方的に決まるものに対しては、より形式的に議事録ベースで判断される傾向があります。
4.実務上の対応指針
原則としては、
厚労省の事務取扱事例集に基づいて
「差額支給が行われた月」を起算月とし、3か月の報酬をもとに随時改定
→ 今回のケースでは「12月が起算月」→「3月改定・4月控除」で妥当です。
ただし、年金事務所や年金機構によっては、「役員報酬は、支給実態でなく会社の決議日・議事録内容を重視」することもあり、 「10月が起算月」と主張されることがあります。
5.どうすべきか?
実務的には以下のような対応が推奨されます。
(1)議事録に「いつ決定されたか」ではなく「いつから実際に支給開始か」を明記
→「12月給与から変更」「差額支払いも12月実施」など
(2)年金事務所に事前相談し、その管轄での判断を確認
→ 支部によって判断が分かれることがあるため、管轄先の意向に従うのが安全です。
(3)議事録の文言を柔軟に工夫
→ たとえば「10月から報酬額を変更するが、実際の支給は12月からとする」など
6.結論
ご質問者様の処理(12月起算で3月随時改定)は厚労省の解釈に基づく正当な対応です。
年金事務所の指摘は、「形式的な決議日・議事録の記載」を重視する立場に基づくもので、どちらが「間違い」とは一概に言えません。
今後は議事録の書き方・タイミングに注意し、年金事務所と事前に協議することがトラブル防止になると思います。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/05/13 09:47 ID:QA-0152202
相談者より
どちらの対応も間違いではないとわかり、社会保険の奥深さを感じました。
議事録には「代表取締役の報酬月額をR6年10月より○○円とすることについて議場に諮り、可決確定した」とあります。
どのようにでも読み取れる気はしますが、今回は年金事務所の説明どおりにします。
大変勉強させていただきました。
丁寧なご回答をありがとうございました。
投稿日:2025/05/13 10:39 ID:QA-0152215大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、取扱事例集に従って手続きをされますと12月が起算月となりますが、当該資料に関しましては、直接法令として定められているものではなく、あくまで行政側の事務処理上の原則を示しているものになります。
つまり、今回の御社での処理が誤っているわけではございませんが、行政担当者が10月起算を求められているという事でしたら、文字通り保険者算定に当たる事からもそれに従われた措置を採られるのが妥当といえます。
投稿日:2025/05/13 10:51 ID:QA-0152217
相談者より
この度もご回答をありがとうございました。
保険者算定というものを身をもって理解いたしました。
投稿日:2025/05/14 11:18 ID:QA-0152290大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
まず、ご質問者様にご記載いただいた、以下についてが原則的な考え方
となります。
>「遡って昇給が発生した場合、その変動が反映された月(差額調整が行われた月)
>を起算月として、それ以後継続した3か月間(いずれの月も支払基礎日数が17日以
>上)に受けた報酬を基礎として、保険者算定による随時改定を行うこととなる」
上記より、社員給与については、どこの年金事務所も取扱いは同じです。
何ら、ご質問者様の認識に誤りはございません。
一方、給与ではない役員報酬に対する考え方は、明確な通達が発行されていない
ことより、年金事務所によって判断が割れている(取扱いが異なる)部分です。
腑には落ちないやもしれませんが、管轄の年金事務所の判断・指導に従って、
処理をしていただくのが良いでしょう。
投稿日:2025/05/13 11:03 ID:QA-0152220
相談者より
この度もご回答をありがとうございました。
年金事務所への事前相談は大事であると理解いたしました。
投稿日:2025/05/14 11:18 ID:QA-0152289大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
遡り昇給という事になりますので
支払った月からみますので
12-2月でみます。
一方、ご参考までにですが、
給与計算ミスなどの場合には
本来支払うべき月からみます。
投稿日:2025/05/13 13:44 ID:QA-0152228
相談者より
この度もご回答をありがとうございました。
本来の支払月に遡る事例をご提示いただき、理解が深まりました。
投稿日:2025/05/14 11:19 ID:QA-0152291大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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