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人事キーワード 最終更新日:2020/10/08

【ヨミ】エイチエスピー HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)

「HSP」はHighly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の略で、「高度な感覚処理感受性」といわれる気質を持つ人を表す言葉です。HSPはストレスを受けやすい面がある一方で、鋭い感受性により気づきの能力が高いというポジティブな面も持ち合わせています。ここでは、HSPの意味や事例、歴史を紹介するとともに、HSPの人材が有する長所を生かすために、企業はどのような支援を検討すべきか解説します。

1. HSPとは

HSPの意味と具体的な事例、歴史を解説します。

HSPの意味

「HSP」とは、さまざまな刺激に対して過剰に反応してしまう「高度な感受性」(High Sensitivity)や「感覚処理感受性」(SPS:Sensory Processing Sensitivity)と呼ばれる気質を先天的に持っている人を指します。

HSPは、そうでない人と比較すると、会社や家庭など日々の生活においてストレスや疲れを感じやすく、周りからは神経質・繊細な人などと思われる傾向があります。

具体的には、次のような特徴があります。

「音や光、匂いといった刺激が気になってしかたがない」
「イメージや感情を感じすぎて、うまく言語化できない」
「相手の気持ちや事情を配慮しすぎて、頼まれごとを断れない」
「仕事で上司などから評価・監視されたり、同僚と競争させられたりすることを極度に嫌う」
「自分とは直接関係ないことでも、周囲の人の感情やその場の雰囲気に影響されて取り乱してしまう」
「マルチタスクなど、複数の事柄を並行して処理するよう指示されると混乱する」

これらは、HSPに共通する悩みや特徴の一部です。HSPは感受性が豊かで鋭いため、小さな刺激でも過敏に反応したり取り乱したりしてしまいます。日常生活や職場などで、他人が何気なく口にした一言や周囲の雰囲気にその都度反応してしまうため、必要以上に疲れ、消耗してしまいがちです。極端なケースでは、自分以外の人が上司などから叱責されるのを聞いただけで、自分が叱られているように感じ、腹痛などの身体症状が出る人もいます。

HSPが社会人になり、企業の管理下で仕事を始めると、ストレスが増加することがあります。頼まれると断りづらい性格の場合、仕事の負担がキャパシティを超えてしまったり、マルチタスクを処理できずに混乱してミスをしてしまったりするケースもあります。

最も問題なのは、「うまくいかないのは、自分が弱いせい」と自らを責めてしまう点です。そのままにしていると、パニック障がいなどの不安障がいや、睡眠障がい、うつ病などを発症してしまうリスクもあります。こうした状況を引き起こさないためには、本人や周囲がHSPについて正しく理解することが必要です。

HSPの歴史

HSPの概念は、米国の心理学者であるエレイン・N・アーロン博士が1996年に自著で提唱したものです。アーロン博士によれば、HSPは病気などの機能異常によるものではなく、あくまでも気質の一種であり、五人に一人程度の確率で見られる正常なものとされています。

アーロン博士らの研究が進展する以前は、HSPの内向性・繊細さなどの気質が社交不安障がい・社会恐怖症などの精神障がいと、ひとくくりにされる傾向がありました。しかし最近では、障がいとは明確に異なるものだという理解が進んでいます。

これまでHSPは「精神的な弱さ」としてネガティブに捉えられてきましたが、HSPが持つ豊かな感受性が生み出す価値が見直され、現在ではポジティブな面に注目が集まっています。

2. 刺激に敏感な人が活躍する?

HSPの本人にとっては短所ばかりが気になりがちですが、刺激に敏感なことは、長所にもなり得ます。ここからは、HSPが持つ長所と悩みについて解説していきます。

HSPの気質を持つ人の長所

HSPには、次に挙げる要素の頭文字をとって「DOES」と呼ばれる一連の特徴があります。

  • Depth of processing(思考を深くめぐらすことができる)
  • Overstimulation(刺激を過剰に受けやすい)
  • Emotional responsivity / Empathy(感情豊か/共感力が高い)
  • Sensing the subtle(細かいことを感じ取りやすい)

出典:FAQ: You talk about DOES as a good way to summarize all the aspects of high sensitivity: Depth of processing, overstimulation, emotional responsivity/empathy, and sensitive to subtleties. But what is the evidence that these actually exist? – The Highly Sensitive Person

これらをまとめると、ある刺激に対してプラス・マイナス両方の意味で反応が大きい点が特徴といえます。こうした気質は短所にも長所にもなります。

たとえば、他者からの刺激に対して敏感であることは、気づきの能力が高く、小さな問題も見逃さずに反応できるという長所につながります。そのため、課題を見つけて改善する力や、顧客に対する細かい配慮や対応ができるコミュニケーション力などが高く、これらの長所を仕事で発揮することも可能です。

HSPの性質を持つ人の悩み

HSPがどのような悩みを抱えているのか、一例として、過去にJ-WAVEで放送されたラジオ番組「GOLD RUSH」の中から、HSP專門カウンセラーである武田友紀さんをゲストに迎えた回を紹介します。番組内で、次のような悩みが挙げられました。

  • 仕事をしていると他人が気づかない事柄に気がつきすぎ、全てに対応しようとして疲れ果てる
  • 周囲のニーズを感じる力が高すぎて、誠実に応えようとするうちに自分はどうしたいのかわからなくなる
  • 「自分だったらこう対応するのに」と思いがちで、他の人とすれちがってしまう

このような悩みに対して必要以上に苦しまないためには、「自分はHSPの気質を持っている」と自覚することが大切です。そのうえで、自分の豊かな感性を大切にしつつも、気づいたこと全てに対応するのは難しいと認め、どこまで対応するのか一定の線引きをする必要があります。

3. HSPを企業でどのように支援できるのか

HSPにはストレス(刺激)に弱い一面がありますが、裏を返せば、それだけ他者からの刺激を深く細かく捉える能力に恵まれているともいえます。ストレスに弱いHSPを、企業としてどのように支援・活用できるのか整理していきます。

健全な職場環境ならHSPは高い能力を発揮する

アーロン博士によると、HSPの高い感受性や認知能力は、単に傷つきやすいという意味ではなく、正しくは環境に対する高い適応性を意味します。

職場環境が不健全であればいち早く影響を受けてしまいますが、健全であれば、普通の人よりも高い能力を発揮しやすいという特徴があるのです。つまり、職場環境を健全な状態に整備できれば、HSPが持つ能力を生かすことが可能であり、大きなリターンを得られるといえます。

従業員のストレスを緩和できる職場作りを

チューリッヒ生命が行った「2019年 ビジネスパーソンが抱えるストレスに関する調査」によると、ビジネスパーソンの約8割が職場でストレスを感じているという結果でした。多くの従業員が、職場において何らかのストレスを感じていることが同調査からうかがえます。

HSPを含め、ストレスに弱い人のストレス耐性を高めるために企業で取り組める例としては、セルフケアの啓蒙が挙げられます。セルフケアは、職場のメンタルヘルス強化のための指針の一つとして、厚生労働省が挙げている有効な手法です。研修などを通じてセルフケアの重要性や方法を浸透させるほか、上司がコーチングを行ってサポートする方法もあります。

4. HSPが持つ優れた「気づき」を戦力にするために

HSPの気質を持つ従業員に接する場合、ストレスに弱いという一面に着目してしまいがちです。しかし裏を返せば、HSPは感じる能力が高く、気づきを量産しやすいという高い能力を有しています。そのため、物事に対する多角的な見方や他人への配慮ができ、アイデアなどを評価されるケースも多く見られます。

HSPの従業員は、適性の高い仕事内容や配属、また適切なマネジメントによって能力が引き出されやすく、高い戦力となり得ます。従業員の能力を生かすという発想のもと、まずは全従業員が気持ちよく働ける職場環境の整備を心がけたいものです。

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