賞与支給基準額の変更
弊社は賞与支給額を「基準内給与×賞与月数×評価係数」としております。このうち、賞与月数については給与規程で基準月数は明示せず、「賞与は会社の業績を基準に、各人の業績評価や不就労等の審査して各人ごとに決定する」としております。
また、基準内給与については、給与規程にて「資格給、能力給、管理職手当、役職手当」が該当する旨記載をしております。これは2年前に弊社の人事制度を役割等級制度に切り替えしたときに改めたものです。このとき、移行措置で加給を残している社員が5%程おります。
今回ご相談したいことは、6点あります。
(1)賞与支給額を「賞与基準額×評価係数」とし、賞与基準額は各等級毎に定めるとした場合、賞与金額の多寡にかかわらず、不利益変更と扱われる可能性はあるのでしょうか。
(2)(1)の取扱をした場合、賞与基準額を給与規程ないし別表に記載する必要はあるのでしょうか。
(3)(1)の賞与基準額を同一等級の上限ではなく中央値や平均値とした場合、既存の計算方式にある基準内給与×賞与月数より、いわゆる基準額が減少する社員がでます。これは不利益変更にあたるのでしょうか。
(4)(3)が不利益変更にあたる場合、どの程度の減少であれば許容される範囲なのでしょうか。当社の賞与はおおよそ年収の30%です。よって、賞与の10%減は年収の3%にあたります。
(5)弊社の給与規程に基準額は記載しておりません。それであっても、賞与の計算方式による賞与の増減は不利益変更となるのであれば、その背景として判例なり法律はあるのでしょうか。
(6)例えば賞与基準額を高めに設定して、加給を残している社員の加給を取り止めして、年収ベースでは変わらない水準とした場合、これも不利益変更となるのでしょうか。
以上、ご意見を賜りたく存じます。
投稿日:2015/04/14 09:59 ID:QA-0062152
- 山田四郎さん
- 東京都/不動産(企業規模 1001~3000人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
賞与支給方式の変更
▼ 6点のご質問を通じてのポイントは、 賞与算定基本を 「 基準内給与 」 から、 「 賞与基準額 」 に変更するすることの是非、 妥当性にあるとお見受けします。 賞与は、 会社業績の従業員への配分ですので、 その決め方は、 将来に向けて ( 過去に遡及しない ) 適用されるので、 著しく妥当性を欠かない限り、 法的問題とはなりません。
▼ 等級毎に 「 賞与基準額 」 を設定し、 個人別業績 「 評価係数 」 を適用する方式は、 それ自体何らの問題は問題もありません。 上限値、 中央値、 平均値などの表現もありますが、 「 基準額 」 を設定するのであれば、 それは、 ぐらつくことなく、 常に、 不動のベースであってこそ、 算定基礎額としての意味があるものだと思います。
▼ 前述の通り、 賞与は、 業績配分ですから、 会社業績次第で、 上下変動します。 従って、 妥当な業評手順と政策配慮に基づいて算定される限り、 労働法上の不利益変更の問題は生じない筈です。
▼ 人事制度の変更による移行措置とは、 いわゆる激変緩和措置のことだと思いますが、 本来は、その時点で、 解消方法、 スケジュールも決めておくべき事項です。 いずれにしても、 今回の賞与支給方式の変更とは切り離しして早急に正常化するべき問題だと考えます。
投稿日:2015/04/14 12:58 ID:QA-0062169
相談者より
ありがとうございました。
程度問題もありますが前制度での資格を統合した等級で賞与の基準額の違いに苦慮しております。
投稿日:2015/04/29 16:59 ID:QA-0062354参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご質問について各々回答させて頂きますと‥
(1):賞与計算式の変更により現行計算方法に比べ支給額が減る可能性が生じる従業員が一人でもいれば、不利益変更になるものといえます。
(2):賞与基準額が不明ですと賞与の計算は不可能といえますので、計算式自体を規定する意義が小さくなります。またこうした内容が不明確になりますと、不利益変更の程度も大きくなってしまい変更内容を有効とする事は非常に難しくなります。従いまして、直接基準額を定めるか、そうでなければ基準額の算出方法を定めるべきといえます。
(3):結局は(1)と同じ事ですので、不利益変更に該当します。
(4):不利益変更の許容可否に関しましては、労働契約法第10条において「変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」と示されています。
従いまして、数値等で明確に申し上げる事は出来ませんが、賞与の10%減(年収の3%)程度であればやはり労使間での真摯な交渉や何らかの代替・激変緩和措置(例えば、特別手当等で少なくとも初年度は減額分を支給する等)を取られるのが妥当でしょう。
(5)賞与に関する具体的な法的規制はないですし、判例も先に触れました通り不利益変更自体が個々の事情に照らして判断されるものですので、限られた情報のみで御社の場合にどのようになるかを判断する事は出来ないものといえます。
しかしながら、(2)で触れました通り「基準額は記載していない」という事自体がより賞与支給の減額を行える可能性が高まることからも内容の相当性に関する疑問が生じますし、不利益変更の程度も大きくなるものと考えられます。それ故、減額対象者が出る以上、賞与制度の内容は具体化してきちんと示されるべきといえます。
(6)加給を取り止める事自体は不利益変更に該当しますが、文面のような措置で年収額が必ず補償されるという事でしたら、労働契約法第10条の観点からも不利益変更は有効とされる可能性が高くなるものといえます。従業員に実損が発生するか否かは、変更措置の有効性判断に関しまして最重要ポイントになるものと考えてよいでしょう。
投稿日:2015/04/15 21:32 ID:QA-0062200
相談者より
ありがとうございます。
基準額が記載していない点が不利益変更とみなされるリスクが大きくなるというのは弁護士に相談したときと意見が異なっているようです。当時の相談内容についてもう一度あたってみます。
投稿日:2015/04/29 17:02 ID:QA-0062355大変参考になった
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