労働基準法 第39条の中の優位性について
労働基準法 第39条の中の優位性の解釈について
ご教示ください。
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年次有給休暇について定めている条項ですが
その中で、下記のどちらに優位性があるのかご教示いただきたく
投稿しました。
① 5項の労働者の有休取得の自由
② 7項の年間5日間取得義務と時季指定
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【質問背景】
有休奨励日に建物全館停電が重なり、出勤予定にしている
従業員に対して「有休取得の指定」をしてしまうのではないかと
考え、お伺いしました。
その日までに既に5日以上の有給休暇を取得済の従業員もいる為
合わせてご教示ください。
どうぞよろしくお願いいたします。
投稿日:2025/07/11 09:45 ID:QA-0155260
- さいふぁ☆さん
- 東京都/鉄鋼・金属製品・非鉄金属(企業規模 51~100人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
労働者の「時季指定権」(第5項)が原則的に優先されます。
ただし、使用者は第7項に基づき、“5日を下限とした取得義務”を果たすために限り、時季を指定して付与することができます。
よって、すでに5日以上取得済の社員に対して、さらに会社が日を指定して有休を強制することはできません。
2.法条文の整理
労働基準法 第39条の関係条文(簡略)
【第5項】(労働者の時季指定権)
使用者は、労働者から年休の取得の申し出があった場合、事業の正常な運営を妨げる場合を除いてこれを拒むことはできない。
→ 原則:労働者が時季(いつ取得するか)を自由に指定できる権利。
【第7項】(使用者の時季指定義務)
使用者は、10日以上の年休がある労働者に対し、年5日については労働者の希望を尊重しつつ時季を指定して与える義務がある。
→ ただし、労働者が自ら5日以上取得すれば、会社の時季指定は不要。
3.両者の「優先関係」についての解釈
項目→法的解釈
第5項(自由取得)→原則ルール(時季指定の基本は労働者側)
第7項(時季指定)→補完ルール(自由に取らない人に対して会社が義務的に5日分を指定)
優先性第5項が上位。第7項は義務履行のための例外的措置。
4.ご質問への具体的回答
Q1. 有休奨励日(全館停電)に対して、使用者が有休を「指定」することはできるか?
対象社員→判断
すでに5日以上取得済の社員→× 会社は有休を強制指定できない
まだ5日未満しか取得していない社員→〇 「年5日の範囲内」であれば会社は時季指定可能(第7項)
Q2. では、全館停電日に出勤を予定していた社員の扱いは?
時季指定できない(=5日取得済)社員については:
年休の指定はできないため、欠勤扱いにするか、特別休暇(有給)を付与するか、在宅勤務に切り替える等の対応が必要です。
労働者本人が「この日年休を使いたい」と申し出た場合は、その時点で時季指定権が行使され、使用者は基本的に認めなければなりません(第5項)。
5.実務上のおすすめ対応
社員の年休取得状況を把握(5日未満/5日以上)
5日未満の者には「計画的付与」「時季指定」を活用
書面での明示、労使協定の整備などが必要です。
5日以上取得済の者には“強制できない”
→「有休取得奨励日」として協力を依頼するにとどめ、無理に年休扱いしない。
欠勤回避策として:
特別有給休暇の付与(就業規則に明記要)
在宅勤務への切替
別日への振替出勤 など
6.まとめ
観点→結論
優先される条文→第5項(労働者の時季指定権)
第7項の使用可能条件→労働者が年5日未満の年休しか自ら取得していない場合
5日以上取得者への時季指定→×不可(強制力なし)
奨励日=実質の休業日とする場合の対応→特別休暇 or 欠勤扱い or 勤務方法の変更等で対応
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/07/11 10:31 ID:QA-0155269
相談者より
回答をありがとうございました。
予定していた推奨日の変更も提案はしましたが
難しい様子でしたので、条項内の優先を確認し
もう一度、提議してみようと思います。
会社で契約している社労士さんは
「5日の時季指定でいける」との判断だった様ですが、労働者の取得の自由の方が優先なのでは?という部分に腹落ちができず質問いたしました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/07/11 11:24 ID:QA-0155279大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、年5日指定に関しましては年休取得促進が狙いの定めになりますので、事前に当人から取得希望日の申し出があればそちらを優先される事が必要といえます。勿論、年5日取得済みの従業員に対して取得日指定をされる事は原則認められません。
投稿日:2025/07/11 11:15 ID:QA-0155278
相談者より
回答をありがとうございました。
該当従業員に対してのアプローチについて
法令遵守にて再提議いたします。
ありがとうございました。
投稿日:2025/07/11 17:22 ID:QA-0155326大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
結論、時季指定権の方が優先されます。
が、時季指定権を行使する為には、就業規則への規定が必要ですので、
確実にご対応ください。
以下、参考URLです。規定がなければ規定いただく必要があります。
https://www.mhlw.go.jp/content/000510007.pdf
投稿日:2025/07/11 11:45 ID:QA-0155287
相談者より
質問にたいしてコメントをありがとうございました。
対応について、法令遵守で提議しようと思います。
ありがとうございました。
投稿日:2025/07/11 17:21 ID:QA-0155325大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
有休取得の自由が原則です。
有休の時季指定をする場合でも、
労働者に意見聴取を行い、労働者の意見を尊重することが義務づけられており、
会社が一方的に時季指定はできません。
また、5日以上取得している従業員に対しては時季指定できません。
投稿日:2025/07/11 14:26 ID:QA-0155309
相談者より
質問へのコメントをありがとうございます。
強制ができない旨、再度、担当部署に認識を促し、訂正の声掛けを行うようにいたします。
ありがとうございました。
投稿日:2025/07/14 15:30 ID:QA-0155395大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
時季指定(権利と義務)
以下、回答させていただきます。
(1)第39条第5項の労働者の「時季指定権」については、次のように解されてい
ます。
「労働者が具体的な月日を指定した場合には、客観的に本項ただし書の事
由があって使用者が時季変更権を行使する場合のほかは、当然に当該月
日が休暇日となる。」(「労働基準法 上」厚生労働省労働基準局編)
(2)一方、第39条第7項の使用者の「時季指定義務」については、次のように解
されています。
1)「使用者による時季指定により与えなければならない年次有給休暇は、
1年間に5日である。5日を超える日数については、労働者の個人的事
由による取得のために労働者の指定した時季に与えられるものとして
一定の日数を留保する観点から、使用者が時季指定をすることはでき
ない。この「5日」からは、労働者による時季指定又は計画的付与で
与えた年休があるときは、その日数を控除する。」
(「労働基準法 上」厚生労働省労働基準局編)
2)「使用者による時季指定により年休を与えるに当たっては、労働者から
の意見聴取を行わなければならない。すなわち、あらかじめ、使用者
による時季指定により当該年次有給休暇を与えることを当該労働者に
明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなけれ
ばならない。」(施行規則第24条の6第1項)。
(「労働基準法 上」厚生労働省労働基準局編)
3)「使用者が時季指定を行うと年休日が確定し、当該日の就労義務がなく
なる。
一旦指定された時季の変更は、使用者が労働者の意見聴取の手続を再
度行い、その意見を尊重することによって変更することは可能であ
る。また、使用者が指定した時季について、労働者が変更することは
できないが、使用者が指定した後に労働者に変更の希望があれば、使
用者は再度意見を聴取し、その意見を尊重することが望ましい(平
30.12.28 基発1228第15号)。」
(「労働基準法 上」厚生労働省労働基準局編)
(2)以上を踏まえれば、「第5項に基づく時季指定」と「第7項に基づく時季指
定」との関係については、以下のように認識されます。
1)労働者によって時季指定された「年休日」があるときは、使用者の時
季指定義務「5日」から、その日数が控除されること。
2)使用者によって時季指定された「年休日」については、労働者は変更
することはできないこと。
3)労働者、使用者いずれも時季指定していない月日(労働日)について
は、労働者は常時時季指定をすることができる一方で、使用者が時季指
定をする場合には労働者からの意見聴取が必要になること。
投稿日:2025/07/12 17:13 ID:QA-0155349
相談者より
質問に対するコメントをありがとうございました。
>使用者によって時季指定された「年休日」については、労働者は変更することはできないこと。
との事ですが、今回は「有給推奨日」であり、「年休日」ではありません。
この場合は、変更可能であるとの認識でよいでしょうか。
投稿日:2025/07/14 15:36 ID:QA-0155396大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
御質問
【御質問】
使用者によって時季指定された「年休日」については、労働者は変更することはできないこと。との事ですが、今回は「有給推奨日」であり、「年休日」ではありません。この場合は、変更可能であるとの認識でよいでしょうか。
【回答】
御質問有難うございました。
「有給推奨日」における年次有給休暇の取得は、「5項(時季指定権)」が該当すると考えられます。仮に、労働者が変更を希望した場合、これに応じる義務はなく、使用者側の任意のご判断になろうかと思われます。
投稿日:2025/07/14 18:59 ID:QA-0155413
相談者より
回答をありがとうございました。
それでは、別の方のコメントにもありましたが、既に5日を取得している、または年間での年休取得日を期初に5日以上設定している(設定時に、この有給推奨日については会社側はふれていません)場合は、いかがでしょうか。
上記の場合は、奨励日である事を考えると、強制力は無い様に思いますが、いかがでしょうか。
投稿日:2025/07/15 09:40 ID:QA-0155441大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
再々回答
ご質問をいただきまして有難うございます。
既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできないとされています。
よって、第7項ではなく、第5項が適用されることになります。
以下の資料がご参考になるのではないかと思われます。ご不明な点がありましたら、所轄の労働基準監督署に御相談いただきたく存じ上げます。
「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(厚生労働省)(抄)
時季指定を要しない場合
既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできません。
(※)労働者が自ら請求・取得した年次有給休暇の日数や、労使協定で計画的に取得日を定めて与えた年次有給休暇の日数(計画年休)については、その日数分を時季指定義務が課される年5日から控除する必要があります。
つまり、
・「使用者による時季指定」、「労働者自らの請求・取得」、「計画年休」のいずれかの方法で労働者に年5日以上の年次有給休暇を取得させれば足りる。
・これらいずれかの方法で取得させた年次有給休暇の合計が5日に達した時点で、使用者からの時季指定をする必要はなく、また、することもできないということです。
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000501911.pdf
投稿日:2025/07/15 18:05 ID:QA-0155476
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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