休職規定から見た普通解雇の有効性に関して
いつもお世話になっております。
つい先日、正社員として採用した勤続1年未満(※9か月)のある従業員が、「個人的な事情により、次いつ出勤できるか分からない。」と言ってきました。その者は今現在、私用欠勤をおよそ1か月半以上継続しております。
弊社の場合、就業規則の中で「休職期間」に関しまして、「会社は,従業員が次の各号の一に該当した場合,休職を命じることがある。ただし,試用期間中を含む勤続1年未満の者に対しては,原則として休職の適用を除外するものとし,(以下、略)」と明記しております。したがいまして、当該ケースを「休職」として処理する意思は、会社としては全くございません。
この場合の対処方法といたしまして、一番良いのは、雇用契約が履行できない訳ですから、本人に「退職届(=辞職届)」の提出を促し、納得してもらった上で「自己都合退職」として処理することだと思います。しかし、もし仮に、本人が自ら「退職届」を提出するのを拒んだ場合、次のように手続きを進めていくというやり方で、問題ございませんでしょうか。そして、次のような場合、「普通解雇」が成立する蓋然性は高いと言えますでしょうか。
1. 本人と打ち合わせの場を設け、「合意退職」を促し、当該届出書式に署名してもらう。
2. (1が駄目であった場合)再度、打ち合わせの場を設け、今一度、退職勧奨を行った上で、もし仮に、それでも上手く事が運ばない場合は、「普通解雇」として「解雇予告通知」を行う。
ご多用の中、誠に恐縮でござますがご教授賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。
投稿日:2025/06/11 15:38 ID:QA-0153841
- とっちゃさん
- 長野県/精密機器(企業規模 101~300人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答させていただきます。
まず、個人的な事情によりとのことですが、明確な理由は確認済みでしょうか?
また、1カ月半以上の欠勤が続いているとのことですが、欠勤期間中に会社として
は何かしらの勧告や注意喚起は行っておりますでしょうか?
上記がされていないようであれば、まずは上記の工程を踏んでいたただいた方が
宜しいかと存じます。
勿論、話合いの中で、本人から退職の意思表示がなされれば、そのまま事務的に
退職手続きを進めれば良いですが、懲戒規定を適用した解雇ということであれ
ば、きちんと工程を踏んでいただくことをお勧めいたします。
具体的には、欠勤理由を確認した上で、本人の弁明の機会も与える
欠勤が続く場合は懲戒対象となる旨の勧告・注意喚起を複数回行う
上記の工程を踏みませんと、不当解雇問題に発展する可能性が高まります。
なお、解雇予告手当を支払い解雇を行うことと、
解雇が不当解雇に該当しないか否かは別問題となりますので、注意が必要です。
注意喚起を行っているにも関わらず、勤怠不良が改善されなければ会社としては
懲戒解雇規定にあてはめ、解雇することは差支えございません。
勤怠不良は、懲戒理由として、広く認められております。
投稿日:2025/06/11 16:53 ID:QA-0153851
相談者より
この度は、大変お世話になります。
ご多用の中、早速ご返信いただきまして、感謝申し上げます。
当該従業員につきましては、実は試用期間原則3か月間の所、ご指南の通りいわゆる勤怠不良により、6か月間に延長した経緯が、過去にございます。弊社の場合、新卒・中途双方とも書式内容は若干異なるのですが、入社時フォローアップシートを用意し、本人の様子を直属の上長より2週間間隔で観察・報告してもらう制度を運用しております。目的は、何か問題点が生起した場合、速やかに解決し、早期離職を防止する為です。
これを基に、当該従業員とは複数回、過去に面談の機会を設け、頻繁に欠勤をしていることについて、詳細は割愛いたしますが、事情聴取しております。また、試用期間延長につきましても、本人自ら「これまでの経緯からして、それも当然のこと」として了承を得た上で行いました。
ただし、何分ただでさえ気を付けて対処しなければいけない退職にまつわる事柄のうち、たとえ“懲戒”ではなく"普通”と言えども、歴とした「解雇」であります故、この度ご教授賜りました通り、今一度本人に対し弁明の機会を設けた上で、慎重に対処して参る所存でございます。
大変参考になり、とても有難く存じます。どうもありがとうございました。
投稿日:2025/06/12 08:29 ID:QA-0153870大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.ご相談の要旨整理
勤続9か月の正社員が、私的事情で1か月半以上連続して無断で欠勤中
就業規則では勤続1年未満に対する「休職」は原則適用除外
会社としては「休職」は認めない方針
理想は本人に自己都合退職届の提出を促す
応じない場合は、退職勧奨・普通解雇を視野に入れている
2.法的整理:このケースは「普通解雇」事由に該当するか?
判断基準(判例実務)
労働契約法第16条(解雇の合理性・相当性)に基づき、以下が問われます:
要件→説明
客観的合理的理由→業務に全く従事しておらず、復職の見込みも不明であること(=雇用契約の履行困難)
社会通念上相当→本人と何度も連絡・説得を試みており、本人の非協力姿勢が続いている場合、認められる余地あり
→よって、解雇が認められる蓋然性は比較的高いと考えられます。ただし、慎重な手続きと証拠保全が不可欠です。
3.ご提案された手順の妥当性について
手順1:合意退職(退職勧奨)をまず試みる
→適切・推奨されるステップです。
勤務の意思がない旨を本人が明言している場合、自己都合退職での円満解決が第一選択肢です。
面談記録や連絡履歴(メール・文書)を残しておくことで、後日のトラブル防止になります。
手順2:解雇手続きへ(解雇予告通知を交付)
→実務上の選択肢として妥当です。
ただし、以下の点に留意してください:
【A】解雇理由書の整備
解雇の「客観的理由・社会通念上の相当性」を説明できるよう、
本人の発言や連絡記録を整理しておく(例:「次にいつ出勤できるか分からない」等)。
【B】解雇予告または解雇予告手当の支給
解雇の30日前に予告するか、平均賃金30日分の解雇予告手当の支給が必要です(労基法第20条)。
よほど悪質なケース(例えば「無断欠勤」「行方不明」など)でなければ、即時解雇は難しいです。
【C】解雇通知書・理由書を文書で交付
会社が交付を拒んだりせず、文書できちんと説明することが必要です(労基法22条2項)。
4.補足:放置した場合のリスク
長期間の無出勤状態を「自然退職」や「みなし退職」として一方的に処理するのは、法律上原則認められません。
就業規則で「〇日間無断欠勤した場合は退職とみなす」と定めてあっても、退職の意思表示が確認できない限り、自己都合退職処理はリスクが高いです。
5,最終的な実務対応フロー(推奨)
ステップ→内容
1.本人と面談・文書で再度意思確認(録音・記録を残す)
2.出勤意思がない・連絡がとれない場合は、退職勧奨文書送付(配達証明付)
3.応じない場合は、解雇通知書(普通解雇)+理由書を交付
4.解雇予告手当(30日分)または予告期間の設定
5.解雇処理後、労基署・ハローワーク対応
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/06/11 17:02 ID:QA-0153853
相談者より
この度は、大変お世話になります。
ご多用の中、とても詳細かつご丁寧にご指南賜りましたことに、心より御礼申し上げます。
ご教授賜りましたご記載の内容は、当該事案のみならず、弊社における今後の退職にまつわる実務に関しまして、まさしく参考書として、常に手元に置かせていただこうと存じます。
大変有意義なご指導、誠にありがとうございました。
投稿日:2025/06/12 08:44 ID:QA-0153875大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
休職は解雇回避措置となりますので、
休職対象外であれば、解雇の対象となります。
労務提供できないわけですから、普通解雇で一般的には問題ありませんが、
根拠は就業規則の規定になりますので、解雇規定等を確認してください。
個人的な事情により、次いつ出勤できるか分からない。と言ってきて、その者は今現在、私用欠勤をおよそ1か月半以上継続しているなどという状況であれば、
働く意思がありませんので、速やかに、解雇すべきでしょう。
投稿日:2025/06/11 17:15 ID:QA-0153856
相談者より
いつも大変お世話になっております。
この度もご多用の中、早速ご返信賜りましたこと、心より御礼申し上げます。
先生からいただきましたご指南の通り、私個人といたしまして、今一度、「就業規則」の重要性を再認識させていただく良い機会となり、大変貴重な勉強が出来たと思っております。この度先生よりご教授賜りました内容を基軸として、瑕疵のないよう、慎重に対処して参る所存でございます。
この度は、誠にありがとうございました。
投稿日:2025/06/12 08:55 ID:QA-0153876大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
解雇へのハードルが高いことは事実ですが、それはいかなる理由でも解雇が不可能という意味ではありません。雇用契約に基づいて労務を提供する義務を負っている以上、勤労の義務が社員にはあります。それに対し勤怠不良や個人事由で欠勤など労務提供ができないのであれば、契約継続はできなことに合理性が出ます。
とはいえソフトランディングを目指して退職届を出してもらうのは現実的な判断でもあります。しかしそれに応えないのであれば、粛々と就業規則に沿って対応し、懲戒対象であれば、懲戒処分と進むことになります。
連絡・交渉の過程もすべて記録し、裁判などにエスカレートしても十分合理性を証明できることを常に意識して、毅然と対応するべきでしょう。
投稿日:2025/06/11 23:39 ID:QA-0153866
相談者より
いつもお世話になっております。
ご多用の中、今回におかれましても早急にご返信賜りましたこと、心より御礼申し上げます。
当該案件の今後の対処に関しまして、いただいたご指南によって、自信を深めることが出来たと認識しております。
大変参考になりました。どうもありがとうございました。
投稿日:2025/06/12 10:45 ID:QA-0153879大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
労働契約法
【御相談】
もし仮に、本人が自ら「退職届」を提出するのを拒んだ場合、次のように手続きを進めていくというやり方で、問題ございませんでしょうか。そして、次のような場合、「普通解雇」が成立する蓋然性は高いと言えますでしょうか。
1. 本人と打ち合わせの場を設け、「合意退職」を促し、当該届出書式に署名し
てもらう。
2. (1が駄目であった場合)再度、打ち合わせの場を設け、今一度、退職勧奨
を行った上で、もし仮に、それでも上手く事が運ばない場合は、「普通解
雇」として「解雇予告通知」を行う。
【回答】
(1)解雇の適否については、労働契約法第16条において、「解雇は、客観的に
合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権
利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。
(2)このうち、「客観的に合理的な理由を欠き」に関しては、1)就業規則で
定められている「解雇事由」のうちどれに該当するのか、2)将来にわたっ
て存続すると考えざるを得ないのか、3)解雇を回避するために手を尽く
したのか(例外的に休職を適用できないのか)、等について検討する必要が
あると認識されます。
(3)また、「社会通念上相当であると認められない」に関しては、本人の状況
(個人的な事情、欠勤前の勤務態度等)、過去の処分とのバランス、会社側
の対応等から見て、解雇はあまりに過酷ではないか、という観点から検討す
る必要があると認識されます。
「退職届を提出するのを拒んだ場合の手続き」についても、当該検討のな
かで取り上げられるものと考えられます。大変丁寧なお取り組みであると存
じ上げます。
投稿日:2025/06/12 07:59 ID:QA-0153868
相談者より
この度は、大変お世話になっております。
ご多用の中、早急にご教授賜りましたこと、心より感謝申し上げます。
先生より「大変丁寧な取り組み」とのお言葉を頂戴いたしまして、とても励まされる思いでございます。とても有難く存じます。
この度は、誠にありがとうございました。
投稿日:2025/06/12 10:51 ID:QA-0153880大変参考になった
プロフェッショナルからの回答

- 小島 康
- ダン社会保険労務士事務所
訴訟等のリスク低減策をご提案します
ご質問の件、不当解雇として争われる場合のリスク低減のため。退職勧奨の前に懲戒処分をすることをお勧めしますので、ご提案の対応1、2の前に行うべき推奨プロセスをa~cとして追記させていただきます。
a. 「個人的な事情」だけでは欠勤に正当な理由がなく、債務の本旨に従った労務提供がないと判断せざるを得ないため「個人的な事情」の具体的な内容を申し出ること、具体的な内容がなお正当な理由と判断できない場合又は具体的な内容の申し出がない場合は正当な理由のない欠勤として懲戒処分を検討せざるを得ないこと、を注意書として交付します。《「正当な理由のない欠勤」との懲戒事由が就業規則にない場合でも、労働契約の債務不履行として「前各号に準ずる行為があったとき」のバスケット条項を利用することが可能だと思います》
b. 正当な理由と判断できる申し出がない又は申し出そのものがなく欠勤が継続している場合は、弁明機会を付与するとともに就業規則所定の手続があれば当該手続を履践したうえで、懲戒処分(けん責又は出勤停止)とします。
c. 懲戒処分後も欠勤を続ける場合、正当な理由のない欠勤を続ければ解雇とせざるを得ない旨警告します。
1. 本人と打ち合わせの場を設け、「合意退職」を促し、当該届出書式に署名してもらう。
2. (1が駄目であった場合)再度、打ち合わせの場を設け、今一度、退職勧奨を行った上で、もし仮に、それでも上手く事が運ばない場合は、「普通解雇」として「解雇予告通知」を行う。
すでに欠勤が1カ月半以上継続しているとのことで、もう少し早めに対応を始めるのがベターでしたが、まだ遅くありませんので、会社としてやるべきことはやったという状態を作り出すことが肝要かと思います。また、懲戒解雇の場合、労働者の履歴に傷がつくこともあり争われるリスクが高まることと、弁明機会付与及び懲戒手続の履践が必要となることから、ご提案のとおり普通解雇とするのが妥当かと思います(入社直後なので退職金支給の是非も問題にならないかと思います)。正当な理由のない欠勤は、何らかの表現で普通解雇事由に含まれていると思いますが、含まれていない場合でも「前各号に準ずる事由があるとき」のバスケット条項を利用することは十分可能だと思います。
投稿日:2025/06/12 08:11 ID:QA-0153869
相談者より
この度は、大変お世話になっております。
ご多用の中、ご返信賜りまして、心より御礼申し上げます。
会社が行う法律行為に対し正当性を得る為のよい意味での"クッション”として、解雇の前段に「懲戒処分」を間に挿入することの重要性をご教授いただいたことは、大変意義深いものであると認識致しました。
また、先生よりご指南賜りました次の2点につきまして、決して外すことのないよう可能な限り十分に留意しながら、事に当たりたいと存じます。
・会社としてやるべきことはやったという状態を作り出すこと。
・「懲戒解雇」ではなく、「普通解雇」として対処すること。
どうもありがとうございました。
投稿日:2025/06/12 11:01 ID:QA-0153881大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
問題が解決していない方はこちら
お気軽にご利用ください。
社労士などの専門家がお答えします。