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成長の鍵は「自分らしさ」 JMAM2030ビジョンから考える、いま企業に必要な学習方法とは

注目の記事研修・人材育成[ PR ]掲載日:2024/03/06

過去の「成功の方程式」が通用しなくなった現代、企業が生き残っていくためには、変革を起こす人材を育成していかなければなりません。株式会社日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)は、「自分らしさ」をキーワードに変革に取り組み、2030年に向けたビジョンを策定。「自分らしさ」と向き合い、新しい価値観と出会うための研修「越境学習」を全国さまざまな地域で企画し、提供しています。越境学習プログラムの一つである鳥取市鹿野町の事例をもとに、視点や価値観をアップデートして「自分らしさ」を磨いていくための方法を、同社 代表取締役社長の張士洛さんに伺いました。

Profile
張 士洛さん
張 士洛さん
株式会社日本能率協会マネジメントセンター 代表取締役社長

ちょう・しろう/1986年社団法人日本能率協会入職。1991年株式会社日本能率協会マネジメントセンター転籍。研修・通信教育・eラーニング等人材育成支援事業の本部長を歴任し、2007年取締役。2013年取締役 兼NPB(手帳)事業本部長。2014年専務取締役 兼株式会社NOLTYプランナーズ代表取締役社長。2018年6月より現職。2022年4月より国立大学法人東京学芸大学経営協議会委員 兼客員教授に就任。専門分野はマーケティング。CS・経営品質分野での指導・コンサルティング実績多数。

「自分らしさ」が組織の武器に

貴社では、2022年に「JMAMグループ2030ビジョン」を策定しています。ビジョン策定の背景をお聞かせください。

JMAMは2021年に設立30周年を迎え、大きく成長できるように企業改革を進めてきました。改革前は、裏打ちされた伝統を守る、これまで通りつつがなくやっていく、という空気が強かったのです。

JMAMの歴史は「モノ」ではなく「コト」から始まります。JMAMとしては独立してから30年ですが、母体となる日本能率協会が誕生したのは80年前の戦時中で、軍需工場の生産能力を高めるための国策機関でした。

戦後、産業復興のために学識者や技術者が集まり、生産現場の生産性向上と人材育成を支えました。そのノウハウを書籍にしよう、セミナーにしよう、さらには時間管理のために手帳を作ろうと、「モノ」を作るようになったのです。ところが「モノ」ができると、人は「今度はどんな手帳を作ろう」という思考になってしまいます。私たちが売っているのは手帳ではなく、生活者の豊かな時をデザインすること。設立30年の節目に、JMAMには変革が必要だと考えて、ビジョンを策定しました。

JMAMグループ2030ビジョン

ビジョンはどのように創られたのですか。

ビジョンの策定にあたっては、社員が参画することに注力しました。10年後のJMAMを創るのは社員です。私も意見は言いますが、「彼らに会社の未来を託したい」という思いがありました。社内でプロジェクトメンバーを公募したところ、80人ほどから応募があり、ファイナリスト20人を選出。役員の前でプレゼンを行い、最終的に12人が選ばれました。性別も年齢も所属も見事にバラバラの人たちが集まり、対話を重ねながらビジョンへと落とし込みました。

張 士洛さん 株式会社日本能率協会マネジメントセンター 代表取締役社長

「JMAMグループ2030ビジョン」の概要について教えてください。

「JMAMグループ2030ビジョン」は、2030年の世の中がどうなるか、JMAMの六つの視点について語ったものです。(1)「自分らしさ」をデザインできる時代に、(2)生涯を通して「自分らしさ」を伸ばす時代に、(3)「自分らしさ」を考えてくれるモノやサービスが消費の決め手に、(4)距離や言語の壁が消え真のボーダレス社会に、(5)地球視点や未来視点でのライフスタイルがあたりまえに、(6)デジタル社会で「自分らしさ」が見直される、という六つの視点です。

「自分らしさ」という言葉が何度も出てきますが、なぜそこに着目したのでしょうか。

日本の教育は没個性型で、みんなが同じゴールに向かって走っています。「競争社会」といっても本当の意味での競争は行われていなくて、ただ横並びで走っているだけ。しかし今の時代、同じ方向に走っているだけでは、なかなか価値を発揮できません。一人ひとりの個性を輝かせながら、絡み合ったり溶け合ったりすることで、本来の競争力が発揮され、コラボレーションへとつながります。

「集団天才」という価値観があります。JMAMの理念の一つにもなっているのですが、一人ひとりの専門性を結集することで、集団として天才的な能力を発揮することです。私が入社した頃のJMAMには、いろいろなタイプの天才がそろっていました。個性的なコンサルタントばかりで、本人同士は相いれない関係でしたが、集団としての能力がすごかった。日本人が今目指すべきなのは、まさに「集団天才」ではないでしょうか。一人ひとりが能力を発揮し、ぶつかり合い認め合ってイノベーションを起こしていく。私たちは、「集団天才」があちこちの組織で生まれるような社会にしていきたいのです。

バラバラの個性をつなげるものが「理念」ですね。

その通りです。共感や共通のゴールを持つことで、集団として一つに団結することができます。一人ひとりが違うからこそ、一人では越えられない壁も越えられるようになります。「集団天才」に加えてもう一つ、前提として欠かせないのが「イコールパートナー」という考え方。役職、年齢、立場の違いなどを超えて、全員が互いの考え方・価値観を尊重することです。入社30年のベテランと入社1年目の新人とで、発言の重みに差をつけてはいけません。

JMAMの理念

性格は変えられないが、「自分らしさ」は変えられる

「自分らしさ」は、どのように醸成されるとお考えですか。

なんでも言える環境、つまり心理的安全性を確保することが大切です。誰が何を言っても尊重される環境でないと、自分らしさの発露はできません。心理的安全性は「否定されない」ことだとよく誤解されますが、正しくは「厳しいことも言い合える」こと。だからこそ、上の立場の人が率先して弱さをさらけ出し、自分らしさを表現することが大切です。

「間違えたくない」「嫌われたくない」という恐れの気持ちがあるのは当然のことです。しかし、まず話さないと何も始まりません。発言する、やってみる、学ぶ。よく「失敗から学ぶ」と言いますが、成功からも失敗からも何かを学ぶことはできます。そういうPDCAを回せると、自分なりのやり方で挑戦できる好循環が生まれます。会社が環境を整えることも大事ですが、最後は主体性が大事。自らを前に押し出し、行動する勇気を持ってほしいです。

「自分らしさ」は変えられるものなのでしょうか。

心理学の考え方では、外交的か内向的かなどのパーソナリティや、分析的か創造的かなどの志向性は、変わりづらいと言われています。しかし「自分らしさ」は、パーソナリティや志向性などを活かしながら、上書きできると思っています。この自分らしさの上書きを支えているのは「Enjoy」です。成長は、楽しくなければ意味がない。楽しむことで加速度的に成長することができます。

自分らしさを武器にできる人は「自律型人材」と呼べると思います。自律型人材を育成するにあたり、企業が直面している課題とは何でしょうか。

企業がこれまでやってきたのは、知識を身につけよう、スキルを上げようという取り組みです。決められたプログラムなので、自律的であるかどうかは関係ありませんでした。たとえば研修の場合、「会社が行けというから」「受けないと昇進できないから」と消極的な理由で受けている人が多いのが実態です。しかしこれからは、期待する役割を果たしてもらうための階層別研修のようなものと、自分らしく自由に活躍してもらうための自律性を育むものの両輪が必要です。

自分らしさを育むために、どのような対策が考えられますか。

日本企業で行なっている研修は、「OJT(On the Job Training)」が中心です。ある時期からは「OJD(On the Job Development)」が注目されるようになり、編集や交渉術など、仕事を通じて未来を見据えた能力開発が行われるようになりました。さらに「OJL(On the Job Learning)」という概念もでき、既存業務の中で知が深まるような仕組みの関心も高まっています。

しかし、これらには全て「J」がついています。つまり、学びが「Job(仕事)」の範疇(はんちゅう)でしかないのです。この「J」を外さないと、組織は同質的になっていきます。同じ会社にいるのだからある程度の同質化は避けられませんが、意図的に異質性をつくることはできます。異質性をつくるためには、全く違う環境で育ってきた人や、価値観が異なる人などと交流しながら学ぶことができる「越境学習」がうってつけです。

張 士洛さん 株式会社日本能率協会マネジメントセンター 代表取締役社長

越境学習は、JMAMの社員も体験しています。たとえば、大津波に襲われた岩手県釜石市での「津波避難の追体験」。そこでは、肩書きは一切役に立ちません。津波が来たらどうするのか、津波にのまれた町に対して何をするのか。非常時の行動指針や意思決定の難しさを体験します。その土地ならではの息づかいを身体で学ぶことから、「体験学習」という呼び方もしています。

ただし、OJTが駄目だというわけではありません。仕事に直結するトレーニングはこれまで通り必要です。同質性から抜け出し、イノベーションの第一歩を踏み出すために「別の学び方」が必要なのです。

越境学習では、参加者は2回苦しむ

貴社が提供する「越境学習」の詳細やサポートについてお聞かせください。

短期型と中長期型の二種類のプログラムを用意しています。短期のもので3泊4日、中長期のものだと4ヵ月〜半年ほど。地域の人びとの営みを学ぶプログラムを、全国10県・14ヵ所で開催しています。その土地ならではの課題を教材に、体験や対話を通じて考察を深めます。長期型プログラムでは、実際に地元企業の経営者らと協業し、地域課題解決のビジネス創出を支援します。日常とは異なる空間で過ごすことにより、参加者の価値観が揺さぶられるプログラムです。

参加者は2回苦しむタイミングがあります。まずは、プログラムの開催地へと越境したとき。自分の常識が通用しない世界が広がっていることに気づき、自分の価値観が崩壊していきます。2回目は、自社に戻ったとき。新しい世界や考え方を学び、自社に持ちこもうとしても、なかなか伝播(でんぱ)させることができないという葛藤を多くの方が抱きます。

JMAMでは、2回目の苦しみである「自社に帰った後の体験」を重視しています。越境前にも「学びの姿勢づくり」としてセッションを行うのですが、越境後にも自社への展開を見据えたセッションを行います。「変わらない自社」にショックを受けつつも、また少しずつ適応していく。そのときにただ落ち込むだけでなく、学びを少しずつでも行動に変えられるよう支援します。

JMAMの越境学習

実際のプログラム例についてお聞かせください。

短期型プログラムと長期型プログラムの両方を実施した地域として、鳥取市鹿野町があります。JMAMは2021年に鳥取市と連携協定を締結し、「地域」と「企業」を「学び」でつなぐプログラムを開発してきました。

鳥取市鹿野町は、鳥取県東側に位置する人口 3,700 人ほどの城下町情緒あふれる小さな町で、20 年前から住民主体のまちづくりが進められてきました。地域課題となると、行政が前面に立って取り組むことがほとんどですが、鹿野町は居住者の問題意識が高く、独自の取り組みを行っています。

2022年には短期モニターツアーを実施し、持続可能なまちづくりと自分づくりを考えるプログラム「サステナ創動力」を開催しました。具体的には、長年まちづくりを支えてきた、いんしゅう鹿野まちづくり協議会(鹿野まち協)から空き家活用について学んだり、鹿野町で活動する劇団「鳥の劇場」から表現力を磨くワークショップを実施したり。また2023年度は「ことこらぼ@鳥取・鹿野」として中長期型プログラムを開催。地域課題となっている空き家問題に向き合い、鹿野まち協の取り組みの新機軸を実装するプログラムです。参加者が3チームに分かれ、現場でのヒアリング調査や仮説検証から問題の本質を見極め、具体的な施策へと落とし込みました。

JMAMの越境学習の特徴は、地域にコミットしていること。地域を巻き込んだ研修自体はそれほど目新しいものではありません。特徴は、「地域にとって利益があるか」に本気で向き合っていること。JMAMも参加者も地域の「関係人口」となって、プログラム修了後もボランティアに赴いたり、ふるさと納税で寄付したりするなど、濃いつながりを持続することが目標です。

鳥取市鹿野町

越境学習は、自分のOSをアップデートする場

越境学習から、どのような効果を感じていますか。

「考え方が変わる」。一言で言うとそれだけです。考え方さえ変わればいいと思うのです。

張 士洛さん 株式会社日本能率協会マネジメントセンター 代表取締役社長

考え方が変われば、自ずとその後の発言や行動に変化が現れます。越境学習のキーワードは「アンラーニング」。一度自分の常識を壊さなければいけません。OSの書き換えと同じです。バージョンアップには多少の時間がかかりますし、切り替え直後は使いづらい。だからと言って30年同じバージョンのOSを使っていたら、新しいビジネスを生み出せるはずがありません。

越境学習による学びの効果を大きくするために必要なことは何でしょうか。

問題意識を持っているかが鍵です。ポスト・イットが生まれた背景をご存じでしょうか。3M社の科学者が教会で聖歌隊をしていたのですが、小さな紙切れをしおり代わりにして、讃美歌(さんびか)のページに挟んでいました。ところが、いざ讃美歌を歌おうとしたところ、そのしおりが滑り落ちてしまったのです。そこで「ページが破れるほどの粘着力はないが、紙にしっかりと付くしおり」をひらめき、世界中で使われるポスト・イットが誕生したのです。このイノベーションはほとんど偶然ですが、科学者が問題意識を持たなければ、ポスト・イットは生まれませんでした。

私たちは、参加者のアンテナの精度を高めるために、越境学習前にセッションを行っていますが、問題意識を持っているかどうかで見える景色が変わってくるからです。

最後に、人事の方へのメッセージをお願いします。

人事の方々が、学び方のスタイルを本気で考えなければいけない時代になっています。基本・基礎はいつの時代も重要なので、仕事にひもづいた研修はこれまで通り実施する必要があります。ただし、それだけにとどまらず、「価値観を揺るがす体験の創出」を人材育成に関わる方々にはもっと意識してほしいと思っています。それは、「越境学習」でなくても構いません。組織の中に「越境的な雰囲気」を作ってほしいのです。

今、大企業の若手の離職率はどんどん上がっています。以前なら新卒採用でほとんどの人材をまかなえていた企業でも、キャリア採用率が劇的に上がっていると聞きます。人材の流動化の時代に突入している今、社外の人と関わりを持ち、社内に異質性を作ることが重要ではないでしょうか。

副業を受け入れる、チームにフリーランスを迎える、社員を出向させる。数ヵ月ごとに新しい人がチームに入ると、それだけで雰囲気がかわってきます。チームの常識も書き換えられます。職場に越境のムードを作ることを、人事の方にぜひ提案したいですね。

張 士洛さん 株式会社日本能率協会マネジメントセンター 代表取締役社長
会社情報

1942年創立の一般社団法人日本能率協会(JMA)から1991年に分社化し、創立。研修や通信教育等による人材育成支援と、ビジネス書や資格書、教育書などの出版を柱とした「学びのデザイン事業」、NOLTYブランドを中心に手帳等を扱う「時間〈とき〉デザイン事業」の2つを事業ドメインとして展開しています。JMAMは「成長に、寄り添う。」をパーパスとして掲げ、だれもが成長する喜びを知り、人生を自分らしく豊かにできる社会をつくるために、一歩踏み出す人に寄り添い、パートナーとして伴走することを約束します。

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