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【ヨミ】ネンコウジョレツ 年功序列

バブル経済が崩壊した1990年代以降、それまで当たり前とされてきた年功序列や終身雇用のあり方が問われるようなりました。現在では、成果主義との比較において、時代遅れの制度と見なされている傾向があります。 しかし、人事制度の実状を見ると、完全な年功序列型と成果主義型に二分できているわけではありません。安易に年功序列の廃止を決める前に、自社の人事制度が抱える本質的な問題を見極めることが重要です。ここでは、年功序列と成果主義との比較をはじめ、年功序列のメリット・デメリット、年功序列を廃止する場合の注意点を見ていきます。
(2009/7/17掲載)
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1. 年功序列とは

「年功序列制度」とは、勤続年数や年齢を評価基準にして昇給や役職を決定する人事評価制度です。勤続年数に応じて給与も上がるため、人材の長期的確保や定着率の向上につながります。

1960~1980年代の高度経済成長・安定成長時代を支えてきた日本型雇用システムの一つとして、終身雇用制度とともに大きな役割を担ってきました。

2. 年功序列と成果主義の比較

年功序列と成果主義の特長を整理したものが、以下の表です。

成果主義 年功序列
評価基準 仕事の成果 勤続年数や年齢
評価の公平性 業績に連動する評価のため、公平性がある。ただし、成果が見えにくい業務では、評価が不透明になりやすい 職種によらない公平性があるが、業績を上げても評価と連動しないことから、ハイパフォーマーが不公平感を抱きやすい
人件費 業績により増減するため適切な再配分や削減が可能 社員の高齢化により増大
定着率  低い傾向 高い傾向
人事評価の負荷 個別評価が必要なため、負荷が大きい 評価基準が一律のため、負荷は小さい

年功序列は古い考え方ととらえられがちですが、このように比較してみると、双方にメリットとデメリットがあることがわかります。

人件費を見ると、年功序列は高齢化が進むと増大しますが、定着率が高い傾向があるため採用コストを抑えやすい、という考え方もできます。一方、成果主義は人件費を最適化しやすい反面、より高い評価・報酬を求めて人材の流動化が進むなど、定着率を下げる要因につながる可能性があります。この結果、採用コストも増加してしまいます。

人事評価の負荷という観点では、一律の評価である年功序列は比較的小さくなります。しかし、能力の高い若年層の獲得が難しい側面もあります。逆に、成果主義は意欲的な若年層を採用しやすくなりますが、人事評価の難度が上がり負荷が増大します。

3. 年功序列のメリット

年功序列のメリットを具体的に説明します。

帰属意識や愛社精神が向上する

一つの会社に長く勤めることを前提とする年功序列は、会社を構成する一員としての自覚が生まれやすく、帰属意識や愛社精神が高まります。会社への忠誠心や愛着心がある社員ほど自発的な行動を取る傾向があり、業績に貢献するという見方もあります。

社員が定着しやすい

年功序列は勤続年数が上がれば昇給・昇進が見込めるため、多少の不満があっても、会社にとどまる社員が多くなります。定着率を高めやすい点は、年功序列の大きなメリットです。

対して、成果主義では結果を残せない社員はストレスが増大するため、転職を決めるケースが増えます。また、より高い報酬を求めて転職する社員も多いため、離職率が高くなる傾向が見られます。

組織の連帯やチームワークが強まる

相対評価(※)の下での成果主義では、個人の業績が評価基準となると、競争原理が働き、チームよりも個人行動が優先されやすい傾向にあります。これに対して、年功序列は評価基準に成果が求められないため、組織の連携を図りやすい点がメリットになります。

また、成果主義では、自分よりも若い社員が上司になることもあり得ます。日本はもともと年長者が上という組織文化が根強いため、組織においては年功序列のほうが心理的に受け入れやすいといえます。

(※)相対評価……社員同士を比較して評価を決める方法。全社員の何割を高評価にするといった手法がある。反対の言葉として、社員同士を比較せず、絶対的な基準で評価する「絶対評価」がある。

人事評価の負荷がかからない

年功序列は、勤続年数が上がるほど知識・技能も上がる前提のもとに成り立っています。評価基準が一律のため考課がしやすく、上長によって評価が変わるといった属人化のリスクも避けられます。個別評価が必要な成果主義に比べると、人事評価をする側の負担は軽くなります。

人材育成の計画を立てやすい

年功序列は長期勤続を見込める点で、技能アップ研修といった人材育成計画を立てやすいメリットがあります。技能を獲得した社員の定着率が上がれば、社内にノウハウが蓄積されるメリットも得られます。

4. 年功序列のデメリット

成果主義が普及した背景には、年功序列によるデメリットへの懸念があります。具体的に見ていきましょう。

社員の高齢化により人件費が増大

年功序列の大きなデメリットは、社員の高年齢化が進むにつれて人件費が増大することです。業績が悪化した場合でも、安易に給与を下げるわけにはいかないため、人件費の割合が増えるリスクが高くなります。

1990年代後半からの日本経済低迷を受けて、年功序列から成果主義へと移行していった背景には、高年齢化した社員の人件費を抑えたい思惑もありました。

優秀な若年層の確保が困難

年功序列は勤続年数を積み上げないと評価されないため、優秀な若年層ほど確保しにくいデメリットがあります。

高度経済成長期は、若いうちは給与が低くても、自動的に上がっていく展望と安定性がありました。しかし近年では、将来の昇給が保証されていないのに、若手の給与は低い水準にとどまっているケースもあります。

そのため、入社後に労働意欲の低下を招く、あるいは能力を評価してもらえる成果主義の企業に転職するといった問題も生じています。

挑戦意欲や目的意識の低下

個人として業績を上げていない社員も勤続年数によって昇給・昇進できるため、年功序列はチャレンジ精神や仕事への目的意識が薄まりやすいデメリットがあります。現状維持を優先し、事なかれ主義を通す社員が増える可能性もあります。

このような働き方が当たり前になると、次第に新しい価値を生み出す風土がなくなり、組織力が停滞する原因になります。

5. 年功序列が受け入れられ、成果主義に移行してきた歴史と背景

年功序列は、1960~1970年代の高度経済成長期に、労働力を安定的に確保する必要があったことから生まれた制度です。多くの企業が誕生し、労働力があれば成長が見込まれていた時代です。

企業は、社員とその家族を将来にわたって面倒を見るという終身雇用を打ち出し、年功序列によって長期勤続のモチベーションを維持してきました。新卒を大量に採用し、業務プロセスに必要な知識や技能は自社で育成するという人事制度が確立されます。

1970~1980年代の安定成長期に入っても、日本の人口構造がピラミッド型であったことから、20代の社員が多い構成になっていました。そのため、人件費を抑える経済的合理性の面でも、年功序列が受け入れられてきました。

1990年代、ITが普及する前は人手を介する業務がまだ多い状態でした。そのため、技能と勤続年数を結びつける年功序列の考え方は、人事評価においてもマッチする制度だったといえます。

成果主義への移行

1990年代以降、バブル経済崩壊を契機に「成果主義」が注目されるようになりました。

日本企業で採用されてきた年功序列は、短期的な成果が問われる時代にはうまく機能しにくいといわれます。また、成果と給与が連動していないため、業績が低迷すると人件費の割合が増加するという問題もあります。

こうした年功序列の欠点を補うものとして成果主義に期待が集まり、1990年代以降、多くの企業で導入が進みました。しかし、導入したのに成果につながらない、新たな組織課題が発生した、といった事例も多くなっている現状があります。

安定的な経済成長が期待できず、企業間の競争が激しくなっている現在は、短期的な業績を重視する傾向にあります。そのため、業績と評価を結びつける成果主義が時代に合っているという見方が強まっています。

6. 人事制度は年功序列と成果主義の二択ではない

人事評価制度の検討においては、年功序列と成果主義、どちらを採用するのか二者択一で考えがちです。しかし実際には、「完全な年功序列制度」もなかなか存在しません。例えば、勤続年数の同じ社員が全員同じタイミングで同じポストに就くことは現実的に不可能です。

年功序列の一律の評価基準にしばしば批判が集まりますが、ミドル・シニア社員においても、これまでも給与や昇進に差が出ています。「建前は年功序列だけれど、出世の頭打ちポイントが存在する」という話に、思い当たる節があるのではないでしょうか。

年功序列制度を採用している企業でも、勤続年数にプラスして、責任の範囲に応じた給与額を決めているケースがあります。つまり、年功序列の単一ではなく、成果主義や能力主義を取り入れた複合的な人事評価制度になっているわけです。

年功序列と成果主義は評価基準こそ違いますが、社員の意欲に結びつけ、企業の成長につなげる目的においては同様の考え方といえます。大切なのは、どちらの制度が良いかではなく、自社の戦力を高めるために何が必要かという視点です。

その意味では、今後、新たな人事制度が生まれる可能性も大いにあるといえるでしょう。年功序列と成果主義の二択にとらわれず、柔軟に考えていく必要があります。

7. 年功序列を廃止する際は労働条件の不利益変更に注意

年功序列制度を見直す際に注意しなければならないのは、給与が減る社員への対応です。会社側の都合で、労働者側に不利益な労働条件に変更することを「不利益変更」といいます。

例えば、人件費削減を目的とした見直しではなく、社員のパフォーマンスと給与のつり合いを取るため、人件費を再配分する人事制度に変更するケースがあります。この場合でも、個々の労働条件で判断されるため、減額が発生するなど不利益となる社員がいる場合は不利益変更となります。

労働条件の不利益変更は、原則、社員の同意を得ることが必要です。ただし、変更内容に合理性があり、かつ不利益に対する緩和措置を取った上で社員と十分な交渉を経た変更であれば、有効性が認められています(労働契約法の第九条、第十条に規定)。

人事制度の変更については、労働者に十分な説明を

人事評価制度の変更は社員の生活に影響を及ぼす重大な決定です。不利益変更がない場合でも、改定の目的を社員に十分に説明することが大切です。

また、一時的に不利益がある社員が発生したとしても、将来的な増額が見込める変更なら受け入れてもらいやすくなるでしょう。いずれの場合も、社員の納得感を得るよう努めることが重要です。

8. 社員の意欲を引き出す人事評価制度を

年功序列は高度経済成長を前提として生まれた制度ですが、現在の企業が抱える課題を解決できるメリットも多数あります。その一方で、若手社員の流出や組織の停滞を招きやすいといった、時代の変化にそぐわない一面も持っています。

すぐに成果主義のほうが優れていると理解するのは早計といえます。全員が業績評価だけに意欲を感じて仕事をしているわけではありません。

人事評価制度は、社員の働く意欲に直結する部分であり、企業の将来性に大きな影響を与えます。まずは、自社の人事制度の問題点がどこにあるのかを見直し、二択ではなく、自社にとって最適な方法を検討する必要があるのではないでしょうか。

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