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【ヨミ】ジンザイマネジメントバリューチェーン 人材マネジメントバリューチェーン

バリューチェーンとは、企業活動の流れの中で各事業が有機的につながり、価値の付加を積み重ねていくプロセスのことです。慶應義塾大学大学院 準教授の小杉俊哉氏は、人事にもこのバリューチェーンが存在すると指摘。人材マネジメントに関する一連の“価値の連鎖”が顧客や市場に向けた最終的なバリューを創出し、企業に競争優位をもたらすとする考え方――「人材マネジメントバリューチェーン」を提唱しています。
(2011/7/25掲載)

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人材マネジメントバリューチェーンのケーススタディ

制度・施策だけの人事改革は危険
“価値連鎖”の全体を見直すべき

人材マネジメントバリューチェーン」の概念は、1999年に発表された小杉氏の著書『人材マネジメント戦略』によって提示されました。当時はいわゆる「失われた10年」の弊害が誰の眼にも明らかになりつつありましたが、日本の一部の先進企業ではすでに90年代前半から、米国企業に倣った人事制度・施策の導入を進めていました。従来の年功序列にもとづく職能給制度から、職務給、成果主義、年俸制への移行です。しかしそうした先進的な改革が奏功した例は少なく、むしろ組織の混乱や社員の反発、企業によっては優秀な人材の流出さえ招いたといわれます。なぜうまくいなかったのか――。小杉氏は“人材マネジメントバリューチェーンの分断”が原因と指摘しています。

人事のバリューチェーンの“最上流”にはまず、企業が属する業界、競合相手、景気動向といった経営環境があり、その中で企業のビジョンが設定されます。ビジョンは経営理念とよく混同されますが、経営理念が創業以来変わることのない企業の存在意義そのものであるのに対し、ビジョンとは経営環境の変化に応じて設定するもの、適宜改めていかなければならないものとして捉えられます。

ビジョンが設定されたら、次いでリーダーシップが発揮されなければなりません。経営トップがビジョンにコミットし、共有のビジョンにすべく、あらゆる機会を捉えて社内外とコミュニケーションをとる必要があるのです。その上でリーダーシップに応じた組織のあり方や人事戦略を明らかにし、実際にこれを担保するための人事制度・施策をつくる。そうして制度が適用される社員一人ひとりにまで、価値連鎖がつながっていくわけです。社員の先にあるのは市場と顧客。価値連鎖の“最下流”にある社員が、市場や顧客にどのようなバリューを提供するかによって企業の競争優位性が規定されます。


【人事のバリューチェーン】

《経営環境》
   ↓
ビジョン ⇒ リーダーシップ ⇒ 組織・人事戦略 ⇒ 人事制度・施策 ⇒ 社員
   ↓
《市場・顧客》


人事制度や施策に手をつける場合は、バリューチェーン全体の流れの中で捉える必要があると、小杉氏は指摘します。先の90年代の失敗例では、こうした価値連鎖が存在するにもかかわらず、ビジョンやリーダーシップを改めることも、ビジョンを実現するための組織のあり方や人材像を明確にすることもないまま、いきなり人事制度・施策だけを取り出して米国流に変えてしまう企業が後を絶ちませんでした。人材マネジメントバリューチェーンに連なるすべての要素を見直し、そのベクトルを揃えなければ、連鎖の最後に位置する社員に対して有効に働かず、企業の競争優位にもつながらないのです。

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