みなし時間増に伴う裁量手当について
弊社ではみなし労働時間を8時間(所定労働時間7時間)とし、所定外労働分(1時間)と深夜勤務分に充当する手当として裁量手当を定額で支給してきました。しかし実労働時間とみなし労働時間との乖離が大きく、みなし労働時間を30分程度長く設定せざるをえない状況です。
手当の設定としては①所定外労働を1時間30分とし0.5時間分の手当を増額させる②手当額は増額せずに、深夜勤務が発生して裁量手当では充当できない場合に深夜分を加算するという2つの方法が考えられますが、どちらが適切で法的に問題ないでしょうか。組合としては労働時間を長く設定したのだから手当も増額させるべきと要求してくると思いますが、人件費の増額は避けたいという思いがあります。よろしくお願します。
投稿日:2011/08/26 16:55 ID:QA-0045670
- *****さん
- 東京都/マスコミ関連(企業規模 301~500人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
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みなし労働時間に対する裁量手当
賃金計算や労務管理を考えると、貴社のような裁量手当は一定の合理性があり、採用している企業も多々あります。例えば、IT系企業にはよくありました。しかし、みなし時間と実労働時間が基本的に乖離していないことが大前提です。業界によっては貢献利益の定率の金額を報酬としてきたという会社も少なくありません。
しかし、労働者は請負事業者ではありませんから、基本的に報酬は自分労働時間をベースに算定しないと違法になります。基本給を低く設定しても、あるいは賞与を支払わなくても違法ではないですが、毎月の賃金は実労働時間で計算しないと、未払い残業代が発生し、あとで会社自体が破綻する危険性があります。この問題は成果主義賃金を採用する企業全てに潜在するリスクです。貴社でも、実労働時間を重く見て裁量手当を決めるか、時間管理を行ない、通常の賃金計算とすることがコンプライアンスでは望ましいです。
投稿日:2011/08/26 19:13 ID:QA-0045677
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
御相談の件ですが、所定外労働と深夜労働とは全く別の事柄ですので、当然ながら明確に区別した取り扱いが必要です。従いまして、所定時間外が増えるという事であれば、②のように両者を混同するような方法は避けるべきであって、基本的には①の取り扱いになるものといえます。その際、1日8.5時間労働になりますと、増えた半時間分につきましては法定の時間外割増賃金の支給も必要となる事に注意が必要です。勿論、深夜労働自体も時間的に増えるのであれば深夜割増分も同時に加算しなければなりません。
「人件費の増額は避けたいという思いがあります」との事ですが、みなし労働時間が増えたにも関わらず賃金が据え置きというのでは、労働条件の不利益変更となりますので組合の主張の有無に関わらず法的に問題となってしまいます。従いまして、人件費を抑えたいのであれば、むしろ実労働時間を現行のみなし労働時間に合わせるよう業務改善や人員配置の見直しを図ることで対応すべきでしょう。その方がワークライフバランス等時代の要請に適しており、中長期的に見ましてコスト面と共に労働者の健康管理面からも望ましい措置となりうるというのが私共の見解になります。
投稿日:2011/08/26 20:15 ID:QA-0045680
相談者より
ご回答ありがとうございます。健康管理面からの見方も重要だと認識しております。
投稿日:2011/09/09 15:58 ID:QA-0045953参考になった
プロフェッショナルからの回答
みなし労働について
みなし労働時間を設定する場合は前提として、実労働時間を基準に実際業務の終了までにかかると想定される時間を設定しなければなりません。
また、裁量手当を定額で支給しているとのことですが、本来労働者の時間を元に所定時間外時間や深夜勤務時間を計算するべきです。もし労働時間をもとに計算した結果が裁量手当の額を上回る場合は未払い賃金になってしまいます。
したがって今回裁量手当の見直しのタイミングで裁量労働制を再考し、よりコンプライアンスを意識した体制を構築することが急務だと思われます。
裁量手当が一律ということは、不就労の時間も賃金を支払うことになります。そこで、この手当を一律に支給する場合とみなし労働時間に深夜時間、所定外時間を併せて計算した場合でシミュレーションしますと、深夜時間のない人が居れば手当の一律支給する場合よりもコストは下がるはずです。
今回増やさざるを得ない部分については上記計算で下がったコストで相殺する事で大幅なコスト増を避けることが出来るでしょう。
労働者に対しても「みなし時間を増やすと同時に裁量手当も所定外時間と深夜時間に労働した時間にする」と伝え、より現状の勤務実態に合わせた給与体系に変更することをお勧めします。もちろん結果的に労働者の裁量手当が減額される可能性がありますので労働者の全員に個別に合意を取るなどの措置は必要となります。
尚、手当の見直しの他、御社に企画業務型の業務を行う部署があれば、企画業務型の裁量労働制の導入を検討されてみてはいかがでしょうか?裁量労働制であればみなし労働時間を超えての残業も一日に設定した労働時間の範囲内の賃金で労働させることができます。
条件としては労使委員会の5分の4以上の多数による決議が必要なことの他、労働者に個別同意を得なければならず、また、この決議は所轄の労働基準監督署長にも届け出ます。手続き要件をクリアするには色々と煩雑ですが、人件費の抑制という観点から有効な手段の一つと考えられます。
以上、現状のままの手当設定では未払い賃金が発生し、これがもし請求されるとなると大きな費用支出となる可能性があります。色々と講ずる策があり手間のかかることとはなりますが、こうした労務リスクから企業を守るためにも、今のうちに法に基づいた給与手当の見直しや、企画業務型の裁量労働制等の制度を構築し、コンプライアンス体制を整備されることをお勧めします。その際、個別具体的な問題が生ずる場合は社労士の方等にご相談されると良いでしょう。
投稿日:2011/09/01 13:36 ID:QA-0045773
相談者より
ご丁寧な回答ありがとうございます。未払いが発生するのでは?とのご心配については、所定外分、深夜分を毎月の出勤簿から計算しており、裁量手当では不足する場合は追加分を支給しているので問題ありません。企画型ついては、検討しましたが運用面での難しさがつきまとっていますが、参考にさせていただきます。
投稿日:2011/09/09 15:56 ID:QA-0045951参考になった
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