【ヨミ】グローバルジンザイ グローバル人材
用語としての明確な定義はありませんが、一般的には「市場やビジネスのグローバル化に対応できる人材」といった意味合いで用いられます。求められる資質や要件からすれば、「文化的・歴史的バックグラウンドの異なる多様な人材をマネジメントできる」「外国語を駆使して高度なビジネスが展開できる」「海外のマーケットや異文化に精通している」などが「グローバル人材」のあるべき姿といえます。
(2011/1/17掲載)
グローバル人材のケーススタディ
海外経験の義務付けが広がる一方
若手のグローバル志向は二極化も
「英語ができない役員は2年後にみんなクビにします」――2010年6月、楽天の三木谷浩史会長兼社長が過激な“クビ宣言”とともに社内の「英語公用語化」を発表し、大きな反響を呼びました。日本で成功した「楽天市場」の海外進出を加速し、「楽天を世界一のインターネットサービス企業にするため」(三木谷氏)には、海外拠点でも、本社でも、多様な人材と直接渡り合えるだけの高度な語学力とコミュニケーション力をもった人材の育成が欠かせない。その象徴的な施策として断行されたのが「英語公用語化」でした。
グローバル人材の育成を喫緊の経営課題として掲げる企業は、もはや大手企業では珍しくありません。楽天同様、英語公用語化を打ち出したファーストリテイリングは昨年12月、「ユニクロ」の海外事業の拡大に向けて、国内の店長と本部の管理職らあわせて約900人全員を、今後3~5年以内にアジアや欧米の9ヵ国・地域で展開する約150の海外拠点へ順次派遣すると発表しました。原則3年以上は駐在させ、店舗運営などを通じて国際業務の経験を積ませる方針です。逆に海外の現地社員を、研修や異動の形で日本に受け入れる人事交流も促進し、国籍を問わない、人材と組織のグローバル化を推し進めています。
新興国を中心とする海外に事業の軸足を移しつつある大手商社でも、三菱商事、丸紅、三井物産などが11年度から、20代の若手社員全員に海外経験を義務付ける新制度を導入します。語学や実務研修を目的として数ヵ月から2年程度をめどに順次派遣。三菱商事や丸紅は入社8年目までに、三井物産は入社5年以内に全社員が一度は海外経験を積む体制を目指すといいます。
こうして“半強制的”にでも若いうちから異文化や海外勤務を経験させる取り組みには、内向き志向が強いといわれる若手社員に意識の改革を促すねらいもありそうです。産業能率大学が行った「新入社員のグローバル意識調査」によると、2010年度新入社員の49.0%、およそ2人に1人が海外で「働きたいとは思わない」と考えているとのこと。海外を敬遠する理由は「リスクが高い」と「能力に自信がない」で5割超。昨今、批判されることの多い若者の“内向き志向”やひ弱さが顕著に表れた形です。しかしこれだけをもって判断するのは早計、残り2分の1の若者の意識にも注目する必要があるでしょう。同調査では「どんな国・地域でも働きたい」という答えが27.0%と過去最高で、高い海外志向をもつ層もおよそ3割存在することが明らかになりました。つまり日本の若者の海外への関心や意欲は“二極化”しているのです。効果的・効率的なグローバル人材育成を目指す上で、無視のできない動きといえるかもしれません。