懲戒規定にまつわる条文の表現の違いに関して
いつも大変お世話になっております。
標題の件,『就業規則』内の「懲戒規定」に関連した条文の表現の違いについて,お伺い致します。
例えば,「従業員が,次の各号の一に該当する場合には,譴責処分を行う。」や「減給,出勤停止,降格処分又は諭旨解雇を行う。」のように文末を「行う。」と断定するのではなく,「行うことがある。」のように,するかもしれないし,状況に鑑みてしないかもしれない,最終的にはあくまでも会社が判断するというニュアンスを盛り込んだとしましたら,何か会社側にとって不利になりますでしょうか。
また,両者について,大きな違いがあるのか,それとも大差ないのでどちらの書き方をしてもよいのか,どちらなのでしょうか。実際に『就業規則』を改正する際には,どちらの表現を採用した方が会社にとってはよろしいのか,ご教授賜りたく,何卒よろしくお願い致します。
投稿日:2026/01/06 09:22 ID:QA-0162711
- とっちゃさん
- 長野県/精密機器(企業規模 101~300人)
この相談に関連するQ&A
本Q&Aは法的な助言・診断を行うものではなく、専門家による一般的な情報提供を目的としています。
回答内容の正確性・完全性を保証するものではなく、本情報の利用により生じたいかなる損害についても、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
具体的な事案については、必ずご自身の責任で弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
本件は、就業規則の懲戒規定における文末表現の違い(「行う。」か「行うことがある。」か)が、会社側にとって不利・有利に作用するかという点に集約されます。
1 法的な前提(懲戒処分の基本原則)
懲戒処分は、
(1)就業規則への明確な根拠規定
(2)処分理由・内容の相当性
(3)手続の適正性
が求められ、就業規則に書いてあるから必ず処分できる、または処分しなければならないという性質のものではありません。
裁判例上も、懲戒は「企業秩序維持のための制裁」であり、個別事案ごとに裁量判断が許されるとされています。
2 「行う。」と「行うことがある。」の実質的な違い
結論から申し上げますと、実務上・裁判実務上、大きな差はありません。
「行う。」
一見すると義務的・機械的な印象を与えますが、実際には「必ず当該処分を科さなければならない」と解釈されることはほとんどありません。
懲戒の種類・程度の選択については、他条文(情状、過去の処分歴、影響の程度等)や一般法理により裁量が認められます。
「行うことがある。」
会社に裁量があることを明示する表現であり、実態に即した文言です。
「必ず処分するわけではない」「軽重を考慮する」という企業実務の考え方を、規定上も明確にできます。
したがって、「行う。」と書いたからといって、軽微な事案でも必ず譴責・減給等を科さなければならない義務が生じるわけではありません。
3 会社側にとって不利になるか
「行うことがある。」としたからといって、会社側が不利になることは基本的にありません。
むしろ、以下の点で有利に働く場面が多いといえます。
事案の軽重に応じて「処分しない」「注意指導にとどめる」選択を説明しやすい
処分の重さについて、後から「規則上当然○○処分すべきだった」と主張されにくい
懲戒権濫用(労契法15条)を争われた際に、裁量判断を前提とする構造が明確になる
4 実務上のおすすめ表現
実務では、次のような整理が望ましいと考えます。
懲戒事由列挙部分
「次の各号の一に該当する場合には、懲戒処分を行うことがある。」
懲戒の種類を定める条文
「懲戒処分の種類は、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇とする。」
補足条文(重要)
「処分の種類および程度は、行為の内容、情状、影響の程度、過去の処分歴等を総合的に勘案して決定する。」
このように構成すれば、会社の裁量を確保しつつ、恣意的処分との批判も避けやすくなります。
5 結論
「行う。」と「行うことがある。」に決定的な法的差異はない
実務上は「行うことがある。」の方が、会社の裁量を明確にでき、安全性が高い
懲戒規定全体の構造(裁量判断条文の有無)がより重要
以上から、就業規則改正時には「行うことがある。」表現を採用することを推奨いたします。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2026/01/06 10:16 ID:QA-0162718
相談者より
いつも大変お世話になっております。
ご多用の中、早急にご返信賜りまして、
心より厚く御礼申し上げます。
今回におかれましても、
これまでに同様、大変分かりやすく、
詳細でかつ丁寧に解説していただき、
本当に有難く存じます。
特に、「懲戒権濫用(労契法15条)を争われた際、裁量判断を前提とする構造が明確になる」というご指摘に関しましては、とても貴重な気付きを与えていただき、感服致しました。
また、ご教授賜りました補足条文につきましても、是非、実際に使わせていただきたく存じます。
どうもありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
投稿日:2026/01/07 08:24 ID:QA-0162803大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
表現
「行う」には強い意志が表現されていますので、一般的就業規則では「行うことがある」としているように思います。法律的判断につきましては人事の範疇を超えますので、必ず弁護士など専門家の確認をお願いいたします。
実務上は条文通りで判断できる事案というものはまず考えにくく、都度内容や事情など判断して決まるものであるため、就業規則だけで明確に可否判断できることの方が例外と言えるでしょう。そのためにも判断余地のある表現を使っているのではないでしょうか。
投稿日:2026/01/06 10:42 ID:QA-0162727
相談者より
大変お世話になっております。
ご多用の中、ご返信賜りまして、
厚く御礼申し上げます。
ご教授賜りました通り、「~ことがある。」に
改めたいと思います。
どうもありがとうございました。
投稿日:2026/01/07 08:27 ID:QA-0162804大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
就業規則の懲戒規定では、文末を断定せず、することがあるという柔軟な表現を
用いるのが実務上の定石ではあります。
断定表現は会社に処分の義務を課す形となり、軽微な事案でも情状酌量による免除
がしにくくなるリスクがあります。一方、裁量を持たせた表現にすれば、個別の状
況に応じた適正な判断が可能となり、公平性の観点からも有利に働きます。
会社側が状況に合わせて適切に判断する余地を残すため、後者の採用を、当方は、
推奨いたします。
投稿日:2026/01/06 10:42 ID:QA-0162728
相談者より
いつもお世話になっております。
ご多用の中、早急にご返信賜りまして、
厚く御礼申し上げます。
「裁量を持たせた表現を使用することにより、
状況に応じた柔軟かつ適正な判断が可能になるだけでなく、結果、公平性を担保することにもつながる。」とご教授賜りましたことは、大変貴重な気付きとなりました。
ご指導賜りました通り、「~ことがある。」という記載に改正させていたく所存でございます。
どうもありがとうございました。
投稿日:2026/01/07 08:36 ID:QA-0162807大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
モデル就業規則
以下、回答いたします。
(1)モデル就業規則(厚生労働省労働基準局監督課)をみてみると、「行う」が一般的でしたが、「行うことがある」を以下の箇所で目にしました。
人事異動、休職からの復帰、始業・終業時刻の繰上げ等、休日の振替、時間外労働等、時季変更権、時季指定義務、解雇、退職金の支給、面接指導の結果に基づく措置、懲戒解雇。
(2)これを手掛かりに考えてみると、「行う」については「原則」を示す一方で、「行うことがある」は、「裁量の余地がある」ことを明確にしておくことが特に必要な事項について使用されているものと推察されます。
(3)以上を踏まえれば、事項に応じて、概ね、一般的な事項については「行う」、裁量的な事項(「裁量の余地がある」ことを明確にしておきたい)については「行うことがある」と使い分けることが考えられます。
投稿日:2026/01/06 11:05 ID:QA-0162732
相談者より
いつも大変お世話になっております。
ご多用の中、ご返信賜りまして、
心より感謝申し上げます。
断定的な表現が示す「原則」と「裁量的な事項」を基準に、一般的な使い分けにつきまして、
具体例をご提示くださり、大変参考になりました。
このように両者を明確に区分してくださるような専門書等は、当然ながら当方の勉強不足も影響していると認識しておりますが、中々見受けられず、とても貴重な内容と思っております。
今後の実務におきましても、
大いに参考にさせていただく所存でございます。
どうもありがとうございました。
投稿日:2026/01/07 08:47 ID:QA-0162808大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
懲戒処分は「行う」としてください。
懲戒処分は、その根拠が求められますし、トラブルになりやすい規定です。
「行うことがある」では、行わないこともあると解釈されるリスクがあります。
せめて「行うことができる」としておくべきです。
当事務所にある10冊以上の書籍全てが、「行う」でした。
投稿日:2026/01/06 17:04 ID:QA-0162771
相談者より
いつも大変お世話になっております。
今回におかれましても、ご多用の中ご返信賜りまして、心より厚く感謝申し上げます。
断定的な表現にする方が、望ましいとのご指摘、誠にありがとうございます。
これまでご教授くださりました先生方のご指導の内容を総合的に勘案いたしまして、“よいとこ取り” してしまうようで誠に恐縮でなのですが、
例えば、「会社は、行為の内容、情状、影響の程度、過去の処分歴等を総合的に勘案して行う。」というように断定的な表現を用いつつも、過去の状況を鑑みるという裁量余地を残した記載のしかたでは、問題ありますでしょうか。
本当に憶病で情けないお話かもしれませんが、極力、不利な状況に陥ってしまうリスクを回避でき、なおかつ臨機応変に柔軟な対応が可能となるような条文にさせていただければと心底思っている次第でございます。
いかがでしょうか。もし仮に、問題あるようでしたら、重ね重ねで大変お手数をお掛けしてしまうことになり、誠に恐縮なのですが、引き続きご指導賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。
投稿日:2026/01/07 09:07 ID:QA-0162809大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
日本の人事部Q&Aをご利用くださりありがとうございます。
過去に一般企業の人事部長として賞罰委員会を管掌していた経験から申し上げると、「行う」と「行うことがある」との違いについて、法学的に考察すると厳密には相違があるのかもしれませんが、人事実務においては効力に大差ありませんので、どちらかを選択したからといって貴社にリスクが生じることはないと思われます。
一般的に懲戒条項の文言は概ね次の2パターンに収斂するようです。例えば減給処分と降格処分を例にあげると次のようなイメージです。
(A)「処分を行う」の言い回しの例
・従業員が就業規則第〇〇条に該当した時は減給処分を行う
・従業員が就業規則第〇〇条に該当した時は降格処分を行う
・但し会社が◯◯と判断した場合はこの限りではない。
(B)「処分を行うことがある」の言い回しの例
・従業員が就業規則第〇〇条に該当した時は減給処分を行うことがある
・従業員が就業規則第〇〇条に該当した時は降格処分を行うことがある
確かにご相談者様が仰るように(A)は断定的な言い回しなので、融通の利かない印象はあるでしょう。なお(B)では懲戒処分の種類ごとに、懲戒処分に至る場合と至らない場合を賞罰規定などに別途整理しておく必要がありそうです。もし(A)なら例外となる条件のみ懲戒条項に付記しておけば良いですね。
結局のところどちらを採用するかは貴社の経営陣の考え方ひとつといえます。そこであくまでも私見ですが、懲戒条項の文言を決める際に参考となりそうな考え方を2つほど紹介させて頂きます。
(1)就業規則は会社を守る唯一の砦
労働基準法は、会社が労働者を使用する時に守るべき義務や禁止事項を定めたもので労働者に対する罰則はありません。一方の就業規則は服務規律や懲戒条項など、労働者が守るべき義務と禁止事項および罰則を規定できます。中でも懲戒条項は不正や非行に対する抑止効果を期待して、厳格な言い回しとするのも良いかもしれません。
(2)「処分とする」=受動的な言い回し
「処分を行う」のも「処分とする」のも会社なので、実質的には言い回しを変えたところで行為の主体は一緒ですが、「行う」という言葉には能動的なニュアンスがあります。そこで会社が前向きに懲戒処分を行うのではなく、懲戒事由に該当したのでやむなく懲戒処分となる…という表現上の工夫も一考の価値アリかと。
たとえば表彰など従業員にとってポジティブな人事イベントは会社が能動的に「表彰を行う」、懲戒処分などネガティブな人事イベントは就業規則にそう定めてあるので「処分とする(受動的なニュアンス)」という使い分けをすることで、労使間の緊張が和らぐことがあります。
最後の事例はあくまでも当方の経験則なので、効果を客観的に検証したわけではありませんが、こういう事例もあるのだ…程度に受け止めて頂けると幸いです。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
投稿日:2026/01/06 17:19 ID:QA-0162773
相談者より
この度は、大変お世話になります。ご多用の中、早速ご返信賜りまして、心より厚く御礼申し上げます。
知識を蓄えるインプットが勿論大切なことは重々承知の上で、やはり過去の数々のご経験は貴重なものであると、心底感服いたしました。
私自身、まだまだだなとその至らなさをよい意味で、認識させていただけまして、大変有難く存じます。
なるほど、「処分とする(受動的なニュアンス)」という使い方もあるのですね。
「“出来ればしたくないのだが、やむを得ずやらなければならない”という状態に、会社はなってしまっているのです。」という意味合いを含ませることができれば、会社側にとって好ましいというだけでなく、実の所、かなり本心に近い表現になってくると感じました。
まとめますと、まず前段で「…処分とする。」とうたっておき、続けて「但し、~、過去の処分歴等を総合的に勘案して行う。」と後段に追記する形がよろしいように思いました。いかがでしょうか。
繰り返しになりますが、この度は、大変貴重なご経験談を共有していただきましたことに、心より厚く御礼申し上げます。
どうもありがとうございました。
投稿日:2026/01/07 09:29 ID:QA-0162810大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、懲戒処分に関しましては、個別具体的な事情によって慎重に判断されるべき性質のものといえます。
仮に断定的な文言に基づいて処分をされたとしましても、内容的に不合理と思われる処分であれば、訴訟等の際には無効と判断される可能性もございます。
従いまして、断定的な文言につきましては極力避けるべきといえますし、実務上も都度柔軟な対応をされるのが妥当といえるでしょう。
投稿日:2026/01/06 22:39 ID:QA-0162791
相談者より
いつも大変お世話になっております。
この度におかれましても、ご多用の中、早急にご返信賜りまして、誠に有難く存じます。
心よりお礼申し上げます。
ご教授賜りました以下3点を重々留意しながら、再考させていただこうと存じます。
1. 結局の所、記載云々に優先して、内容的に不合理と思われる処分は絶対に不可
2. 断定的な文言は極力避けるべき
3. 実務上においても都度柔軟な対応が必要
明解で大変分かりやすいご指摘に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
投稿日:2026/01/07 09:38 ID:QA-0162818大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
「行う。」と断定するのが一般的です。
そのうえで、情状酌量もあり得ることは明記し、例えば懲戒解雇であれば、「ただし、改悛の情が顕著に認められること、過去の勤務成績が良好であったこと等、情状により出勤停止または諭旨解雇とすることがある。」といった体で記載しておくこともできます。
どちらの表現を採用するかは、御社の考え方次第です。
投稿日:2026/01/07 08:27 ID:QA-0162805
相談者より
いつも大変お世話になっております。
今回におかれましても、ご多用の中、ご返信賜りまして、心より感謝申し上げます。
今回ご指摘いただきましたおかげで、なるほど、やはり“ただし書き”の効力は、とても大きいということを改めて認識させていただいた次第です。
大変貴重なご教授に感謝申し上げます。
どうもありがとうございました。
投稿日:2026/01/07 09:44 ID:QA-0162820大変参考になった
本Q&Aは法的な助言・診断を行うものではなく、専門家による一般的な情報提供を目的としています。
回答内容の正確性・完全性を保証するものではなく、本情報の利用により生じたいかなる損害についても、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
具体的な事案については、必ずご自身の責任で弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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