人事辞典 最終更新日:2020/10/20

【ヨミ】レジリエンス レジリエンス

「レジリエンス」(resilience)は、「復元力」や「回復力」「弾力」などと訳される言葉です。近年は特に、「困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生きのびる力」を意味する心理学的な用語として使われるケースが増えています。また、レジリエンスの概念は、個人から企業や行政などの組織・システムに至るまで、社会のあらゆるレベルにおいて備えておくべきリスク対応能力・危機管理能力としても注目されています。

1. レジリエンスとは

レジリエンスはもともと、幼児や青少年を対象とする臨床精神医学の領域で研究されていた概念です。それが現在では「ポジティブ心理学」の主要テーマとして取り上げられ、人材育成や組織開発の分野にまで応用されるようになっています。

ポジティブ心理学とは、人の心の病的な側面ではなく、優れた側面――可能性や強み、能力などに焦点を当て、「どうすればより良く生きることができるか」を研究する心理学です。現在、欧米の企業で導入されているメンタルヘルス教育のカリキュラムは、レジリエンス強化のプログラムなど、ポジティブ心理学の理論によって開発されたものが主流といわれます。

これまでの研究によれば、「レジリエンスが強い人」は、以下の三つの心理的特性を共通して持っているといわれています。

  1. 肯定的な未来志向 ――未来に対して常に肯定的な期待を持っていること
  2. 感情の調整 ――感情のコントロールを適切に行えること
  3. 興味・関心の多様性 ――興味・関心をさまざまな分野に向けていること

ほかにも、安定した家庭環境や親子関係があること、自尊心や共感性が育っていること、ユーモアセンスやコミュニケーション能力があることなども、レジリエンスが強い人の条件とされています。

また興味深いことに、研究結果によると、過去の苦労体験の多寡とレジリエンスの強さとの間には相関関係が見られません。「風雪を耐えてこそ人は打たれ強くなる」といわれることもありますが、必ずしも正しいとはいえないようです。挫折から回復して困難を生き抜くためには、上記のような“意識のありよう”を持つことの方が、過去の蓄積よりも効果が高いことが明らかになっています。

さまざまなレジリエンス

レジリエンスは、心理学的な用語として使われる以外に「災害からの回復」など、さまざまな文脈で使われています。

災害レジリエンス

災害レジリエンスとは、「災害からの回復力」を意味します。災害が起きると、個人や家族、企業などの組織、あるいは地域社会が深刻な被害を受けます。災害レジリエンスにより、被害を受けた個人や組織、社会は被害から立ち直って復興していくことになります。これからの防災対策は、災害レジリエンスを高める方向に向かわなければならないといわれています。

レジリエンス経営

企業にとっては、巨大な災害はもちろんのこと、テロや金融危機、サイバー攻撃なども「危機」となります。それらの危機が発生し、企業がダメージを受けた際、回復に向けて速やかに行動する「レジリエンス経営」が必要だといわれるようになっています。

レジリエンスが広まった理由

レジリエンスが注目されるようになったのは、1970年代といわれます。第二次世界大戦において、ホロコーストを体験した孤児たちの研究がきっかけでした。孤児たちを追跡調査すると、過去のトラウマによって生きる気力を失ってしまった人たちがいる一方で、トラウマを乗り越えて人生を前向きに生きていくことができた人たちもいました。研究を続けることで、レジリエンスには「思考の柔軟性」が必要であることがわかってきたといいます。

近年になってレジリエンスが大きく注目されるようになったきっかけは、2013年に行われた世界経済フォーラム(ダボス会議)です。ダボス会議では、メインテーマを「レジリエント・ダイナミズム」とし、レジリエンスが高い国ほど、国際競争力も高いと結論づけました。

日本でも2011年に発生した東日本大震災をはじめ、大災害が何度も続いて起きています。日本人も、これらの災害を経験する中で、レジリエンスに着目することの重要性に目が向くようになってきたといえるでしょう。

2. レジリエンスの注意点

レジリエンスを高めるための施策を企業が行うときに、注意すべき点を見ていきます。

人によってレジリエンスの高さは違う

第一に注意すべきは、「人によってレジリエンスの高さは違う」ということです。同じような刺激を受けたとしても、心理的なダメージの強さが人によって違うからです。心理的なダメージを極端に強く受ける「HSP」と呼ばれる人たちもいます。

HSPとは「Highly Sensitive Person」の略称です。日本語では「感覚処理感受性の高い人」と表現されます。他人からは些細とも見える刺激にも敏感に反応し、刺激過剰になりやすい気質を先天的に持っている人のことで、1996年にアメリカの心理学者エイレン・N・アーロン博士が発表しました。HSPは職場や家庭での生活で疲れやすく、また生きづらさを感じやすいといわれています。HSPのケーススタディとして、以下のようなものがあります。

  • 「光や音、匂いなどの刺激が気になってしかたがない」
  • 「感情やイメージをたくさん感じているのに、うまく言い表すことができない」
  • 「相手のことを考えすぎて、イヤだと言えず断れない」
  • 「他人から監視されたり、評価されたり、競争させられるのが大嫌い」
  • 「周囲の人の気分や感情に左右されて動揺しやすい」
  • 「複数のことを短時間でこなすよう求められると混乱してしまう」

レジリエンスを高める施策は、ともすれば、「未来志向を肯定的に」「感情の調整を適切に」「興味・関心を多様に」のようなHOW TO論になりがちです。しかし、受ける心理的ダメージの強さが人によって違うことを前提としなければ、受講者にさらにダメージを与える抑圧的なものになりかねません。レジリエンスを無理に高めようとするのではなく、個人の特性に合わせながら「育成する」観点を持つことが重要です。

レジリエンスを高める施策をとる場合は

企業がレジリエンスを高める施策を研修などによって行うにあたり、講師を招いて社内研修を実施するケースもあるでしょう。カリキュラムを選ぶにあたっての注意点を見てみましょう。

(1)研修内容がカスタマイズ可能なものを選ぶ

研修は、業界や自社の事情に合わせることによって、より効果的なものになります。研修内容がカスタマイズ可能なものを選びましょう。

(2)講師のレベルを確認する

研修の効果は講師のレベルにより大きく左右されます。評判をうのみにせず、公開講座に実際に参加してみるなどして、講師のレベルを確認しましょう。

(3)研修の効果をしっかりと測定するところを選ぶ

研修の効果が実際にどのようなものであったか、アンケートなどを用いて数値的に評価しているところを選びましょう。効果の測定をしなければ、研修内容を改善していくことは見込めないからです。

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福井県 その他業種 2020/04/15

 

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