懲戒処分と賞与不支給について
懲戒処分を受けた者について、賞与を不支給とする場合、労基法第91条(制裁規定の制限)に抵触するかどうかについてですが、不支給とした場合、2重制裁になる可能性はないでしょうか。
懲戒として、賞与を不支給にするのであれば、賞与も賃金であるかぎり、制裁規定の制限に抵触します。
ただし、勤務評価によって賞与の額を決定することは可能であり、この場合には「減給の制裁」には該当しないと解されるようです。
懲戒処分を受けた者に対して、懲戒処分を受けたことのみを事由として賞与を不支給とすることは、懲戒による不支給と考えられるのですが、どうなのでしょうか。
宜しく、お願いいたします。
投稿日:2007/12/01 06:30 ID:QA-0010643
- *****さん
- 福岡県/その他業種(企業規模 1~5人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
減額程度の対応が妥当
ご相談を拝見し、ご連絡差し上げます。
既にご案内の通り、懲戒処分としての賞与減額は、賃金減額と同様に取り扱うべきとの、行政通達が存在します。(※基発150号)
ですから、賞与減額についても、労働基準法91条の制限に基づくことが基本となります。
ただ、一方で、予め金額を確定して支給するようなものを賞与とは言わないとする行政通達もあります。
ですから、その都度の賞与算定方法、及び支給額は、基本的に会社の裁量によってどうにでもなります。
従って、懲戒制裁ではなく、賞与支給上の査定として減額の評価を行うことは可能であり、その結果金額が91条の制限を越えて変動したとしても、何ら問題ありません。
※その程度の変動は、賞与においてはごく普通のことだからです。
結論として、本件は、まったく支給しないというのではなく、会社が適切と考える水準の減額を行うことで対応されるのが妥当と言えます。
ご参考まで。
投稿日:2007/12/01 09:58 ID:QA-0010644
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
二重処罰(定例減給と賞与不支給)
■先ず、第一に、労基法第91条は、制裁を課される労働者の生活保障の観点から、平均賃金や1賃金支払期における賃金の総額といった生活原資としての経常的収入を対象とした減給制限を決めたもので、税法上同じく給与所得として扱われる賞与など臨時に支払われる賃金は対象外となります。
■次に、「同一の犯罪(処罰事由)について、重ねて刑事上の責任を問われない」、いわゆる「一事不再理の原則(二重処罰の禁止)」は、判例の積み重ねで、刑事上と民事上の重複処罰を禁じたものではないとされています。飲酒運転にかかわる交通事故に対する昨今の厳しい刑事及び民事上の重複処罰を見れば明らかでしょう。
■以上2点から、原懲戒処分が妥当である限り、ご相談の賞与の不支給ないし減額も、不合理であるとは言えません。ただし、賞与の性格に鑑み、勤務評価のプロセスを経て決定される方が、筋道が通りやすいと思います。
投稿日:2007/12/01 11:10 ID:QA-0010645
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ポイントはご指摘の通り、「懲戒処分としての不支給」か、あるいは「評価査定による不支給」かという面にございます。
懲戒処分の場合には、田添様回答の通り、通達上から賞与においても労基法91条の制限がかかります。
他方、評価査定によりますと91条適用はございませんが、仮に「懲戒処分のみを考慮した評価」というのは、実質上内容をもつ評価査定とはいえませんので、そうした限定された評価に基く賞与の不支給は、直接違法とまではいかなくとも避けるべきというのが私共の見解です。
そうではなく、あくまで他の勤務内容等も含めた総合的な評価の中で、懲戒処分を受けたことによるマイナスのみが査定結果としてたまたま発生したのであれば、制裁による直接の減給とは明らかに性質が異なりますので問題ないものといえるでしょう。
但し、その場合でも軽い懲戒処分を受けたことで賞与を全額不支給とすることは合理性を欠きますのでこれもまた避けるべきです。
投稿日:2007/12/01 13:35 ID:QA-0010647
相談者より
「懲戒処分を受けた社員については、支給の対象外」にできるのかどうか、
このようなことが可能なのかどうか困惑いたしました。
懲戒処分については総合的な評価の中で対応するということですね。
ご回答ありがとうございました。
投稿日:2007/12/01 16:40 ID:QA-0034268大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
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