企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

【ヨミ】ユシカイコ 諭旨解雇

「諭旨解雇」とは、使用者が労働者に対して行う懲戒処分の一つで、最も重い処分である懲戒解雇に相当する程度の事由がありながら、会社の酌量で懲戒解雇より処分を若干軽減した解雇のことをいいます。「諭旨」は、趣旨や理由を諭し告げるという意味。労働者の責によって生じた業務上の支障や損害について、使用者が強制的に処分を下すのではなく、使用者と労働者が話し合い、あくまでも両者納得の上で解雇処分を受け入れるのが諭旨解雇の概念です。
(2013/11/25掲載)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

諭旨解雇のケーススタディ

懲戒解雇相当も“温情処分”で退職金支給
相応の解雇事由と本人の弁明機会が必須

解雇とは、使用者による労働契約の一方的な解約ですが、何を理由に解雇するか(解雇事由)によって、一般に「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の三つに分類されます。

普通解雇は、会社の就業規則に定められた解雇に関する規定に則って行われる解雇です。例えば労働者の傷病などによる労務不能や、勤務実績・勤務態度の著しい不良などが原因で、労働契約を履行できないと認められる場合に適用されます。整理解雇は、業績不振による倒産を回避するための人員削減など会社側の経営状態を理由とした解雇。実施にあたっては、原則としていわゆる「整理解雇の四要件」が満たされなければなりません。これらに対し、「懲戒解雇」は労働者の責に帰すべき理由による解雇です。企業秩序を乱したり、法に抵触して逮捕・起訴されたりといった労働者の重大な違反行為に対する最も重い懲戒処分(責任追及・問責手段)として行われます。

この懲戒解雇に値する事案でありながら、処分をやや緩やかにした解雇が「諭旨解雇」です。懲戒解雇の場合は原則として退職金などが支給されない(ただし懲戒解雇になれば自動的に退職金が不支給になるのではなく、退職金支払規程にその旨の記載が必要)のに対し、諭旨解雇の場合は貢献度などによって、その全部あるいは一部が支給されるなど、懲戒解雇と比べると、処分によって労働者が被る不利益が軽減される傾向にあるようです。先日、有名芸能人の成人した息子が窃盗罪で逮捕され、勤務先のテレビ局から諭旨解雇された旨の報道がありましたが、これを受けて一部から「甘すぎる」などの批判が起こったのも、同じ“罰”でありながら、懲戒解雇と諭旨解雇とでは実質的な処分内容に少なからぬ差が生じるためでしょう。

とはいえ諭旨解雇も、一方的な制裁として労働契約を解除し従業員を失職させる点では懲戒解雇と同じです。労働者にとってはキャリアに傷がつき、再就職で不利になる可能性も少なくありません。したがってその手続きや有効性は、懲戒解雇と同様に、法律の規制を厳しく受けることになります。そもそも諭旨解雇は、本来なら懲戒解雇に処すべき従業員に対する一種の“温情処分”ですから、逆にいえば、従業員の行為に懲戒解雇を科しても重過ぎない程度の解雇事由がなければ有効性は認められません。また諭旨解雇処分を行うには、あらかじめ就業規則に諭旨解雇事由が明記されていることはもちろん、会社からの諭旨が行われ、従業員本人にも弁明の機会が与えられていることなどが必要です。

ちなみに、諭旨解雇とよく似た言葉に「諭旨退職」があります。これは諭旨解雇よりもさらに穏やかな措置で、処分の重さでいうと、懲戒解雇>諭旨解雇>諭旨退職の順になります。諭旨解雇と諭旨退職の違いは本人の退職願(辞表)の有無。つまり懲戒解雇相当の労働者に対して、いきなり辞めさせるのではなく、自ら退職するように理由を諭して辞表の提出を促し、依願退職した形を認めるのが諭旨退職です。退職金などの扱いも、普通の自己都合退職と変わりません。これに対し、あくまで「解雇」として位置付けるのが諭旨解雇です。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

あわせて読みたい

懲戒処分
「懲戒処分」とは、企業の秩序と規律を維持する目的で、使用者が従業員の企業秩序違反行為に対して課す制裁罰のことで、処分の種類には戒告、けん責、減給、出勤停止、懲戒解雇などがあります。懲戒処分の前提として、使用者は企業秩序を定立し維持する「企業秩序定立権」を有し、労働者は企業に雇用されることによって、...
試用期間
試用期間とは、新たに雇用した従業員を正式に採用するかどうか、判断するために設ける一定期間のことをいいます。
退職勧奨
使用者が労働者に対して強制ではない退職の働きかけを行うことを指し、俗にいう「肩たたき」がこれに当たります。労働者が退職勧奨に応じると、労働契約上の「合意解約」となり、「解雇」にはあたりません。退職金の優遇や再就職先の斡旋など労働者側が勧奨に応じやすい条件を提示して行うのが一般的です。

関連する記事

企業における「懲戒処分」の実態
民間調査機関の労務行政研究所(理事長:矢田敏雄)は、「懲戒制度に関する実態調査」を実施しました。本記事では、その中から「モデルケース別に見た懲戒措置」「最近1年間における懲戒処分の発生件数」「解雇における退職金の支給状況」について取り上げます。
2012/10/22掲載人事・労務実態調査
懲戒制度の最新実態 解雇の場合の退職金、懲戒解雇と諭旨解雇ではどうちがう?
SNSの普及により、インターネットに関連した懲戒事案なども増えています。 今回は各企業の懲戒制度の内容とともに、解雇における退職金の有無、30のモデル ケース別に見た最新の懲戒処分の適用状況などについて紹介します。
2018/10/03掲載人事・労務実態調査
マニュアル的な対応は要注意! 裁判例にみる“組織を乱す社員”への対応実務
企業規模を問わず、組織を乱す問題社員がいることがあり、企業はその対応に頭を悩ませている。事情に応じて慎重に検討する必要があるが、その実務的な対応方法とは?裁判例を踏まえつつ、わかりやすく解説する。
2016/09/16掲載人事・労務関連コラム

関連するキーワード

分類:[ 人事管理 ]
分類:[ 就業管理 ]
従業員のエンゲージメントを高めるソリューション特集

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

ANAの研修力 紀尾井カンファレンス

50音・英数字で用語を探す

新着用語 一覧

注目コンテンツ


従業員のエンゲージメントを高めるソリューション特集

従業員のエンゲージメントを高めるヒントとなるセミナーやサービス、ダウンロード資料をご紹介します。


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


戦略人事の基盤となる「人事給与システム」<br />
導入を成功させるためのポイントとは?

戦略人事の基盤となる「人事給与システム」
導入を成功させるためのポイントとは?

給与計算業務や社会保険手続きなどの労務管理から、採用・異動・評価といっ...


「働きがい」が業績向上を実現する<br />
~成長する組織をつくる働き方改革~

「働きがい」が業績向上を実現する
~成長する組織をつくる働き方改革~

すでに関連法令も成立し、「働き方改革」への対応は待ったなしの状況といえ...