エグゼクティブコーチングの傾向と選び方
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優れた組織には優れたリーダーが欠かせません。経営者がどのようなリーダーシップを持ち、どのような行動をしているかは、組織風土の醸成や事業の方向性に大きな影響をもたらすからです。企業が時代に対応し、成長・発展するために、経営層は常に先を見据えて意思決定しています。時には、経営層自身がリーダーシップのあり方や価値観の変化を求められる場面もあるでしょう。しかし、自分一人で気付きを得て、行動を変えるのは非常に難しいことです。
「エグゼクティブコーチング」は、経営者・経営陣を対象にしたコーチングです。経営者・経営陣は、コーチと対話を重ねるなかで、自らの姿を自覚し、価値観や意識の変容を促されます。エグゼクティブコーチングを導入することは、人事施策の推進や組織変革に大きな効果をもたらすことが期待できます。
エグゼクティブコーチングとは
エグゼクティブコーチングとは、経営者や会社の上層部の経営陣を対象としたコーチングサービスです。
一般的なコーチングとエグゼクティブコーチングの違い
一般的なコーチングと同様にエグゼクティブコーチングも、コーチとの対話を通じてフィードバックを得ながら新たな気づきを得ます。通常のコーチングとの違いとして、対象者が「経営者(もしくは経営陣)」に特化している点が挙げられます。経営者の課題に寄り添った結果、経営コンサルティングを兼ねたコーチングとなることも多いようです。また、経営者個人が変化した先に、その人が率いる組織全体も変化することを見据えます。
エグゼクティブコーチングを導入するメリット
企業がエグゼクティブコーチング導入を検討する主なきっかけは、経営者自身のニーズです。経営者自身が、信頼できる存在(コーチ)から、客観的なアドバイスや自らの気づきを得ようとサービスを探し、コーチングを受ける例も見られます。
その他にも、経営陣の価値変容や次世代リーダーの育成などを目的に導入されています。以下に、エグゼクティブコーチングが活用できる場面を挙げます。
【メリット 1】
経営層の意思決定が、より最善の形で行われるよう支援できる
エグゼクティブコーチングには、経営者および経営層の最適な意思決定を後押しする効果が期待できます。
ビジネス環境の変化が激しい現在、経営者は競合企業の状況、自社の組織文化、ビジネスモデルなど、多様な視点から事業課題に向き合い、全体最適を見つけなければいけません。従来の方法が通用せず、全く異なる方法を模索せざるを得ない状況では、経営層一人ひとりが、自らの価値観や考え方やリーダーシップスタイルを見直す必要性にも迫られます。
エグゼクティブコーチングによって、経営者は、リーダーとしてあるべき姿を見つめなおす機会を得られます。コーチングを通じて、経営層と社員、経営層と取引先との関わり方が変化することで、組織の可能性を最大化できるのが、エグゼクティブコーチングのメリットです。
1対1のエグゼクティブコーチングならではのメリット
1対1で行うエグゼクティブコーチングは、経営者が悩みを打ち明けられる重要な機会です。経営に関する課題は、企業の機密情報であるため、複数人が集う研修で扱うのは適さないケースもあります。
エグゼクティブコーチングでは、対象者がコーチに話した本音や課題に対して、サポートやコンサルティングが提供されます。そのため、より課題の本質に沿った意思決定や、行動変容へのアドバイスが期待できます。
【メリット 2】
経営者の意思決定を経営陣・組織全体に展開できる
エグゼクティブコーチングが選ばれるもう一つのメリットとして、経営層に特化したサービスという点が挙げられます。
コーチングは、コーチの問いかけが軸となります。エグゼクティブコーチングを行うコーチは、経営的なバックグラウンドを有している人が多く、経営課題の本質に迫る問いかけが可能です。そのため、経営者・経営陣は、経営課題の解決につながる気づきを得ることができます。会社によっては、組織の課題解決や経営コンサルティングサービスを一気通貫で提供しているところもあります。
たとえば、経営者が経営方針に漠然とした不安を抱えている場合、エグゼクティブコーチングを通じて、目指すべき会社の姿を明確にできます。その結果、ビジョンやミッションの言語化につながります。コーチングをもとに、組織に反映させるための経営コンサルティングまで依頼できるのが、エグゼクティブコーチングのメリットです。
【メリット 3】
次世代の経営人材育成に活用できる
エグゼクティブコーチングは、経営者のスキルアップや経営課題の解決だけではなく、次世代の経営人材育成にも活用できます。
経営人材候補はエグゼクティブコーチを通じて、組織から求められているリーダーシップ像を理解します。また、1on1や評価者面談で求められるコーチングスキルの向上を検討している企業向けに、管理職の育成研修をあわせて提供するサービス企業もあります。
【メリット 4】
経営層の変容を促せる
経営層の考えや行動に対して変化のきっかけを与えられるのも、エグゼクティブコーチングを利用するメリットです。会社の管理部門がなんらかの施策に取り組む際に、上層部のコンセンサスが取れず、経営陣が施策推進のボトルネックとなるケースは少なくありません。
たとえば、テレワークの導入や新規事業開発の促進など、新たな施策を進める際に、社員に変革を求める経営者自身が一切変化しておらず、施策推進の壁となるケースがあります。管理部門から施策の目的や意義について説明し、経営層を説得する必要があるのはもちろんですが、エグゼクティブコーチングを活用することで、経営層の意識変容・行動変容を促せます。コーチングのなかで、経営者自身が変わらない限り、会社も変わり切れないことを自覚してもらい、ボトルネックとなっている問題を解消させるのです。
エグゼクティブコーチング導入までの流れ
人事からエグゼクティブコーチングの提案を行う際は、コーチングを導入する目的を明確にし、候補者への動機づけを行うことが重要です。エグゼクティブコーチングの基本的な導入の流れを解説します。
ステップ 1 目的の共有 |
コーチングの目的を共有し、本人がコーチングの必要性を実感しているか確認。 |
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ステップ 2 コーチの選定 |
適切なコーチを選定するために、本人のニーズを確認。 |
ステップ 3 コーチングの実施 |
実施後、エグゼクティブコーチングの実施期間と頻度を決定。 |
ステップ 4 振り返り |
振り返りと定期的な効果測定を行う。 |
【ステップ 1】
コーチングの目的を明確にし、経営層と共有する
エグゼクティブコーチングの核となるのが、コーチングを受ける本人の意思です。コーチングを受ける参加者に「変わりたい、変わらなければいけない」という認識がなければ、せっかくコーチングの機会を提供したとしても、十分な効果は期待できません。
人事からエグゼクティブコーチングを提案する場合は、経営者や経営層に必要性を共有する方法を考えなければなりません。組織課題からのアプローチは、上層部の同意を得るための一つの方法になります。
たとえば、長時間残業の削減を掲げ、評価基準の見直しに取り組む企業の中で、従来の「長く働くことはいいことである」という組織風土が改革の妨げになるケースは珍しくありません。そのようなケースでは、トップの意識変容が不可欠であり、生産性と勤務時間に対する考えを改めることが求められます。経営課題を踏まえ、ボトルネックの解消のためにエグゼクティブコーチングが有効であると説明すれば、経営陣の「コーチング」に対する考え方にも変化が見られるでしょう。
すでに経営者が自分自身や経営層に対して、何らかの課題を感じている場合は、課題の本質を探る段階から外部会社に依頼し、コーチング前のコンサルティングを通じて、エグゼクティブコーチングのテーマを提案してもらう方法があります。
【ステップ 2】
適切なコーチを選定する
エグゼクティブコーチングの導入が決まったら、コーチを選定します。コーチ選びで参考になるのは、資格や経験の二つです。具体的な内容は後述しますが、自社の経営課題について整理しておくと、課題に対応できるスキルや経歴を持ったコーチを探すときの参考になるでしょう。コーチングを受ける経営層に、コーチに望む経験やスキルを聞くのも有効です。
条件をもとに、候補となるコーチを複数選定し、無料トライアルなどを利用して相性を検討すると、より納得のいくコーチに巡り合えます。
【ステップ 3】
エグゼクティブコーチングの実施
多くの会社では、エグゼクティブコーチングプログラムの「最低実施期間」を設定しています。人の行動変容のためにはある程度の期間が必要だという考えが背景にあります。期間や頻度はプログラムによってさまざまですが、「最低6ヵ月、月に1回以上」のように、定期的なコーチングプログラムを行うのが基本です。参加者と相談し、エグゼクティブコーチングの実施期間と頻度を決定します。
【ステップ 4】
振り返りを行う
エグゼクティブコーチングの終了後は、振り返りを行います。成果レポートを提出するサービス企業もあります。
コーチングで意識が変化しても、行動が変わり、さらに習慣化するまでには一定の時間を要します。とくに、組織変革や人事施策の推進にからめてエグゼクティブコーチングを実施する場合は、効果の見極めにある程度の期間が必要です。
たとえば前述の残業時間削減の推進を目的に、エグゼクティブコーチングを実施する場合は、最終的にトップの変化が現場に与えた影響を把握するため、定期的に効果測定を行います。行動変容の進捗に応じて、再度エグゼクティブコーチングを活用できる環境を整えておくことをおすすめします。
コーチの選び方とサービスの比較ポイント
相性の良いコーチと、自社にあったサービスを選ぶ際に重要な比較ポイントを紹介します。
コーチが、どのような経歴・経験・知識を持っているか
コーチの経歴や経験は、コーチングの満足度に大きく影響します。エグゼクティブコーチングで重視されるのは、コーチが経営に関する知識や経験を有しているかという点です。コーチングで、経営コンサル的視点からアドバイスを行えるコーチは、経営者からの大きな信頼を得やすくなります。新規事業やM&A、海外進出など、自社の経営課題と照らし合わせながら、コーチの経験や得意分野を確認します。
コーチが資格を持っているかどうか
コーチングの資格有無も、一つの判断基準となります。複数あるコーチングの資格の中で、一定の信頼を得ているのが以下の国際資格です。
国際コーチング連名(ICF)
国際コーチング連盟は、世界で最大規模のコーチングの非営利団体です。ICFジャパンはコーチングの世界標準を日本に普及させるため、2013年から正式に日本支部として活動を続けています。ICFが発行するコーチングの資格は、トレーニングの時間や実績によって以下の3種類に分けられています。
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ICF認定資格アソシエイト・サーティファイド・コーチ(ACC)
60時間以上のトレーニング、8名以上&100時間以上のコーチング実績 -
ICF認定資格プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
125時間以上のトレーニング、25名以上&500時間以上のコーチング実績 -
ICF認定資格マスター認定コーチ(MCC)
200時間以上のトレーニング、35名以上2500時間以上のコーチング実績
2023年2月時点で、ICF認定資格保持者の数はACC 530名、PCC 455名、MCC 65名となっています。これらの資格は、コーチが体系的な理論やメソッドを身に着けている証明となります。
コーチング前後のフォロー体制
サービスを比較する際に重要なポイントとして、コーチング前後のフォロー体制があります。コーチングを成功させるには、対象者本人がニーズを実感していなければなりません。しかし、経営者が「自分にはコーチングが必要ない」「自分は変わる必要がない」と感じていれば、社内の人員だけで必要性を実感させることが難しい場合もあります。サービス企業によっては、こうしたコーチングの計画・準備段階から支援してくれます。
さらに、組織開発や人材育成のプロセスの一貫で、エグゼクティブコーチングを導入する場合は、コーチングの実施後の振り返りやフォロー体制について確認します。
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まとめ
エグゼクティブコーチングは、経営者自身のスキルアップだけではなく、組織の成長や変化を促すためにも活用できます。管理部門からサービスを提案する場合は、経営課題を整理し、導入の目的を明確にしたうえで経営層にアプローチする必要があります。コーチの資格や経歴は、選定する際の重要なポイントです。コーチングを受ける対象と目的に合わせて、コーチやサービスを選定するとよいでしょう。
人と組織の課題を解決するサービスの潮流や選定の仕方を解説。代表的なサービスの一覧も掲載しています。