月給制それとも年俸制?昇給制度や人事考課は?パート契約社員の最新実態を探る
激しい企業間競争が繰り広げられる中で、企業経営においてパートタイマーをはじめとする「非正規社員」を主戦力として活用していく重要性がますます高まってきています。総務省統計局の「労働力調査(詳細結果)」によると、2003年平均の非農林業雇用者に占める非正規社員比率は30.3%と、今や非正規社員抜きにして企業経営は成り立たないとも言えますが、実態はどうなっているのでしょうか?多様化する非正規社員――パートタイマーおよび契約社員の労働の状況や内容について、労務行政研究所の調査結果をもとに探ってみます。
「短時間パート」を雇用している企業は71.7%、「契約社員」は54.4%
ここでは、「非正規社員」について、(1)短時間パート(2)フルタイマー(3)契約社員の3つに分けます。短時間パートとは、正社員より1日の所定労働時間が短いか、1週の所定労働日数が少ない人。雇用期間は1カ月を超えるか、または定めのない人(一般事務など、非専門的職種に従事することを目的とする)です。また、フルタイマーとは、正社員と1日の所定労働時間および1週の所定労働日数がほぼ同じ人。そして短時間パートと同様、雇用期間は1カ月を超えるか、または定めのない人(一般事務など、非専門的職種に従事することを目的とする)です。
さらに、契約社員とは、専門的職種に従事することを目的とする契約に基づき雇用し、雇用期間の定めのある人。専門的業務に従事しないフルタイマーをはじめ、高齢者の嘱託社員や派遣社員に該当する人は除きます。
では、表(1)をごらんください。
これは、3つの非正規社員の雇用状況をまとめたものですが、短時間パートを雇用している企業は71.7%、フルタイマーを雇用している企業が55.0%、契約社員は54.4%と、5割以上の企業が非正規社員を雇用しています。
さらに、これら3つの非正規社員について、各企業の「雇用形態の組み合わせ」で見たところ、最も多いのは4社に1社の割合で「短時間パート+フルタイマー+契約社員」(26.1%)、続いて「短時間パート+フルタイマー」(21.8%)、「短時間パート+契約社員」(15.2%)などと、複数の組み合わせにより非正規社員の雇用を展開していました。
ちなみに、厚生労働省の「2003年就業形態の多様化に関する総合実態調査」によると、パートタイマーおよび契約社員を雇用する理由の上位3項目は――パートタイマーでは(1)賃金の節約(2)1日、週のの中の仕事の繁閑への対応(3)賃金以外の労務コストの節約、また契約社員では(1)専門的業務への対応(2)即戦力・能力のある人材の確保(3)賃金の節約――となっています。景気に対する不透明感がいまだ消えない中で、人件費削減や雇用における柔軟性の確保、専門的な人材、即戦力・能力のある人材の確保のために、非正規社員が活用されていると言えます。
なお、表(2)に見るように、契約社員の職種では「事務職」が58.2%と最も高く、次に「営業・販売職」(53.1%)、「研究開発・技術職」(39.8%)などの順となっています。「その他」の割合も15.3%と比較的高いですが、これは寮管理人や運転手などです。
非正規社員に対する昇給制度を実施している企業は2割にとどまる
一口に非正規社員といっても、職種や職務がさまざまですから、雇用契約内容も千差万別です。賃金体系に関してもさまざまで、1社で何種類もの賃金を用意しているケースがあります。
こうした状況を前提に、非正規社員の賃金はどのように決められているのでしょうか。表(3)をごらんください。
短時間パート、フルタイマーで最も多いのが「時間給制」です。短時間パートでは99.3%と、ほとんどの企業が採用し、その他の賃金形態は1割もありません。
契約社員では「月給制」が最も多く69.0%、次いで「年俸制」が27.0%、「時間給制」が17.0%などと続きます。職種と賃金形態の関係は一概には言えませんが、研究開発・技術職、営業・販売職、高度専門職には、年俸制適用の例が比較的多く見られました。
では、非正規社員も正社員と同様に、制度に基づき毎年定期的に行う昇給制度(契約更改時に個人別、不定期に行う賃金の増額ではない)を適用されているでしょうか。表(4)を見ると、短時間パート・フルタイマー・契約社員のいずれの雇用形態も、6割を超える企業が「実施していない」と回答しています。「実施している」企業は2割台にとどまっています。
4割前後の企業が非正規社員に対する「人事考課」を実施している
非正規社員に対する「昇給制度」の実施状況は2割台にとどまっていますが、では、「人事考課」はどうでしょうか。
表(5)をごらんください。
4割前後(短時間パート39.6%、フルタイマー44.2%、契約社員47.0%)が「実施している」と回答しています。「職種、人により異なる」場合も含めると、短時間パートで41.8%、フルタイマーで47.1%、契約社員で52.0%の企業が人事考課を実施しています。
なお、これら何らかのかたちで実施している場合の考課基準について聞いたところ(複数回答)、短時間パート・フルタイマーでは「勤務態度・勤怠状況」が9割を超えました。「職務遂行能力」も7割以上の企業が挙げています。これに対して、契約社員は「業績、目標達成度」「職務遂行能力」「勤務態度・勤怠状況」がいずれも8割前後となっています。とくに「業績、目標達成度」は80.0%と最も高く、契約社員に対しては成果重視であることがうかがえます。
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