【ヨミ】ノーレイティング ノーレイティング
(2017/3/10掲載)
ギャップ、マイクロソフト、GE、アドビシステムズ、アクセンチュア、IBMといったグローバルカンパニーが「ノーレイティング」を導入し、大きな話題を呼んでいます。「ノーレイティング」とは、企業の人事評価において、相対評価で社員をランク付けする年次評価をやめること。アメリカでは経済誌フォーチュンが企業の総収入にもとづいて全米上位500社をランキングするフォーチュン500の企業の1割以上が、2015年時点でレイティング廃止に踏み切っています。17年までに半数が廃止すると予想する研究者もいるほどで、欧米において「ノーレイティング」がパフォーマンスマネジメントの新潮流となっていることは、まず間違いありません。
そもそも「ノーレイティング」という新語が成立するくらいですから、従来の人事評価システムでは、レイティングを行うのが一般的でした。日本でも、成果主義人事の導入に伴って、多くの企業が20年ほど前からアメリカ式の目標管理・評価制度を採用。通常は、年初に設定した当年度目標に対し、途中でも進捗状況をすり合わせつつ、年度末に実績を踏まえてA、B、Cなどとランク付けを行い、本人にフィードバックするという年次サイクルのプロセスで運営されています。
「ノーレイティング」は、けっして目標の設定や管理あるいは人事評価自体を“NO”=否とすることを意味しません。むしろ時流の変化に応じて、それをより有効に機能させるために、社員のランク付けと年単位の評価サイクルを廃し、パフォーマンスマネジメントの変革につなげることが、「ノーレイティング」の本質であるといわれています。相対評価でランク付けされ、他者との競争を強いられ続けると、人は失敗を恐れて守りに入り、周囲との協働を避けるようになります。先の見えない「VUCA」と表現されるような、現在の厳しいビジネス環境を生き抜いていく上で、それがどれほどマイナスに働くかは、いうまでもないでしょう。1年先でさえ見通しにくい状況下だからこそ、人と組織には、ストレッチな挑戦や多様な人材との協働を通して、たえず成長し続けることが求められているのです。
こうした時代背景が、欧米の名だたる先進企業に人事評価の変革を促しました。各社の実践内容はさまざまですが、大きな枠組みとしては、レイティングを廃止するかわりに、上司と部下の継続的かつ頻繁な対話や、機敏でタイムリーな目標設定とフィードバックによって、人と組織のパフォーマンスの最大化を図ろうとする取り組みが共通しています。
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