諭旨退職時の退職金について
いつもお世話になり、ありがとうございます。
過去の勤怠不良(欠勤・遅刻)により、「けん責」、「出勤停止3日」の2度の懲戒処分を受けている社員に対し、2度目の処分以降も突発休暇・遅刻が頻繁にあり、職場メンバーからも不平不満(職場の一員としてあてにならない、突発休暇後に謝罪もなく、申し訳ないとの様子も見られない等)が寄せられていることから、勤怠不良として懲戒処分(懲戒解雇or諭旨退職)とすべく検討しています。
懲戒解雇であれば解雇予告手当も視野に入れ対応しますが、当該者が20歳代と若いので、将来を勘案し「諭旨退職」を基本に考えています。しかしながら、就業規則上に諭旨退職時の退職金が明記されていないので、何を基準に検討すればよいのか分かりません。自己都合退職金を全額支給することも考えられますが、状況に鑑み避けたい、との思いです。如何に考え対処すれば良いのかご教示いただきたく、よろしくお願いいたします。
なお、2度目の処分申渡し書に「今後も突発休暇・遅刻・欠勤を繰り返す等の勤怠不良の改善がみられない場合は、懲戒解雇処分もあり得ること」を申し添え、本人も署名・押印しています。
投稿日:2025/05/22 13:02 ID:QA-0152736
- サ推室さん
- 愛知県/建設・設備・プラント(企業規模 301~500人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
懲戒解雇や解雇の場合の退職金についても、
どういう扱いとするのか明記していないケースも少なくありません。
退職金についての扱いは会社のルールで問題ありませんが、
諭旨退職の場合にについて、退職金規定に何も記載がないと不支給や減額支給、一部支給の根拠がないということになりますので、本人の合意がない限り、自己都合扱いに準じて支給するということになってしまいます。
投稿日:2025/05/22 18:44 ID:QA-0152755
相談者より
ご教示ありがとうございました。参考にさせていただきます。
投稿日:2025/05/27 10:34 ID:QA-0153007参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.現状整理
(1)過去の懲戒処分歴
- 勤怠不良により「けん責」→「出勤停止3日」の段階を踏んで処分済み。
- 2度目の処分時に「再発時は懲戒解雇もあり得る」と書面で明示・本人署名済み。
(2)2度目の処分後の状況
- 引き続き突発休暇・遅刻を繰り返している。
- 職場内からの不平不満も顕著(反省や謝罪の姿勢も見られない)。
- 依然として改善が見られない。
(3)会社の意向
- 本人の将来を考慮し、懲戒解雇ではなく「諭旨退職」を基本方針にしたい。
- ただし、退職金の取り扱いが就業規則上明記されておらず悩んでいる。
- 自己都合退職金の全額支給は避けたい。
2.論点整理と対応方針
(1) 懲戒処分としての妥当性
- 過去に懲戒処分歴があり、段階的指導・警告がされている。
- 書面による警告済みで再発した事実もあるため、「懲戒解雇」に進む要件は満たしていると考えられる。
- 懲戒解雇を正当に行える環境にはある(労基署から不当解雇とされにくい)。
(2) 諭旨退職の取り扱い
- 諭旨退職は、本人の同意を前提にした「懲戒処分の一環」としての退職。
- 通常、懲戒解雇相当の事案において、「名誉や将来を考慮して本人が退職に応じる」という形で用いられます。
- 会社の指導によって本人が退職を申し出た形(自己都合扱い)にするケースもありますが、実態は「諭旨退職」です。
(3) 退職金の取り扱い
就業規則に以下の内容があるかを確認してください。
内容→対応方法
懲戒解雇の場合、退職金不支給または減額支給があるか→ ある場合は、それを根拠に判断可
諭旨退職に関する記載があるか→ 明記なしとのことなので、裁量の余地あり
現時点で就業規則に諭旨退職に関する明記がない場合→
懲戒解雇と同様の理由で退職を促す以上、退職金支給の減額または不支給も一定の合理性があります。ただし、明確な規定がない場合はトラブルリスクがあるため、本人との間で合意書を作成することを強く推奨します。
例:
「本件は会社の指導によるものであることを本人が理解し、自己都合として退職することに同意する。ただし、退職金については会社規定に基づき一部減額されることを本人も了承する」等。
3.対処の流れ(案)
(1)ステップ1:本人との面談
勤怠状況や過去の処分内容、今回の再発について改めて事実確認。
改善が見られないことから、本来は「懲戒解雇」相当と認識している旨を説明。
ただし、本人の将来を考慮し、諭旨退職の道を提示する意向を伝える。
(2)ステップ2:同意の取得
諭旨退職の意向を文書で確認(合意書または退職届)。
退職金の扱いについても「就業規則の規定に準じて支給額を調整する」旨を記載。
(3)ステップ3:文書整備
諭旨退職の経緯・理由を社内記録として残す。
本人の同意を得た退職届・合意書類を保管。
4,退職金支給の考え方(参考)
退職区分→退職金支給
自己都合(通常)→全額支給
諭旨退職(懲戒性あり)→減額支給・不支給可(合意が必要)
懲戒解雇→原則不支給(就業規則に記載あれば)
5.最後に:就業規則の見直しについて
今後のために、以下の点を明記しておくとトラブル防止になります。
諭旨退職の定義と手続き
諭旨退職時の退職金の取り扱い(例:会社が定める基準により減額・不支給可)
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/05/22 20:14 ID:QA-0152766
相談者より
論点の整理や対応例等々、様々な場面に区分けした事例もご教示いただき、大変参考になりました。どうもありがとうございました。
投稿日:2025/05/27 10:38 ID:QA-0153008大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、諭旨退職というのは、一般的に本来は懲戒解雇に当たる事由でありながら事情を考慮して自己都合での退職扱いにされるものになります。
本来であれば、諭旨退職の措置については就業規則上の定めに基づいて行われるものになりますが、そうした規定がない場合ですと、退職金を引き下げる明確な根拠が無いことからも、通常の自己都合退職の場合と同様の退職金を支給されるのが妥当といえるでしょう。
投稿日:2025/05/22 21:45 ID:QA-0152773
相談者より
ご教示ありがとうございました。参考にさせていただきます。
投稿日:2025/05/27 10:39 ID:QA-0153009参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
諭旨退職は、一定期間内であれば、自己都合退職ができる懲戒処分です。
退職金の支払いにおいては、会社規程上、諭旨退職の場合の減額措置等が、
規定化されていなければ、減額措置等を行うことは、トラブルに発展する
可能性が高い為、会社としては避けていただくべきでしょう。
社員の将来を勘案している点は非常に素晴らしいことだと思いますが、
現状、諭旨退職=退職金は支払う となりますので、
上記も踏まえ、改めて、懲戒処分をご判断いただければと思います。
投稿日:2025/05/23 08:26 ID:QA-0152791
相談者より
ご教示ありがとうございました。参考にさせていただきます。
投稿日:2025/05/27 10:41 ID:QA-0153010参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
御社就業規則に懲戒解雇を退職金の不支給事由として規定されているとの前提で申しますと、規定すること自体は特に問題はありませんが、ただし、裁判例によれば、退職金の不支給は「永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な背信行為があったこと」が要件とされています。
つまり、たとえ就業規則に「懲戒解雇された者については退職金を支給しない」旨の規定を設けている場合であっても、懲戒解雇であれば常に退職金を支給しないとすることができるというものではなく、個別具体的事案に応じて「永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な背信行為」があったか否かを検討する必要があるということになります。
本来であれば懲戒解雇として処分すべきところ、当該者が20代と若いので将来を勘案し、いわゆる温情措置としての「諭旨退職」とする以上、一連の勤怠不良に「永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な背信行為」があったか否かは検討する必要はなく、退職金も含めての温情措置であってもいいのではと考えます。
就業規則に諭旨退職時の退職金が明記されていないのであれば、退職金を減額する明確な根拠もございませんので、自己都合退職に準じて全額支給とすることでよろしいのではないでしょうか。
当人の将来を考えるのであれば、ここは割り切るしかないでしょう。
投稿日:2025/05/24 10:29 ID:QA-0152870
相談者より
温情措置としての「諭旨退職」に関する捉え方をご教示いただき、ありがとうございました。参考にさせていただきます。
投稿日:2025/05/27 10:44 ID:QA-0153011大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
著しい背信行為
以下、回答させていただきます。
(1)諭旨退職は、一般に、使用者が労働者に退職を勧告するものの、あくま
で、本人の願い出によるという形で退職するものです。このため、退職金を
不支給(減額)とするためには、就業規則上の根拠が必要になると考えられ
ます。
しかし、本件の場合、「就業規則上に諭旨退職時の退職金が明記されてい
ない」とのことです。退職金の不支給(減額)は困難であると考えられま
す。
(2―1)一方、懲戒解雇に伴う退職金の不支給(減額)については、以下の旨
の判例(宮城県県立高校教諭事件 最高裁 令和5年6月27日判決)があ
ります。
● 本件規定は、当該退職者の勤続の功を抹消し又は減殺するに足り
る事情があったと評価することができる場合に、退職手当支給制限
処分をすることができる旨を規定したものと解される。
(2-2)また、勤怠不良に関連したものとして、以下の裁判例(東芝事件 東
京地裁 2002年11月5日判決)があります。
● 社員に懲戒解雇事由がある場合、原則として退職金を支給しない
が、勤続満10年以上の者について情状により自己都合退職金の50パ
ーセントの限度で退職金を支給することがあると規定する。
● 退職金が一般に賃金の後払いの性質を有することからすると、退
職金を支給しない、又は減額することが許されるのは、従業員にそ
の功労を抹消又は減殺するほどの信義に反する行為があった場合に
限られると解される。
● 何らの配慮をすることなく無断で突然職場を放棄するのは、重要
な職責を担う管理職として無責任といわざるを得ない。したがっ
て、原告の行為は、その功労を減殺するに足りる信義に反する行為
といわざるを得ない。
(2―3)上述の判例や裁判例等に基づけば、退職金の不支給(減額)について
は、以下のように考えられます。
● 懲戒解雇によって直ちに退職金の不支給(減額)が認められると
いうものではない。
● 退職金が一般に賃金の後払いの性質を有することからすると、そ
れまでの勤続の功を抹消し又は減殺するに足りる事情があったと評
価することができる場合、具体的には、信義に反する行為があった
場合や著しい背信行為があった場合には、不支給(減額)とするこ
とができる。
(2-4)本件、当該者は20歳代とのことであり、退職金についても功労報償的
な性質というよりも、賃金の後払いとしての性質が強いように思われま
す。
また、「懲戒解雇であれば解雇予告手当も視野に入れ対応します」と
のことですが、労働基準法上の「労働者の責に帰すべき事由に基づいて
解雇する場合」に該当するため解雇予告手当は支給しないということは
お考えならないのでしょうか。そうでないならば、整合性という観点か
らみれば、退職金の不支給(減額)要件とされる「勤続の功を抹消し又
は減殺するに足りる事情があった」「信義に反する行為があった」「著
しい背信行為があった」とまで言えるのか定かではないようにも思われ
ます。
以上の範囲でみる限り、諭旨退職とすることが有力ではないと考えら
れます。
投稿日:2025/05/24 21:11 ID:QA-0152884
相談者より
過去の同種判例もご提示いただき、感謝申し上げます。判例も参考にして検討したいと思います。
投稿日:2025/05/27 10:47 ID:QA-0153012大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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