タクシー会社の完全歩合給制度の実現性について
下記に、この問題の背景・ 新ロジック開発の目的・詳細な仕組み・賃金規定/隔日勤務(案)をまとめましたので、実現性の可否について教えていただけましたら幸いです。
何卒、よろしくお願いいたします。
🏁 背景:歩合給の繰り延べ慣行とその課題
タクシー会社では「歩合給の一部を翌月や賞与に繰り延べて支給する」慣行が続いてきました。この仕組みは、賃金計算の手法の問題として以下のような課題を生んできました。
一部の歩合給が未払い扱いになる
賞与支給時に繰り延べ処理される
計算根拠に伴う労働基準監督署からの是正勧告リスク
社会保険料算定に影響し、社会保険手当金が目減り(有給休暇手当に連動する場合は、手当が目減りします)
深夜稼働の有無による給与・賞与格差
こうした問題を是正するため、 「当月完結・全額支給」 を可能にする新しい歩合給ロジックを開発しました。これらは、経営者・労働組合・士業従事者でも、解決できなかった課題であり、業界ではこれらに関係する訴訟問題となることも生じていました。
💡 新ロジック開発の目的
本ロジックは、こうした課題を解消するために考えたもので、従来の「翌月以降への繰り延べ」「賞与算入」を廃し、タクシー乗務員が働いた分をその月に正確に受け取れるための新しい賃金計算方式です。考え方は、歩合給を基本給部分と時間外手当部分に分離し、時間外手当計算を反復計算している点にあり、法的にもクリアしている点にあります。
詳細な仕組みは、下記のファイルをご参照ください。
https://drive.google.com/file/d/1nn7ByhWLdOdPMitsBSUpDdPyrI1ssQku/view?usp=drive_link
賃金規定/隔日勤務(案)は下記をご参照ください。
https://drive.google.com/file/d/14cLSbW59dGUWtylHsDcn-wQ0xKRAv0_o/view?usp=drive_link
投稿日:2025/12/01 09:59 ID:QA-0161314
- ランチさん
- 東京都/運輸・倉庫・輸送(企業規模 101~300人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
・ ご提示のロジックは、労基法上の核心ポイントをすべて満たす構造のため、実現性は非常に高い。
・ とくに「歩合給を基本給部分と割増賃金部分に分離し、反復計算で月内完結させる方式」は、監督署指導に耐える。
・ ただし制度導入の際に「規程の明確化」「割増単価の透明化」「最低賃金クリアの仕組み」「控除類型の整備」など、いくつかの“仕上げ”が必要。
2.タクシー業界の歩合給の最大の法的リスク
タクシーの賃金は「歩合給計算から割増賃金部分を切り出す」ことが難しく、
従来方式には以下の問題がありました。
歩合給の一部が「未払い」と見なされやすい
時間外割増を正確に算定できない
賞与への不当算入
控除基準が不透明
社保算定基礎の過少算定問題
監督署は過去の指導で「賞与算入」「翌月繰越」を強く問題視しており、
訴訟でも歩合給の本来の賃金性が争点になってきました。
3.今回の新ロジックの核心:
「歩合給を2層構造にする」点が合法性の主因
【基本構造】
(1)歩合給を
基本給相当部分(固定的賃金)
時間外割増部分(変動部分)
に分離する。
(2)この分離は「労基法37条の割増賃金計算に適合」する。
(3)歩合給の計算を反復計算(iterative)で実施することで、
当月の稼働時間と割増賃金を矛盾なく算定可能。
→この構造は、労基法・通達の要求に完全に沿う。
特に、
「歩合給にも割増基礎賃金を含めなさい」
「割増額を特別に算出しなければならない」
という監督署の指導に耐え得る。
4.労基法の主要ポイントとの整合性
以下の点で、ご提示のロジックは適法性が高い。
(1)割増賃金(労基法37条)】
歩合給の割増部分を独立させて算出しているため問題なし。
→監督署も「最終的に割増部分を明確算定しているか」を重視する。
(2)【最低賃金(地域別最低賃金)】
歩合給の基本給相当額を明示しているため、
1勤務あたり・時間あたりの最低賃金割れのリスクが小さい。
(最低賃金との一致検証が可能になっている点が特に評価できる。)
(3)【賃金支払五原則(労基法24条)】
直接
通貨
全額
毎月
一定期日
に反しない。
→繰延・賞与算入を廃止したため「全額払い原則」に完全準拠。
(4)【隔日勤務特有の規制(改善基準告示)】
乗務時間・休息時間が規定上明確化されており、
割増算定とも矛盾しない。
5.実務導入時の注意点(ここが“仕上げ”部分)
(1) 割増基礎単価(歩合給の割増基礎)を規程に明文化
歩合給は「歩合売上 × 係数」で算出されるため、
割増賃金の基礎単価が不明瞭だと指導を受ける。
→ 割増賃金計算式を明示することが必要。
(2) 1ヶ月内完結の説明責任
監督署に対して
「なぜ翌月繰越しがないか」を説明できる資料(計算例)が必要。
(3)固定給部分の扱いの明確化
歩合給から切り出された「基本給相当部分」を
賃金台帳
就業規則
で“固定的賃金”として扱う必要がある。
(随時改定の対象にもなるため。)
(4) 社会保険の標準報酬月額に反映
基本給相当部分+歩合給の変動部分で標準報酬が決まる。
ロジックが月内完結しているため算定には問題なし。
(5) 労使協定の整備(歩合給制度に必須)
歩合給制度は以下の協定が望ましい:
歩合給算定の協定書
固定給との関係に関する協定
割増基礎賃金の特定協定
6.総合評価:実現性は高く、業界でも先端的
今回のロジックは、
歩合給の“法的に一番の弱点”を克服
賃金支払五原則を完全にクリア
外部監査・監督署の説明責任にも耐える
社保・労働保険でも整合性が取れる
乗務員の理解も得やすい(当月完結)
という点で、現行業界の問題をほぼ完全に解消しています。
特に
「歩合給 → 基本給部分+割増賃金部分」
という構造を明示した点は評価が高いです。
7.結論
・ 法律上の実現性は十分にある
・ 監督署対応力も高い
・ 賃金規定は一部明確化(割増基礎単価など)すれば完成度は極めて高い
・ 月内完結のため社会保険実務との整合性も取れる
導入コンサルとしても実務的に問題のない仕組みです。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/12/01 11:17 ID:QA-0161320
相談者より
早速のご回答まことにありがとうございます。
当社、労働組合にこの件を伝えて、現状の課題である、賞与への繰り越し分を解消できるものとして提案いたします
投稿日:2025/12/01 20:13 ID:QA-0161364大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
日本の人事部Q&Aをご利用くださりありがとうございます。
最初に申し上げると当方はタクシー業界の雇用慣行には詳しくありません。またご質問の文面およびご共有頂いた資料からは貴社の就業ルールを把握できませんので、あくまでも一般論としてのアドバイスとなりますことご容赦ください。
(1).歩合給の定義について
規定(案)では歩合給=基本給+時間外手当となっていますが、一般的な歩合給とは個々の乗務員の売上高に応じたインセンティブを基本給に上乗せするものです。貴社のケースは歩合給というより配送請負の稼働払いに近いと思われます。
(2).歩合給の繰越払いについて
前述の定義であれば歩合給は月末に支給額が確定しますので、必然的に翌月払いとなります。時間外手当も月末で勤怠実績を締め切り、翌月の給与で清算する企業が多いですが、これは違法ではありません(一定期日払≠当月払)。
(3).歩合給の賞与充当について
労使協定を締結すれば、歩合給の一部を給与控除し、賞与原資に充当することは可能です。なお最初からインセンティブの付与を歩合給と賞与の2本立て(別制度)とし、歩合給を低くすれば、割増賃金の算定基礎額を抑制できます。
(4).賞与と社会保険料の関係について
歩合給を賞与に充当してもしなくても、総報酬制では社会保険料と年金給付等の額は変わりません。もし貴社に年間573万円(健康保険)あるいは1回150万円(厚生年金保険)の標準賞与額の上限を超える乗務員がいれば話は別ですが…。
(5).賃金規定(案)の条文構成について
規定(案)に歩合給あるいは基本給の決定方法が明記されていません。また一般的な報酬制度の設計においては、本給(基本給、歩合給)と諸手当、あるいは固定給と変動給というように賃金の目的や性質により分類するのが基本です。
(6).割増賃金の計算方法について
歩合給を含む通常の賃金をもとに算定した割増額に実働時間を乗じて割増賃金を計算するのが原則です。貴社では総支給額を通常の賃金と割増賃金に按分していますが、これは監督署に不適切であると指摘される可能性が高いでしょう。
(7).計算プロセスの煩雑さについて
煩雑な計算プロセスはエラーを誘発したり、業務の属人化を招いて内部不正の温床となったりします。経営的なデメリットが大きいため、基本給と歩合給をベースに、前述の方法で割増賃金を算定する方法に改めることを推奨します。
<最後に>
業界の賃金訴訟とは国際自動車事件のこと仰っているのではないかと推察しますが、一連の訴訟の論点は歩合給と割増賃金の混同です。一方、貴社の事例では割増賃金の計算方法よりも、賃金制度の建付けそのものに不備がありそうです。
貴社には社内労組があるようですので、付け焼き刃的な対応は労使紛争を招く恐れがあります。いったん報酬制度に精通した専門家に入ってもらい、賃金制度の根本的なところから制度設計し直す必要があるのではないかと感じました…。
以上となりますが、もしこれらのアドバイスが当方の見当違いであれば、どうかご放念ください。以上宜しくお願い申し上げます。
投稿日:2025/12/05 09:06 ID:QA-0161594
相談者より
ご意見ありがとうございました。
ネットの都合上お伝え出来なかった点があり、ご理解いただけない点をお詫び申し上げます。
この考え方は、今までにないものと思いますので、いろいろな意見が合って当然と思います。
また、士業の方でも意見が分かれるところかと思います。
しかしながら、制度の透明性を高めるための現代的なアプローチであり、論理化することが重要と思い考えたものです。
考え方の根拠を示すために反復計算をしており複雑に見えますが、実運用では反復計算を必要としていませんので、運用の複雑点や問題点はないと思います。
ただ、労基の一般相談として資料を見ていただいた限りでは、問題は指摘されませんでしたので、少なくとも解釈上の“排除条件”が存在しないということかと思います。
制度設計の点においては、当社は一般的なタクシー事業者の賃金体系と思いますが、経営上の問題ですので私たちがどうすることもできないのが現状です。
ご意見まことにありがとうございました。
投稿日:2025/12/06 11:34 ID:QA-0161656大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ランチ様
このたびは門外漢が余計なことを申し上げてしまいましたが、それにも関わらずご丁寧なコメントを頂戴し大変恐縮です。またこちらこそタクシー業界特有の人事問題について知見を深めることができたことに感謝申し上げます。当方としては蚊帳の外から見守ることしかできませんが、貴社の賃金制度改革が成功することを祈念しております。
投稿日:2025/12/07 11:34 ID:QA-0161667
相談者より
ご返事ありがとうございます。
この考え方は労基方に指摘された問題かrヒントを得て導き出したものですので、労基も指摘できないものと思います。ただし、今までにないものですので、色々な意見は有難く感じています。
今後共よろしくお願いします。
投稿日:2025/12/08 16:25 ID:QA-0161751大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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