職務手当の廃止について
弊社は契約社員約80名おります。
契約社員の基本給は「本給+職務手当」で構成されており、それ以外の手当(役職手当、営業手当、調整手当、技術資格手当等)はついておりません。
「職務手当」は、時間外労働42時間に対する時間外手当相当分であり、一部の夜勤勤務者には、勤務の状況に応じて、更に深夜手当分(時間単価×職務手当に含む深夜勤務時間×0.25)も含みます。
なお時間単価は本給÷月の所定労働時間(年間総労働時間数÷12)で算出します。
このたび契約社員の人事制度を見直すにあたり、職務手当を廃止したいと考えております。
契約社員にも新たに等級・号俸を設け、本給基準で格付けをしていくためです(職務手当はあくまでも時間外手当の意味合いであり、本人の職責を判断する給与とはならないと考えるため)。
また弊社では日勤勤務者が異動によって夜勤勤務になることがあります。
例えば
①本給200,000円
②月の所定労働時間174時間
③時間単価=200,000円÷174時間≒1,149円
④職務手当(時間外労働42時間分)=1,149円×42時間×1.25≒61,000円(弊社では十円単位以下を丸める)
⑤基本給=200,000円+61,000円=261,000円
以上の労働条件の者が、深夜勤務業務に異動となり深夜勤務が月間160時間となり、基本給を変えない場合(弊社では担当業務が変わっても基本給を変えていません)、職務手当の金額が深夜勤務分だけ上がり、その分、本給が下がります(と言うことは、時間単価も変わります)。
このような不整合が起こることもあっての廃止検討です。
但し、一気に廃止するのが困難です。
契約社員の中には月の42時間の時間外を全く行っていない者もいます。だからと言ってこの者から職務手当分を一気に減額できません。
職務手当を調整手当に移行する、ということも検討していますが(且つ調整手当の段階的な解消も併せて検討)、こうなると、以降の時間外労働分がそのまま支給され、人件費の高騰にも繋がります。
生産性を悪化させず、且つ契約社員も納得のいく、職務手当の段階的減額ロジックのアイデアがわかず、八方塞がりとなっております。
どう段階的に減額していく方が良いのか、また減額しない方が良いのか、ご教示賜れれば幸甚です。
投稿日:2015/10/21 13:44 ID:QA-0063935
- *****さん
- 広島県/食品(企業規模 1001~3000人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
まず労働基準法上認められている端数処理方法ですが、「1か月間における割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合には、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げる。 」とされています。従いまして、御社の職務手当(時間外労働42時間分)に関しましても、十円単位以下を丸めるのではなく上記により四捨五入し1円単位で処理される必要がございます。
そして本題の件ですが、職務手当を廃止する方向性自体は間違っておらず、労働基準法通りに時間外・休日・深夜労働の各割増賃金を計算して支給されるのが妥当といえます。
その際、42時間の時間外勤務を行っていない者への対応ですが、これまで職務手当と称して勤務の有無に関わらず支給されてきた事からも一気に廃止されると労働条件の不利系変更ともなりますので、決して不合理な変更とはいえませんがやはり数年かけて段階的に減らしていかれるのが妥当といえるでしょう。
尚ご文面には、「以降の時間外労働分がそのまま支給され、人件費の高騰にも繋がります。」とございますが、これまでも職務手当は支給されてきたわけですし、特に新たな手当を支給されるわけではないですので、そうしたコスト増は発生しないものといえるはずです。
投稿日:2015/10/21 21:32 ID:QA-0063940
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
解決のマジック的ロジックはない。一定の受忍も必要だが、常道での解決を。
▼ 現在の職務手当は、明らかに、労基法38条の2の1に定められている、「所定労働時間労働を超える看做し労働」に対応するものですね。ご存じだと思いますが、これは、外勤営業など時間管理ができない故に、所定労働時間を超え、42時間のを労働したと看做す例外制度ですが、実態と看做し間の時間乖離をミニマイズするため、労使協定を締結し、労基署に届出ることが必要です。協定化に際しては、乖離状況のチェック頻度を上げるため、有効期間を短くすることが要求されます。
▼ チェックの結果、実態が看做し時間を超えている場合は、超過分に時間外労働としての割増賃金の支払が必要になるのに対し、ご引用事例のように、時間外を全く行っていない場合にも、看做し時間(職務手当)は支払わなければなりません。このように、看做しの利便性は、それを帳消しにする以上の手間、コスト両面に亘るマイナス要素を内蔵しているものです。
▼ ご説明の限りでは、思い切って、「職務手当」(この呼称も、実態を示すためには適切とはいえません)の廃止は至上課題だと思います。然し、これまで、職務手当の仕組みに慣れ切った現状では、「生産性を悪化させず、且つ契約社員も納得のいく、職務手当の段階的減額」のマジック的ロジックはありません。
▼ 現実的には、次のステップが常道かと考えます。
① 先ず、労働時間の正確な把握が可能であることを確認し、その上で、職務手当の廃止を基本決定する。
② 次に、これまでの時間外労働の個人別実態に基づき、本来支払うべき割増賃金を試算し、現行の看做賃金との乖離を確認する。
③ 職務手当の廃止以後、現行職務手当と、廃止に伴って支払うことになる時間外割増賃金との差額の措置を決定する(実態 ≧ 看做しの場合は措置不要)。
▼ 現渡的措置を必要とするケース、及び、その具体的内容は、精査情報がないので、本欄では申し上げる訳にはいきませんが、御社に本件を議論できる労使関係があれば、労使協議を通じて、現況、問題点、解決方針、過渡的措置など、具体的措置を検討されるのが最善の選択だと考えます。尚、正常化への転換は、過去のツケを清算することですから、それなりの会社負担の受忍は避けられないことを覚悟しなければなりません。
投稿日:2015/10/22 12:00 ID:QA-0063946
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
文面から拝見する限り、
単なる、職務手当(=固定残業手当)の廃止だけではなく、本給額の見直し、
評価制度も含めた、契約社員の賃金制度の見直し必要であると思われます。
逆に言えば、
職務手当が実態として、残業代に相当しているのであれば、
これを廃止し、残業代を個別に支給することは、合理性がないとは
言えません。
プロセスとしては、
1.契約社員に制度変更の趣旨をよく説明する。
2.現状残業時間の調査を行い、実残業時間に対する残業代で
シミュレーションを行う。
3.生産性が高く、残業時間が少ない契約社員の本給を見直す。
4.今後の評価の基準も、一昔前の残業が多いほど高いではなく、
残業時間が少なく、生産性が高い社員を評価するようようなしくみに変えていく。
投稿日:2015/10/22 15:13 ID:QA-0063947
プロフェッショナルからの回答
段階的減額について
固定残業代制から、実質残業代制への変更については、そのことをもって必ずしも不利益変更にあたるというわけではございませんが、対象の従業員の中には、時間外労働を全く行っていない従業員も存在し、現実に不利益を被る従業員が出てくることから、不利益変更に該当すると判断される可能性が高いと考えられます。
そのため、各労働者の合意を得る(労働契約法8条)か、当該措置に合理性が認められる必要がある(労働契約法10条)と考えます。
合理性については、従業員の不利益の程度、変更の必要性、現行の労働条件の社会的相当性、労働者側との協議の状況等を総合勘案して判断されることになります。
従業員によっては、不利益の程度が大きくなる可能性もありますので、合理性の観点からご懸念のように一気に廃止減額することは難しいと考えられます。
実務的には、職務手当の廃止前後でどのくらいの差額が発生し、その差額が従業員の生活に与える影響度を精査する必要があり、その精査した結果をもとに、例えば数年間の移行期間を設けて、その間段階的に職務手当を減額(例:42時間分→21時間分→10時間分→廃止)する等の激変緩和措置を策定し、制度改定前に十分な期間を設けて従業員へ説明、合意を得る努力をすることが必要であると考えます。
ご検討されている調整手当につきましては、固定残業代を含んでいないものを想定されているのでしたら、人件費高騰に繋がる可能性がありますので、従来の職務手当の段階的減額のほうが良策であると思います。
また、ただ単に職務手当を減額するだけではなく、従業員の実際の時間外労働を削減することも併せて行うことにより、人件費を抑えていくことも必要となります。
今回の改定と同時に削減されるであろう人件費を原資とした本給の見直しや、新たな手当・制度を新設を併せて行い、併せて従業員に説明することにより、従業員の合意もより得やすくなると考えられます。
投稿日:2015/10/22 18:15 ID:QA-0063951
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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