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【ヨミ】セイカシュギ 成果主義

「成果主義」は、バブル経済崩壊後の1990年代後半以降、日本の企業に普及してきた人事評価制度の方針です。「年功序列から脱却する」という表現が頻繁に使われるようになり、「成果主義へのシフトは、企業間競争が激しい現代に合った考え」という見方が強まりました。  一方で、導入に失敗している企業も少なくないことから、安易に優れた考え方と判断することはできません。成果主義の導入がうまくいかない理由はどこにあるのか。本記事では、成果主義と年功序列の比較、メリット・デメリット、導入時の注意点や実際の導入事例を解説します。
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1. 成果主義とは~年功序列から移行した背景

成果主義とは、仕事の成果を評価基準として、昇進や昇給を決める人事評価制度の方針です。もともと欧米で広く普及していた考え方で、日本ではバブル崩壊後の経済低迷を機に注目されるようになりました。

それまで日本では、広く年功序列が普及していました。年功序列は、労働力があれば成長が見込まれていた1960~1970年代の高度経済成長期に、労働力を安定的に確保する必要があったことから生まれた制度です。企業は、社員とその家族を将来にわたって面倒を見るという終身雇用を打ち出し、年功序列によって、社員の長期勤続に対するモチベーションを維持してきました。

1970~1980年代の安定成長期も、日本の人口構造はピラミッド型であり、企業では20代の社員の割合が多くなっていました。人件費を抑えるという経済的合理性の面でメリットは大きく、引き続き年功序列が主流でした。

1990年代、ITが普及する前は人手を介する業務がまだ多い状態でした。そのため、技能と勤続年数を結びつける年功序列の考え方は、人事評価においてもマッチする制度だったといえます。
しかし、1990年代以降、バブル崩壊後の経済低迷を機に「成果主義」が注目されるようになりました。

年功序列は、短期的な成果が求められる現代ではうまく機能しにくいといわれます。また、成果と給与が連動していないため、業績が低迷すると人件費の割合が増加するという問題もあります。

こうした年功序列の欠点を補うものとして成果主義に期待が集まり、1990年代以降、多くの企業で導入が進みました。しかし、導入したけれど成果につながらない、新たな組織課題が発生した、といった事例も多くなっているのが実状です。

2. 成果主義と年功序列の比較

成果主義と年功序列の特徴は、次のように整理できます。

成果主義 年功序列
評価基準 仕事の成果 勤続年数や年齢
評価の公平性 業績に連動する評価のため、公平性がある。ただし、成果が見えにくい業務では、評価が不透明になりやすい 職種によらない公平性があるが、業績を上げても評価と連動しないことから、ハイパフォーマーが不公平感を抱きやすい
人件費 業績により増減するため適切な再配分や削減が可能 社員の高齢化により増大
定着率  低い傾向 高い傾向
人事評価の負荷 個別評価が必要なため、負荷が大きい 評価基準が一律のため、負荷は小さい

成果主義は仕事の成果が評価基準となるため、人件費を適切に配分しやすいという特長があります。反面、成果重視のストレスに耐えきれない社員が増えたり、より高い評価を求めて転職したりするなど、人材の流動化が起こりやすく、定着率が低い傾向が見られます。その結果、採用コストの増大につながる可能性もあります。

これに対して、年功序列は社員の高齢化により人件費は増えますが、定着率が高い傾向があるため、採用コストを抑えやすい特長があります。

人事評価の負荷を見ると、成果主義は個別評価となるため運用の難度が上がり、かかる労力も増えます。年功序列は一律の評価基準となるため、負荷は小さいといえます。

成果主義は年功序列よりも優れているという文脈で語られることがありますが、比較表からわかるとおり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

3. 成果主義のメリット

成果主義のメリットについて、具体的に説明します。

人件費を適切に配分・削減できる

年功序列では、勤続年数に応じて給与が上昇するため、業績と人件費がつり合わない状態になる場合があります。成果主義は成果によって給与が変動するため、業績を伴わない場合は人件費削減につながります。ただし、「労働条件の不利益変更(※)」には注意が必要です。

(※)労働条件の不利益変更……労働者との合意なしに、労働条件を労働者の不利益になるように変更すること。労働契約法の第九条に、「労働条件の不利益変更」を禁止する規定がある。

優秀な若手社員の流出を抑止

年功序列の場合、業績を上げても人事評価と結びつかないため、特に勤続年数が短い若手社員が不公平さを感じて、不満を抱える傾向が強くなります。成果主義は、業績と人事評価が直結するため、優秀な若手社員の流出を抑えることが可能です。

仕事への意欲が向上

年功序列では、努力を重ねて結果を出しても人事評価につながらず、長く勤めれば昇給・昇進できるため、負荷を増やしてまで業績向上に努める意味を見いだしにくくなります。現状維持で満足する社員が増えることもあります。

これに対して、成果主義は仕事の成果が人事評価に直接的につながるため、意欲的かつ自発的な行動をする社員を増やすことが可能です。ただし、「成果を求めて仕事をする」というモチベーションが高まるのであり、仕事をすること自体へのモチベーションが高まるとは限らないので注意が必要です。

業務効率化が推進される

仕事の成果を高めるには、プロセスを見直して効率化を図ることが重要です。そのため、自発的に業務効率化に努める社員が増え、組織全体のパフォーマンス向上につなげやすいメリットがあります。

近年では働き方改革が進み、残業時間を厳格に管理する企業が増えています。労働時間を増やしてでも成果を出すという考え方は推奨されないため、効率化を目指しやすいという背景もあります。

4. 成果主義のデメリット

成果主義の導入にあたっては、注意すべきデメリットもあります。

評価基準の設定が難しい

成果主義では、仕事の成果を客観的に評価できる基準を設定する必要があります。営業職のように数値で成果がわかる業務は比較的容易に設定できますが、企画職・事務職・研究職といった成果を数値化しにくい業務においては、客観的な評価が難しくなります。また、成果を出すまでに長い期間を要するプロジェクトなども、どのように評価すべきかを検討しなければなりません。

成果主義では、誰の目にも透明性のある基準を設けることが非常に重要です。評価者のバイアスがかかる基準を設定してしまうと、社員の不満を招くリスクがあります。

人事評価に対する負荷の増大

年功序列は勤続年数という全社員に一律の評価基準となるため、人事評価における負荷は小さくなります。成果主義では、個別評価が必要となるため、運用にかかるパワーは大きなものになります。

定着率の悪化

仕事の成果が人事評価に直結する成果主義の下では、高いプレッシャーが常に社員へかかります。優秀な社員にとってはモチベーションを維持しやすい環境といえますが、業績が思わしくない社員には強いストレスとなります。

その結果、辞める社員が増え、定着率が下がるというデメリットが生じます。社員によって成長スピードは異なるものですが、短期的に評価を受け続ける成果主義では、今後伸びるポテンシャルを持った社員が退職してしまう可能性もあります。

個人プレーに走りチームワークが低下

成果主義では業績へのこだわりが強くなるため、個人プレーに走るケースが見られます。また、相対評価(※)の場合は同じチームであっても競争原理が働きます。例えば、顧客を奪い合う、ノウハウを囲い込む、後輩の育成をしない、といった行動です。その結果、チームワークが低下し、組織全体の連携が悪くなるなど組織力の低下を招くリスクがあります。

(※)相対評価……社員同士を比較して評価を決める方法。全社員の何割を高評価にするといった手法がある。反対の言葉として、社員同士を比較せず、絶対的な基準で評価する「絶対評価」がある。

個人の短期的なメリットのみを優先

短期的な評価を受ける成果主義では、すぐに業績につながらない仕事や、リスクを抱えるような企画に対して、社員が消極的になりがちです。事業や組織への貢献よりも個人のメリットを優先する傾向があり、大局的な視点に欠けてしまう場合があります。

短期的な結果を出せる仕事をした方が社員のメリットが大きい状態では、中長期的な視点で事業の成長を考える機会が少なくなります。また、幹部社員の育成が難しくなるデメリットも考えられます。

5. 成果主義が社員の不利益にならないように

成果主義が目指すべき本来の姿は、成果を上げた社員を適切に評価し、その努力に報いることです。
しかし実際には、業績を出せないことへの罪悪感を植えつける方向でマネジメントしているケースが少なくありません。「罰」によって社員をマネジメントしても、意欲的な行動にはなりません。パフォーマンスが上がらないだけでなく、組織への不満が募り、離職者が増える悪循環につながっていきます。

昨今では、成果を出さなければならないプレッシャーが引き金となって、メンタル不調を訴える社員も増加しています。

本来の成果主義の目的は、社員のモチベーションに働きかけることで、企業と社員の双方にメリットをもたらすことです。行き過ぎた成果主義で社員の不利益を生まないよう、導入・運用にあたっては十分に検討する必要があります。

6. 成果主義の導入事例「コカ・コーラ ボトラーズジャパン」

コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社は、日本国内の地域ごとに設立されたコカ・コーラボトラー各社が経営統合して、1都2府35県をエリアとする企業として2017年4月に発足。2018年4月には、グループ間で人事制度を統合・改定し、役割・成果主義に基づく人事制度を導入しています。

人事制度を改定した目的は、地域密着という経営方針のもと、地域の最前線で業務を遂行する社員のモチベーション向上と、優秀な人材の確保です。

新しい人事制度は、等級・評価・報酬制度から構成されています。

等級制度:役割をベースに、管理職は5段階、一般職は4段階でグレード(等級)を設定。一般職では、業務の習熟度に従ってサブグレードを設定して、その評価に基づいて昇降格を行う。
評価制度:5段階の業績評価と4段階の行動評価の二つの側面から評価し、それに基づき総合評価(5段階)を決定。評価は、給与改定や賞与額、昇降格候補者の選定に反映。
報酬制度:上記のグレード、サブグレードごとのレンジ設定に従った「共通基本給」と「エリア基本給」の合計が基本給になる。

コカ・コーラボトラーズジャパンは、人事制度の改定にあたって、まず自社のビジョンや方向性を考え、それを支えるためにはどのような人事制度がベストか、という観点から検討しました。

その結果、旧ボトラー各社では実現できなかった「成長志向」「ひとつの会社・ひとつの経営」の実現には、公平で公正な一貫性のある人事制度が必要であると考え、成果主義の導入に至っています。

参考:労政時報第3972号「特集5 人事制度事例シリーズ コカ・コーラボトラーズジャパン」



昨今では、成果主義の導入によって過度な成果へのプレッシャーがかかり続け、社員のメンタルヘルスに問題が生じているケースが増えています。評価基準の設定や運用方法を決める際は、社員の意欲を継続的に引き出せるルールとなっているかどうかを、十分に検証することが必要です。他社の詳細な事例も参考にしながら、メリット・デメリットを理解した上で、導入することが大切です。

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