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【ヨミ】オトナノハッタツショウガイ 大人の発達障害

発達障害は、脳機能の発達の偏りに起因する先天的な疾患。乳幼児から18歳未満までの発達期に判明することが多いため、従来は子どもに特有の障害と考えられがちでしたが、近年は大人になるまで障害と気づかずに見過ごされ、社会へ出てから、仕事や対人関係に対応しきれなくなって初めて認識するケースが増えています。これを「大人の発達障害」と呼びます。大人の発達障害を抱えている人は、仕事や職場にうまく適応できず、うつ病や依存症などを併発する可能性も高いことから、企業においても新たな人事課題として対応が求められています。
(2014/11/25掲載)
 

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大人の発達障害のケーススタディ

成績優秀なのに仕事でつまずく人が増加
社会の変化で障害が顕在化し困難に直面

発達障害は先天的な脳機能障害の一種ですが、そうと診断されないまま社会に出たり、大人になってから障害が判明したりして、仕事や人間関係で困難に直面する「大人の発達障害」が増えています。背景にあるのは、障害の“見えにくさ”や周囲の理解不足。自らも当事者である福島学院大学の星野仁彦教授(児童精神医学)は、大人の発達障害者の存在がクローズアップされるきっかけとなった著書『発達障害に気づかない大人たち』で次のように呼びかけています。

<いい大人なのに机の上が片づけられない、忘れ物やミスが多い、約束や時間を守れない、すぐキレる、空気が読めない……。あなたのまわりにも、そんな「ちょっと困った人」がいないでしょうか? あるいは、あなた自身がそのように思われている可能性はないでしょうか? もしそうだとしたら、その原因は「大人の発達障害」かもしれません>

こうした発達障害の症状は子供の頃から現れるものですが、軽度だと大人になるまでは何とか工夫して乗り切れることも少なくありません。しかし幼少期や学生時代には問題を感じなかった人が、社会へ出ると、環境が変わったり、一人で多くの用件をこなす必要に迫られたりするために対応可能な範囲を超え、困難を抱えてしまうケースがあるのです。仕事や社会生活でつまずき、混乱し、周囲の援助を必要とするようになって初めて障害を認識するのが大人の発達障害の大きな特徴です。

発達障害は行動や認知の特性によって、さまざまな個別の障害に分類されます。主に、多動性や衝動性が特徴的な「ADHD」(注意欠如・多動性障害)、特定分野の学習が困難な「LD」(学習障害)、対人スキルに難のある自閉症やアスペルガー症候群を含む「ASD」(自閉症スペクトラム障害)の三つがあり、発達障害はそれらの総称として使われている用語です。このうち大人の発達障害者に多いのは、社会性や対人関係能力に支障をきたすADHDとアスペルガーだといわれます。ただし、障害そのものが増えたというよりも、産業構造の変化で仕事の対象がモノから人へ移り、折衝力やコミュニケーション力がより求められるようになった結果、従来はそれほど問題にならなかった障害が顕在化し、職場などで困難に直面しているというのが実情でしょう。

発達障害は脳の発達に凹凸(でこぼこ)がある障害とされ、極端に苦手な分野がある一方で、特定の分野には優れた能力を発揮するといったことが起こります。例えば周囲への関心が薄いアスペルガーの人には、幼い頃から“浮いて”いたけれど、学校の成績はずば抜けていたという人が珍しくありません。仕事でも、コンピューターやIT関係には大きな適性があるといわれます。ダイバーシティ・マネジメントの視点に立てば、障害も多様性のひとつ。できないことよりもできることに焦点をあて、個々の特性を積極的に活かす姿勢が、この新たな人事課題と向き合うカギになると考えられます。

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