従業員の破損・弁償について
いつも参考にさせていただいております。
先日、従業員が屋外で作業をしていた際、手をすべらせて木材を他の従業員の自家用車にぶつけ、傷をつけてしまいました。車の修理の見積は約8万円で、その修理代は一旦は会社が支払いますが、破損させた従業員にも一部負担をしてもらいたいと会社側は言います。破損させた従業員に修理代を負担させることは可能でしょうか。
また、修理代を請求する際にはどのくらいの金額を請求することが可能でしょうか。
賃金からの天引きはいたしません。
ご教授いただけますと幸いです。
宜しくお願い致します。
投稿日:2025/06/23 10:09 ID:QA-0154298
- 総務担当Aさん
- 東京都/精密機器(企業規模 11~30人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
従業員に修理代の一部を負担させることは、一定条件のもとで可能です。
ただし、その負担額は「損害の公平な分担」の範囲内に限られます(全額請求はほぼ不可能)。
賃金からの天引きを行わず、本人の自由な意思による支払いであれば、違法性は低いですが、同意書等の整備が望ましいです。
2.法的根拠と考え方
◆ 判例の基本原則:「信義則上相当な範囲での賠償責任」
労働者が業務中に会社や他人に損害を与えた場合でも、
過失があっても直ちに「全額賠償義務を負う」わけではありません。
有名な最高裁判例(川崎郵便局事件/最判昭和51年7月8日)によれば:
労働者の行為によって損害が発生したとしても、損害の公平な分担という観点から、
その賠償責任は事情に応じて限定されるべきである。
つまり、下記の要素を総合的に考慮して、「一部のみ負担」などの妥当な範囲での請求しか認められません。
3.負担割合を判断する要素
以下の要素をもとに、負担割合を判断します。
項目→内容
過失の程度→故意か、重過失か、軽過失か(今回:おそらく軽過失)
業務との関連性→業務中の事故であれば、会社の使用者責任も考慮されます(本件:業務中の作業)
使用者の指導・教育状況→作業手順や安全管理が徹底されていたか
損害額→社員の給与に比して過度な請求とならないか
損害保険の有無→会社の損害保険でカバーできるかどうか
4.実務上の落としどころ
一般的には、「全額」や「半額」の請求は高すぎるとされ、負担割合は1~3割程度が妥当な水準とされています。
例えば、8万円の修理費に対して、
軽過失(不注意)で業務中に起こった事故であれば、1~2万円程度
指導不足や防止策の未整備があれば、さらに減額
というような金額が、裁判所でも許容されやすい範囲です。
5.実際に請求する場合の注意点
(1)必ず「本人の自由意思」による支払いとする
→ 強制や圧力があると「不当な損害賠償の強要」になりかねません。
(2)支払い合意書を作成する
以下のような内容を簡単に書面化しておくことをおすすめします。
《支払い合意書の例》
支払い合意書
私は、令和○年○月○日、業務中に誤って同僚の車両を損傷させたことについて、その修理費用の一部として、○○円を負担することに同意し、以下の通り支払うことを申し出ます。
1. 負担金額:○○円
2. 支払方法:令和○年○月末日までに現金にて会社へ支払う
3. この支払いは自らの自由意思により行うものであり、会社からの強制や不利益な取り扱いは一切ないことを確認する
令和○年○月○日
従業員氏名:_______(署名)
6.まとめ
項目→回答
従業員に修理代を請求できるか→一部なら可能(本人の自由意思による)
請求額の目安→全額請求不可、1〜3割程度が現実的(例:8千円~2万円)
賃金天引き→労働基準法24条違反となるため不可(本人同意でも不可)
手続きの推奨→書面で同意書作成、圧力のない形で任意支払い
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/06/23 10:50 ID:QA-0154300
相談者より
迅速なご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/06/23 11:22 ID:QA-0154302大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
まず、通常起こり得る過失によって生じた損害については、
従業員がその全額を賠償することはございません。
従業員に故意や過失がある場合は、会社が労働者に損害賠償を請求すること
自体は違法ではないとされておりますが、会社は労働者の働きによって、
利益を上げており、業務上のリスクを労働者にすべて負担させることは、
不公平であり、労働者への責任追及が制限されるケースは多いものです。
本件は、手をすべらせてとのことでございますので、大きな故意・過失
が認められない限りは、修理代の本人負担は難しく、修理代の請求は、
不当な損害賠償請求と見なされるリスクが高いものと思案いたします。
詳細は、損害賠償問題に精通した弁護士へご相談いただくことをお勧め
いたします。
投稿日:2025/06/23 10:57 ID:QA-0154301
相談者より
迅速なご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/06/23 11:23 ID:QA-0154303大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、文面内容を拝見する限りですと、当人の過失による破損ですので、修理費用を請求する事自体は可能といえます。
しかしながら、業務中の出来事であれば会社にも使用者としての責任がございますし、会社の方がかなり多く負担されるのが一般的な対応といえます。
従いまして、明確な法的基準まではございませんが、車の修理代金が約8万円でしたら、多くても¥1万程度にとどめておかれるのが妥当といえるでしょう。
投稿日:2025/06/23 11:52 ID:QA-0154308
相談者より
迅速なご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/06/23 13:16 ID:QA-0154312大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
一般論ではなく総ては事案の内容次第で、どこまで過失かの判定によります。
業務上予想し得ない事故であれば過失にはならないでしょう。
その社員のミスで通常の作業指示に反するものだったとなればかなり責任は大きくなりますので、その辺りを冷静に判断する必要があります。
不当に社員の責任追及をするのはリスキーなので、やめた方が良いでしょう。
投稿日:2025/06/23 12:39 ID:QA-0154309
相談者より
迅速なご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/06/23 13:17 ID:QA-0154313大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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