誤って年次有給休暇付与した場合の処理
出勤率が8割未満の社員は誤って11日年次有給休暇を付与してしまいました。
「2025/4/1」に11日付与されたうちの「10日と7時間」を取得済みの状況です。(本来の付与日数は0日です。)
【ご相談内容】
今回のように付与されるはずではない年次有給休暇について、
どのように対応すればよいか教えて欲しい。
事例や社労士の見解を聞きたい。
投稿日:2025/07/16 14:15 ID:QA-0155523
- touさん
- 東京都/情報処理・ソフトウェア(企業規模 501~1000人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
民法703条で不当利得の返還義請求権がありますので、
給与の過払い等、会社には返還請求できる権利があり、従業員には返還する義務があります。
ですから、説明して、お詫びし、速やかに取り消してください。
使用した有休分については、
過払い分として、返還してもらってください。
投稿日:2025/07/16 15:28 ID:QA-0155528
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論および基本的な対応方針
年休を誤って付与し、実際に取得済みの場合、次の点が重要です:
誤って付与されたとしても、実際に付与され、従業員が取得した年休をさかのぼって無効とすることはできません。
これが労働局や裁判例、実務で一貫して取られている考え方であり、会社側に不利益があっても、従業員に責任を問うことはできないのが原則です。
2.根拠 労働基準法・行政通達・実務解釈
(1) 労働基準法 第39条(年次有給休暇)
法定要件(6ヶ月継続勤務+8割以上出勤)を満たした場合に、年休の最低基準を定めている。
ただし、実際の付与は会社の行為(事務処理)によって行われる。
(2) 実務上の通達・見解
「誤って付与された年休であっても、就業規則やシステム上で“付与”がされ、従業員がその取得を前提に休暇を取っていた場合は、その年休は有効に成立しており、事後的に取り消すことはできない」
※出典例:東京労働局、厚生労働省労働基準局担当官の実務説明(労働局相談事例など)
3.対応の方向性
(1) 今回取得された「10日と7時間分」は、年休として確定扱い
→ 誤付与であっても、実際に休暇取得が行われているため、取り消し・賃金返還等は不可です。
NG対応例:
「間違いだったので、有給扱いを取り消して欠勤控除にします」
「給与を返してください」
→ いずれも労働契約・年休管理の信頼関係を損ね、労基署・裁判所でも否定されます。
(2)今後の運用で調整する(例:次回付与時に相殺)
これは唯一可能な調整策です。
【次回の年休基準日】(例:2026/4/1)に、出勤率を確認し本来の付与日数を算定。
誤って付与した日数が実際の付与日数を上回っていた場合は、その分を次回付与から控除する形で調整する。
例:
状況→内容
誤って付与した日数→11日
実際の取得済→10日と7時間
本来の付与日数(出勤率8割未満)→0日
→次回(仮に)11日付与となる場合→取得済10日7時間分を控除し、残り付与可能日数を1日未満に調整
この「控除」も、就業規則や社内ルールで根拠を整備した上で、事前に本人へ説明・同意を取っておくことが望ましいです。
【専門家(社労士・弁護士等)の見解】
多くの労務専門家は、以下の立場をとっています。
「誤付与であっても、年休の取得が完了していれば、従業員の側には保護されるべき信頼利益があるため、取り消しはできない。次回以降の付与時に日数調整するなど、穏当な方法で対応すべき」
また、判例は多くありませんが、近い状況の労働審判や訴訟でも「誤って付与した休暇を取り消して給与返還を求める会社側主張は退けられている」のが実情です。
4.実務上の対応チェックリスト
対応内容→実施可否→備考
誤って付与した年休をさかのぼって取り消す→ 不可→労働者の信頼利益を保護すべき
取得済年休に対し欠勤控除・給与返還請求→ 不可→違法・トラブルリスク大
次回付与時に控除・調整→ 可→本人への説明と記録が重要
社内ルール・システムの点検→ 強く推奨→誤付与を防止する体制を整備
5.アドバイス
今後の防止策として、出勤率判定のプロセスやシステム設定の二重チェックを行うとよいでしょう。
「誤付与対応ルール」を就業規則・年休規程・マニュアル等に明文化しておくことで、次回以降の対応がよりスムーズになります。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/07/16 15:42 ID:QA-0155529
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
今回、誤って付与した場合でも、会社が休暇付与を明示・通知し、
従業員がそれに基づいて取得した場合には、これを取り消すことは、
本人の了承が得られない限り、付与を取り消すことはできません。
本人の了承が得られれば、すでに取得済みの休暇分の取消しは難しいですが、
未消化分の取消しについては、対象者本人と交渉可能なものと思案いたします。
但し、取消しを強要することは難しいものです。
誤って付与された有給休暇は、法令上の年次有給休暇ではありませんが、
会社が任意に与えた特別休暇としてみなされる可能性が高い為です。
いづれにせよ、事実はご本人にお伝えした上で、未消化分は取消しする・
又は、本人の了承が得られなければ付与のままの扱いが妥当と思案します。
投稿日:2025/07/16 16:19 ID:QA-0155533
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、そもそも会社側の不手際によるものですので、今になって年休の取消等をされるのは避けるのが望ましいでしょう。
そして、この度の対応をどうされるかというよりも、今後こうした重大なミスが繰り返されないよう人事労務管理面のチェック体制を整備される事の方が重要といえるでしょう。
投稿日:2025/07/16 19:01 ID:QA-0155540
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
どのような対応もする必要はありません。
労働基準法は、労働条件の最低基準を定めた法律ですから、基準を上回る限り何も問題はなく、たとえ出勤率が8割未満であろうと、8割以上であれば付与されたであろう法定の日数を与えても差支えはございません。
10日と7時間はすでに取得済みということですから、いまさら取得済みの有休の返還を求めることは現実的にはあり得ず、誤って付与されたのであれば、それは今後への教訓とすればよろしいのであって、社員のモチベーションの点から考えても、今回は割り切るしかないでしょう。
投稿日:2025/07/17 06:49 ID:QA-0155565
プロフェッショナルからの回答
信義則
以下、回答させていただきます。
(1)最高裁は、「年次有給休暇の権利は、労働基準法第39条第1,2項の要件が
充足されることによって法律上当然に労働者に生じる権利」であるとしてい
ます。(令和3年版「労働基準法 上」厚生労働省労働基準局編)
(2)これを踏まえれば、本件の場合、上記要件が充足されていないため、年次
有給休暇の権利は生じていないと考えられます。
(3)このため、年次有給休暇の取得に伴い既に支給した賃金について、「その
返還を求めることが適切なのか否か」ということが論点になると思われま
す。
(4)一般に、労働者の中には、「会社から11日分の有給休暇があると言われ
た」「5日以上取得しないと会社が法律違反になってしまう」「無理をして取
得することとした」という方がいらっしゃるかもしれません。
(5)本件でもこの事実認定は容易ではありませんが、会社側のミスに起因する
ものであることから、労働契約法第3条第4項、第5項を踏まえ、返還を求めな
いことが社会通念上妥当ではないかと思われます。
(ご参考)労働契約法
第3条
4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い
誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たって
は、それを濫用することがあってはならない。
投稿日:2025/07/17 22:17 ID:QA-0155636
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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