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【ヨミ】カイゴリショク 介護離職

家族などの介護を理由に、働き盛りの社員が会社を辞めることを「介護離職」と言います。団塊世代の高齢化などで親の介護に直面する子世代のビジネスパーソンが急増する中、介護離職を企業の深刻な経営リスクと捉え、支援制度の整備や職場環境の改善に乗り出す動きが広がっています。
(2012/1/16掲載)

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介護離職のケーススタディ

“ケアメン”急増で企業も個人もリスク拡大
支え合う企業風土の醸成が支援のカギに

総務省の就業構造基本調査によると、2006年10月から翌年9月までの1年間に、介護が理由で離職・転職した人は約14万5,000人。5年前と比べると1.6倍に増えました。しかもその6割が、企業の要職に就く人が多い40~50歳代の中高年層で、特に男性の増加が目立ちます。介護といえばかつては“嫁の役目”という風潮がありましたが、最近は非婚化・晩婚化の影響から親と同居する独身の男性介護者も多く、彼らのことを“ケアメン”と呼ぶそうです。しかし高齢の親を独力で支えながら、介護と会社での重責を両立させることは想像以上に難しく、かといって離職すれば介護の費用負担に収入減が重なり、経済的に追い込まれてしまうケースも少なくありません。

介護離職の背景には、仕事との両立に役立つ使い勝手のいい介護サービスが乏しいことに加えて、日本企業に特有の、長時間勤務や仕事上の負担の偏りを当然視する職場環境が挙げられます。国の支援策として、家族の介護を理由に通算93日休める介護休業制度が認められているにもかかわらず、取得率が08年度で0.06%と、きわめて低い水準に止まっているのもそうした企業風土の表れと言えるでしょう。内閣府の男女共同参画会議の専門委員を務める東レ経営研究所研究部長の渥美由喜さんは「中高年の社員は、私的な事情を職場に持ち込むことを“悪”と考えがち。昇進に響くと考える社員もいる」と話します。

まもなく親の介護に直面する団塊ジュニア世代は多くの企業において長期にわたる人員削減や教育コスト抑制の影響を受けているため、組織内での代替要員の確保は容易ではありません。経験やノウハウを持った人材の離職が相次ぎ、その穴が埋まらなければ、現場のモラールダウンを招いてしまいます。

今後ますます大きくなる“介護リスク”に備えるため、一部の企業では、仕事と介護の両立を支援する独自の取り組みが始まっています。たとえば大手商社の双日は11年から国の介護休業制度とは別に、有給の介護休暇を年間85日取得できる制度や短時間勤務を最長3年間適用できる制度などを導入しました。日本ユニシスでは、介護休業は家族1人につき通算1年まで認められ、その他に有給休暇を積み立てて介護に利用することも可能です。旭化成でも、始業・終業時をずらすフレックスタイム制度を、介護中の社員はより柔軟に使えるよう改めました。

花王では、要介護の家族を抱える社員の比率を試算したところ、08年は12人に1人でしたが、23年には5人に1人に急増することがわかりました。これを受けて、同社では全社員を対象に介護セミナーを開催。同社人材開発部門によると「介護は誰にでも起こり得る。互いに支え合う企業風土を創りたい」とのこと。制度がいくら整っていても、それを積極的に使う意識と、使わせる職場環境が伴っていなければ意味がないのです。

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