2週間以上前に退職の意思を表示させる就業規則について
お世話になっております。
就業規則の退職規定について相談があります。
無期雇用者用の就業規則に
「従業員が自己の都合により退職しようとするときは、少なくとも3ケ月前までに明確な退職の意思を表示し、必ず14日前までに退職届を会社に提出しなければならない。」
と規定されています。
3か月という期間については、引継ぎや人員の調整用の期間として設定しているわけです。ですが民法627条第1項では退職の意思を表示した翌日から14日経過すれば、退職は可能だとされているはずです。(第2項でも実質的には最短14日くらいになると思います。)
この14日の要件は重々理解しておりますが、現実問題として引継ぎや人員の調整は相応の期間が必用です。
そこで質問なのですが、
①上記の様な就業規則の定めをしても問題ないか?
②法律の要件を楯に、3か月を切る期間で(例えば1ヵ月)での退職を強行しようとする従業員に、就業規則に定めた制裁や、賞与の減額を行うことが可能か?
③退職の意思表示から、退職までの期間が3か月より極端に短く、十分な引継ぎが出来ず損害が発生した場合、退職した元従業員に対し賠償を請求できるか?
④例えば自己都合退職者への退職金を、冒頭に記載した規則に従った者のみへ支給する等の文言で制定できるか?
②のケースは、3か月を切る期間での退職が明らかであっても、実際に退職するまでは一応違反したことにはならないので、制裁を楯にした抑止は無理でしょうか?例えば、制裁の該当事由に「今後会社へ損害を与える事が明らかである場合」などと記載すれば対応可能でしょうか?
実際に上記のようなことを行う従業員はほとんどないだろうし、会社も有事の際などを考え、それぞれをサポート出来る様にするべきだと思います。
ただ、悪意を持って上記の様な行動を起こす従業員が、今後現れないとも限りませんので、自衛の為どのように規則を運用すべきか疑問に思い質問させて頂きます。
以上、宜しくお願い致します。
投稿日:2021/10/04 15:41 ID:QA-0108184
- チコリさん
- 北海道/建築・土木・設計(企業規模 11~30人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
対応
①まず退職する権利は職業選択の自由という憲法上の権利と考えられますので、法定の2週間を超えた告知義務自体は現実には難しいと思われます。ただそうした規定の会社はありますので、規定自体作ることは可能なのでしょう。
②しかし制裁までエスカレートすると社会的合理性が問われ、恐らく無理なのではないかと思います。3ヵ月前に退職を告知するのは一般的には不可能に近く、転職先会社が3ヵ月後の入社まで待ってくれるかどうか、きわめて疑問だからです。
③賠償請求するのは自由ですが、なぜその賠償額となるのか合理的に説明する必要があります。通常そのような証明が不可能なため、賠償は起こさないのでしょう。
④上記同様不合理な退職金不支給は認められないのではないでしょうか。
退職をゼロにするというあり得ない目標ではなく、どうすれば少しでも支障なく退職する社員が増えるかという人事政策の問題だと思います。会社に不満がなく退職するというのは通常は考えられません。そうした不満があっても吸い上げる機能が無い、そもそも社員の意見など聞く気がない、管理者が管理をできていない・・などさまざまな問題が職場にあるはずですので、そうした問題をていねいに改善していくという地道な方法が結局トラブル退職減になるのではないでしょうか。
投稿日:2021/10/04 17:23 ID:QA-0108188
相談者より
回答頂きありがとうございます。
「問題をていねいに改善していくという地道な方法が結局トラブル退職減になる」
まったくもって仰る通りで、過剰な近道行為は余計なトラブルを引き込む原因ですね。
投稿日:2021/10/05 08:27 ID:QA-0108215大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
①会社のルールとして、3か月前、1ヵ月前と記載することは可能です。ただし、トラブルとなっ た場合には、ご認識のとおり、民法の2週間が優先されますので、年俸制でない限り、3か月前を強制することはできません。
②③④上記理由により、制裁や、賞与減額、損害賠償は請求できません。
ただし、引き継ぎを行わないことに対して、退職金を支給しない、減額することは、その旨、規定すれば可能となります。
投稿日:2021/10/04 18:29 ID:QA-0108192
相談者より
十分な引継ぎを行わないものに対する退職金の支給を制限できれば、突発的な退職に対する十分な抑止となり得ます。
回答頂きありがとうございます。
投稿日:2021/10/05 08:31 ID:QA-0108216大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、①につきましては、強制されなければこうした規定内容でも差し支えございません。
②、③につきましては、一種の強制に該当する事になりますので、こうした制裁的措置の発動に関しましては避ける必要がございます。
④につきましては、退職金の支給要件に関しましては、退職日とは異なり一切法令で定められておりませんので、何らかの条件を付される事は可能といえるでしょう。但し、文面内容の件のみで退職金が不支給となりますと退職者に取りましては余りに大きな損害となりますので、そのような公序良俗に反する可能性のある措置に関しましては避けるべきというのが私共の見解になります。また、現行制度では支給されていたものを今後支給せずとされる措置に関しましてはいわゆる労働条件の変更に該当しますので、原則労働者の個別同意を得られて変更する事が求められます。
ちなみに悪意を持った社員であれば、2週間前ではなく突然職場放棄のような形で退職される事が多いので、基本的にご文面のような措置については不要と考えるのが妥当といえるでしょう。
投稿日:2021/10/04 22:51 ID:QA-0108205
相談者より
規定はできるが、強制や強制させる様な行い(制裁)は出来ないということですね。
「3か月前を目途に意思表示をする様、配慮しなければならない」
程度にするのが、現実的なのですね。
回答頂きありがとうございます。
投稿日:2021/10/05 08:38 ID:QA-0108217大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
①問題はありません。
②基本的には労働者には退職の自由があり、就業規則の規程に反して1か月で退職を強行しようとした場合においても、退職の意思を表示すれば原則2週間が経過すれば退職の効果は生じてしまいます。
そのため、ルール違反の申し出だからといって拒否することもできないし、制裁や賞与の減額にも合理性はないと考えられます。
③確かに、退職にあたって業務の引継ぎ等は、社員として当然になすべきことであり、企業側からすれば、しっかり引き継いで貰いたいと願うのはもっともです。
引継ぎが不十分で実際に損害が発生したのであれば、賠償請求も不可能ではないでしょうが、そのためには、どんな損害がどれだけ発生し、実損額がいくらになるかを立証しなければならず、裁判上行使するとなれば、費用、時間、労力がかかり、経営に専念するどころではなくなってきますので、そこは慎重に判断する必要があります。
④もともと、就業規則は使用者が一方的に作成するものであり、法律は労働者の意見を聞きなさいといっていますが、同意を取れとはいっておりません。
そのため、法に抵触せず、公序良俗に反しない限り、どのような規定を設けるかは基本的には使用者の自由です。
退職金に関していいますと、すでに退職金規程が存在し、この規程を新たに追加するということであれば、退職金を不支給ないし減額できるのは「永年の勤続の功を抹消あるいは減殺してしまう程度の不信義な行為」でなければならない、というのが裁判所の判断です。
そのため、不支給が認められるのは、秘密漏えい、横領、背任など業務に関連した違法・不正行為などに限られ、就業規則に定めた退職手続きルールに反したという理由では不支給とすることは困難であるといわざるを得ません。
投稿日:2021/10/05 08:57 ID:QA-0108220
相談者より
お礼が遅くなりましたが、回答頂きありがとうございます。
規定はできるが、これに対する罰則までは現実的ではないということですね。
投稿日:2021/10/21 11:40 ID:QA-0108920大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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