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【ヨミ】レイオフ レイオフ

「レイオフ」とは、「一時解雇」のことをいいます。業績が悪化した際に一時的に従業員を解雇し、その後、業績が回復した時に再雇用するというものです。レイオフは主にアメリカやカナダなど、北米企業において実施されている人事施策です。また、似たような用語で「リストラ」や「一時休業」などがあります。ここではレイオフの意味と実施に際しての留意点、そして他の類似ワードとの違いなどについて解説します。

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1.レイオフとは

業績が悪化した際、「再雇用」を前提とした従業員の一時的な解雇

「レイオフ」(lay‐off)は、景気の変動や不況などに伴い業績が悪化したとき、従業員の人件費を抑制するために、企業が一時的に従業員を解雇する人事施策のこと。解雇の形態の一つですが、業績が回復した時には従業員を「再雇用」するという前提がある点で、通常の解雇とは異なります。

一時解雇する際には勤続年数の短い従業員からレイオフ、再雇用時には、逆に勤続年数の長い従業員から優先して雇用する「先住制度」(シニオリティ・ルール)を導入している企業もあります。この仕組みはアメリカやカナダなどの企業で見られる雇用慣行で、レイオフ以外の人事管理にも適用されます。例えば、配置転換における手続きの際、勤続年数の長い従業員を勤続年数の短い従業員よりも優先することなどが、これにあたります。

従業員の経験や知識・スキル・ノウハウの流出を、最小限に留める施策

企業の業績が悪化したとき、合理化策を実施する際に行われるのが「解雇」です。再雇用を前提とするレイオフは、解雇によって従業員が長年培った企業内での経験や知識・スキル・ノウハウの流出を最小限に留めるために行われます。先住権制度で勤続年数の長い従業員から再雇用を行うのも、そうした理由からです。

レイオフは、アメリカでも自動車メーカーなど、伝統的な製造業で行われることの多い施策です。これには、熟練工などの人材の流出を防ぐ狙いがあります。それに対して、個人の持つスキル・ノウハウの企業に依存する割合が比較的低いといわれる金融やサービス業などでは、再雇用を前提とするレイオフではなく、解雇を行うケースが多く見られます。

リーマンショックの際には、ある日突然、直属の上司(または人事担当)から呼び出しを受け、いきなり解雇を宣言されるレイオフが多発しました。即時に私物を整理させられ、その後「退職面談」が行われ、「最終給与」が渡され、貸与してあったコンピュータやカードキーなどの返却が行われます。企業によっては、「レイオフ手当」などを支給するケースもあります。支給の条件として、今回のレイオフが「性別や人種・年齢など、違法な差別によるものではないこと」「レイオフに関して、会社を裁判で訴えないこと」を確約する書類へのサインを求められることもあります。非常に合目的、かつ合理的な対処方法と言えますが、日本ではあまりこのような例を聞くことはありません。

というのも、日本企業の場合、業績悪化時の「解雇」(整理解雇)に対する法的な規制が非常に強いからです。また、労働者保護という観点からも、レイオフを行うケースは少なくなっています。終身雇用慣行の根強い大手メーカーなどでは、解雇して再雇用するのではなく、「一時帰休」といったかたちで、雇用の維持に努める企業も見られます。それは、労働組合の力の強いヨーロッパの企業でも同様。一時解雇は労組や労働委員会からの賛同を得ることが難しいため、レイオフの実施は難しくなっています。

他の「類似用語」との違い

(1)リストラ

レイオフと混同されることの多い「類似用語」の一つが「リストラ」です。リストラとは、リストラクチャリング(restructuring)の略で、元々は組織などの「再構築」を意味する言葉でした。日本では1990年代初頭にバブル経済が崩壊した後、多くの企業で業績が急速に悪化する事態となり、従業員を解雇せざるを得ないケースが続出。事業や組織の再編成が実施される一方、再構築のあくまで一つの手段である「人員整理」や「解雇」という言葉が強調され、マスメディアで喧伝されることになりました。その結果、本来の意味とは異なる、「業績悪化に伴い、人件費を削減するために従業員を解雇するもの」というイメージが広く浸透し、「リストラ=解雇」という認識が一般化しました。

一方、レイオフは経験やスキル、ノウハウを持った従業員に対して、再雇用を前提とした「一時解雇」です。業績悪化に伴う人件費の抑制といった目的は同じでも、この点がリストラと大きく違います。

(2)一時帰休

たとえ一時的なものであっても、レイオフが従業員を解雇することに変わりはありません。当然、再雇用されるまでの間、会社との「雇用関係」はなくなります。それに対して一時帰休は、業績悪化などの会社都合により、業務の縮小や操業の短縮を行う際、従業員を「雇用を維持」したまま休業させるというもの。ただし、自社従業員のスキルやノウハウの流出を防ぐことに主目的がある点は、レイオフと同様です。そのため、一時休業もレイオフと同じように、大企業の製造業で実施されるケースが多く見られます。なお、「一時休業」「自宅待機」と呼ぶ場合もありますが、意味する内容は基本的に同じです。

一時帰休を実施する場合、留意しなくてはならないのが「休業手当」の支給です。会社側の都合(使用者の責に帰すべき事由)により従業員を一時帰休させた場合、「労働基準法第26条」により、使用者は休業期間中、従業員に対して「平均賃金」(算定事由が発生した日以前3か月間に、当該の従業員に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額)の60%以上を「休業手当」として支払わなくてはなりません。つまり、一定の賃金を保障した上で、従業員を休ませなければならないのです。

2.運用面で求められる対応・留意点

「解雇規制の緩和」が検討される中、レイオフへの正しい理解が求められる

これまでレイオフは、解雇に対して強い規制がある日本になじまない制度だといわれてきました。しかし、「解雇規制」によって採用後にミスマッチが起こっても簡単には解雇できなかったり、正規社員と非正規社員の二重構造(不均衡待遇)を創り出してしまったりといった課題もあります。また、人材の流動化が進み、転職することがネガティブなイメージではなくなってきたことなどから、近年、厚生労働省を中心に「解雇規制の緩和」が検討されています。こうした中で人事には、選択肢の一つとしてレイオフを正しく理解することが求められます。

「解雇」とは

ではここで、改めて「解雇」について、整理してみましょう。解雇は、会社側が一方的に従業員との雇用関係を終了させることを言います。またその事由によって、解雇は以下の3種類に分類されます。

【解雇の種類】
懲戒解雇 従業員が違反行為を起こし、その処分として行われる解雇。また、近い言葉に、「諭旨解雇」がある。これは、違反行為が懲戒解雇ほどではない場合に、企業と従業員が話し合いを行い、両者納得のうえで解雇を受け入れるもの
普通解雇 就業規則に定める解雇事由に該当したことで行われる解雇
整理解雇 業績不振など、経営上の理由により人員削減が必要な場合に行われる解雇

レイオフは、上記の「整理解雇」(リストラ)にあてはまります。整理解雇は、解雇の原因が使用者側にのみにあって従業員側には原因がないこと、まとまった数の従業員が一斉に解雇されることが特徴です。

「整理解雇」をする際に求められる四つの要件

日本では、企業側の理由による「整理解雇」に、厳しいハードルが課せられてきました。「現在の経営状況は悪くないが、将来予想される経営の不安に備えて、今から人員削減をしておきたい」といったような理由では、整理解雇は認められません。整理解雇を行うには、一定の「要件」(要素)を満たす必要があります。具体的な要件は、以下の四つ。ただし、近年の判例を見ると、四つの要件について個別の事情に照らして、総合的に判断するという考え方も出てきています。

【整理解雇の要件】
(1)人員削減の必要性 会社の存続のために、やむを得ず人員削減に踏み切る「事情」が必要とされます。具体的には、会社の実態から判断して、会社が存続するために人員整理を決定するに至った事情に「無理もない」という実態があると認められれば、整理解雇の必要性を認めるというのが近年の判例の傾向です。
(2)解雇回避の努力 解雇された従業員は経済的・精神的に大きなダメージを受けます。そのため、整理解雇をするための相応な経営努力なしに、解雇することはできません。
(3)対象者の合理的な選択 解雇の対象者を選ぶ際、客観的で合理的な基準を設定し、公正に適用する必要があります。例えば、女性や高齢者、特定の思想を持つ者のみを対象とした整理解雇は認められません。一方、欠勤回数、遅刻回数などの勤務成績(態度)や勤続年数などの会社への貢献度を基準とするのは、合理的な方法の一つといえるでしょう。
(4)解雇の手続きの妥当性 整理解雇を行うにあたり、従業員(および労働組合)に対して十分に説明を尽くして納得を得るように務め、誠意を持って協議している、といった「手順」を踏んでいない場合、解雇は無効となります。

解雇する際には「30日前の予告」か「30日分の手当」が必要

解雇する場合の重要な実務として、「解雇予告」と「解雇予告手当」への対応があります。つまり、使用者は、従業員を解雇する場合、「30日前に予告するか、予告に代えて平均賃金30日分の予告手当を支払うこと」が必要です。「予告手当」は、解雇通知と同時に支払う必要があります。予告手当を支払わないで行う解雇は無効となります。

また、解雇予告は解雇日を指定して行う必要があります。予告を行った場合には、それによって「法的関係」が確定します。使用者が一方的に予告を取り消したり、予告した解雇日を変更したりすることは、原則的にできません。なお、予告期間中も労働関係は有効なので、その間、従業員は労働を提供する義務が生じます。

「解雇予告」の除外認定

以下に該当する場合には、解雇予告や予告手当支払いをすることなく、即時に解雇することができます。ただその際には、労働基準監督署長の認定を受けなくてはなりません。

【解雇予告が除外認定されるケース】
・天災事変その他、やむを得ない事由のために、事業の継続が不可能となった場合
・労働者の責に帰すべき事由による場合
労働者の故意、過失またはこれと同視すべき事由がある場合、労働者の地位、職責などを考慮の上で、総合的、実質的に判断されます。例えば、「盗取、横領、障害など(刑法犯)」「賭博、風紀乱など」「重大な経歴詐称」「他の事業への転職」「2週間以上の無断欠勤など」「出勤不良など」のような場合が、該当します。

3.課題と今後の展開

今後、政府主導の下、解雇規制緩和が進んでいくことが予測され、レイオフ(整理解雇)は日本でも一般的に行われるようになっていく可能性が十分にあります。その意味からも、解雇に伴うトラブルや自社なりの課題をしっかりと想定し、それに対する対策を事前に講じておくことが、人事労務担当者には求められます。以下、その際に考えるべきポイントを紹介します。

状況に応じて、知らせる「タイミング」を見極める

解雇を実施する場合、知らせるタイミングが重要です。例えば、退職勧奨や希望退職を行っている場合には、それが一段落付いてから整理解雇を実施するようにします。一方で工場の閉鎖など、会社の一部門を丸ごとクローズするような場合、他の部門に異動させたり、関連会社や他社へと出向・転籍させたりしない限り、その部門に所属している従業員を対象に、整理解雇せざるを得ない状況となります。この場合、どのような対応が求められるでしょうか。

まず、部門を閉鎖する日が決定した段階で、なるべく早めに整理解雇を伝えた方が、対象となる社員のためになります。早い段階で整理解雇を行うことを伝えれば、対象者も早めに再就職に向けた活動ができるからです。ただし、あまりにも早いタイミングで知らせてしまうと、解雇予定日までの間にモチベーションが落ちてしまい、生産性の低下を招く恐れがあります。特に製造業では、モチベーションの低下は重大な事故に結び付く場合があるので、リスクを抱える期間が長すぎることは好ましくありません。一概にはいえませんが、一般的に従業員の再就職準備期間として必要と思われる3ヵ月程度の猶予をみて知らせるのが妥当と思われます。

後のトラブルに備え、「説明会」の開催など対応を万全にしておく

解雇する場合、会社には「説明責任」が求められます。そこで、まずは会社の置かれた厳しい現状を従業員に丁寧に説明し、整理解雇をせざるを得ない状況であることをしっかりと理解してもらうよう、努めなくてはなりません。そのためには、従業員が現状を理解できるように具体的なデータを用いて、繰り返し「説明会」を開催する必要があります。

そして、説明会を開催するにあたっては、ただ漫然と開くのではなく、参加者のリストを作成した上で、参加者全員に「サイン」をしてもらうようにします。さらに、説明会で話した内容の詳細、参加者からの質問とそれに対する回答を、漏らさずに記載した議事録も作成します。このように、説明した内容や対象者を正式な書面で残しておくことによって、後に対象者との間で訴訟などのトラブルへと発展した場合、会社側が整理解雇を行う上で、対象者に対して十分な説明を行ったことの「証拠」となります。

今後、日本でもレイオフがあたり前になる時代が来るかもしれません。実際に解雇の場面に直面すると、どうしても感情的な面でトラブルが起きがちです。また、解雇に関する問題が表面化すると、社内だけでなく、対外的にも大きなダメージを受けることになります。そうした点からも、会社としては冷静かつ万全な対応が不可欠です。当然のことながら、人事労務担当者には法令を遵守すると同時に、客観的な材料をそろえておくことが求められます。

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