異なる事業所の就業規則の周知義務について
お世話になります。
就業規則の周知義務についてご相談です。
当社は事業所毎に異なる就業規則を作成、届け出て運用しております。
事業所A:本社(基幹社員のため高待遇・高賃金)
事業所B~E:支店(Aと比較して低待遇・低賃金)
就業規則の周知方法については、個々にPCを貸与し、イントラネットでアクセス権限を付与しておりますが、事業所Aの従業員には支店管理をするため、事業所A~Eの就業規則のアクセス権限があり、事業所B~Eの従業員には事業所Aの就業規則のアクセス権限は無く、各事業所のみのアクセス権限があります。
この度、事業所B~Eの一部の従業員から、事業所Aの就業規則の開示を求められましたが、断ったところ、就業規則の周知義務違反ということで追及されております。経営者は、事業所Aの給与体系は事業所B~Eと比較して著しく高く、事業所B~Eの従業員に開示することを躊躇しております。悪く言えば会社の就業規則の一部を隠している形です。
事業所Bの従業員の言い分としては、選抜試験を通じて事業所Aに配置転換する可能制もあり、開示しないと情報を得られないことや、そもそも事業所Aは事業所B~Eの就業規則を閲覧できるのに、事業所B~Eの従業員は事業所Aの就業規則を隠されているのはおかしい、就業規則を個別に作成しても、就業規則の概念は個々ではなく、そのすべてをまとめて就業規則なんだだと主張しています。
ユニオンに相談もしている動きもありご相談です。
宜しくお願い致します。
投稿日:2025/03/27 22:15 ID:QA-0150132
- 監査主査さん
- 東京都/不動産(企業規模 101~300人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、就業規則に関しましては、会社単位ではなく労働基準法上の事業場単位で作成され周知する義務が発生するものになります。
従いまして、個々の事業所毎に別の就業規則が作成及び適用されていれば、他の事業所の従業員にまで周知する法的義務迄は生じませんし、隠しているといった事には通常該当しないものといえます。
但し、選抜試験を通じて他の事業所に配置転換する可能性が有る場合ですと、少なくとも選抜試験を受ける予定の従業員に関しましては当然ながら事前に当該事業所の就業規則を周知される義務がございますし、実際にそうした配置転換が度々なされているという事であれば、やはり全従業員に対して周知されておかれるのが妥当といえるでしょう。
投稿日:2025/03/28 09:22 ID:QA-0150144
プロフェッショナルからの回答
結論
1.事業所ごとに異なる就業規則の場合、他事業所の就業規則を開示する義務はありません。
2.現状の運用は法的に問題はないため、従業員からの主張には「管理上の必要性」と「異動時の開示ルール」で対応可能です。
3.ユニオン対策としては、異動時に規則を開示する仕組みを整備することで、労使交渉でも「公平性を担保している」と説明できます。
事業所ごとに異なる就業規則が作成・届出・運用されている場合は、原則として該当事業所の就業規則のみを周知すればよく、他事業所の就業規則を開示する義務はありません。つまり、事業所B~Eの従業員に対して、事業所Aの就業規則を開示する法的義務はありません。ただし、従業員が将来的に事業所Aに異動する可能性がある場合は、異動後に適用される就業規則を事前に確認する権利があると主張される可能性があります。この場合は、配置転換の際に就業規則を確認できる仕組みを用意することで対応可能です。
労働基準法上の「就業規則の周知義務」
労働基準法第106条(就業規則等の周知義務)
使用者は、就業規則を常時各作業場の労働者に周知させなければならない。
(周知方法:書面の交付、掲示、公衆送信など)
周知義務は「事業場ごと」に求められているため、他事業所の就業規則を開示する義務はない。つまり、事業所B~Eの従業員に対して、事業所Aの就業規則を開示しなくても法的には問題ありません。しかし、従業員が、「将来的に事業所Aへの異動がある可能性がある以上、その規則を知る権利がある」と主張した場合、現時点では開示義務はないため、「現行の就業規則は事業所ごとに周知しており、異動が確定した際には異動先の就業規則を周知する」と説明し、異動時に就業規則の閲覧機会を設ける制度を追加することで、透明性を担保できます。
例文(従業員への説明)
「就業規則は事業所ごとに作成・周知しており、現行法上は異なる事業所の就業規則を開示する義務はありません。ただし、将来的に異動が決定した場合は、異動先の就業規則を事前に確認できるようにしております。」
また、 「AはB~Eの就業規則を見られるのに、B~EはAを見られないのは不公平」との主張に対しては、「管理上の理由」で説明することが有効です。事業所Aは管理者として他事業所の規則を把握する必要があるため、アクセス権があると説明し、管理上の必要性に基づくアクセス権限の差であり、不平等ではないことを伝える。
例文(従業員への説明)
「事業所Aは管理職や本社機能があるため、業務上の必要性から他事業所の就業規則を閲覧できる体制にしています。これは管理業務上の権限であり、不平等性を意図したものではありません。」
なお、 ユニオン対策と法的リスク回避のポイントといたしましては、
ユニオンは「労働条件の格差」や「情報開示」を求めて交渉する可能性があります。
ただし、法的には事業場ごとに異なる就業規則を作成・運用している場合、他事業所の規則を開示する義務はないため、過度に不安になる必要はありません。
対応策といたしましえては、
1.就業規則の周知ルールを再確認
2.事業所ごとの就業規則が、労基署に届出されているか確認。
3.異動時の規則周知手続きの整備
今回の件を機に、異動時には事前に就業規則を確認できる制度を設けると、透明性が向上し、ユニオン対応時にも有利になります。
また、「事業所ごとの就業規則はその事業場で働く従業員に適用されるもの」と説明し、異動時には異動先の就業規則を開示する方針を明示するべきかと存じます。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/03/28 11:15 ID:QA-0150166
プロフェッショナルからの回答
ご相談内容に回答いたします
事業所Aの就業規則はAに所属する従業員に対して周知する義務がありますが、それ以外の従業員に周知する義務はありません。
就業規則の適用単位は各事業場ごとになります。本社と支店を併せた企業単位ではなく、本社、支店がそれぞれ一つの独立した事業場として適用されます。
就業規則の作成、届出、周知義務は事業場ごとに課せられているものから、事業場ごとに行えば、労働基準法上の義務は果たしていることになります。
また事業所Aの就業規則と事業所B〜Eの就業規則とは一体として就業規則とされるわけではありませんので、事業所Aの就業規則を事業所B〜Eの従業員に開示する義務は生じません。
就業規則と一体とされるのは、事業所Aにおいて就業規則とは別に賃金規程や退職金規程を作成していたり、パートタイム就業規則 のような雇用形態別の就業規則を作成している場合です。これらすべてについてはAの従業員に対する周知義務が発生します。
選抜試験を通じて事業所Aに配置転換がある場合には、配置転換があった時点で労働条件について説明・合意を得ることになるでしょう。
なお事業所Aの従業員のみ付与されたアクセス権は組織管理上業務の必要性によるもので適正なものと考えられます。
投稿日:2025/04/02 22:32 ID:QA-0150384
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