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『労政時報』調査記事
仕事の成果が落ち込んだらポストを外される?
「降格制度」の導入状況と問題点を探る

社員個人の能力や成果の落ち込みを理由に、役職や等級制度のグレードを低下させる「降格制度」。これまでの年功序列・終身雇用の人事システムの中では、係長→課長→部長と昇格していくことはあっても、部長から課長へ、課長から係長へなどと降格するケースはあまりありませんでした。それが今、成果主義の導入を契機に、「優秀な人材を早期に登用しよう」と課長・部長への昇進スピードが早まっている一方で、「職務と成果にギャップがあったら降格も」という制度も導入されていると言います。実際、どれくらいの企業が「降格制度」を導入しているのでしょうか。その狙いは何なのか。制度に問題点はないのでしょうか。2005年9月に労務行政研究所が行った実態調査から探ってみます(注参照)。

約60%の企業がすでに「降格制度」を導入している

懲戒処分や役職定年制、組織の再編・統合などで「降格」することもありますが、ここでは個人の能力や成果の落ち込みを理由として、役職や職能資格制度の資格が低下したり、職務等級制度のグレードが低下したりすることを「降格」として話を進めていきます。

ではまず、どのくらいの企業で「降格」の実態があるのでしょうか。表(1)をごらんください。

表(1) 降格制度の導入状況と実態

表(2) 「自己申告制度」を導入したのはいつ?


降格制度の実施状況に回答のあった134社の内容を見ると、制度として降格を定めている企業は全体の59.7%に達しています。そのうち降格の実態があるのは37.3%。3社に1社以上の割合で、能力や成果の落ち込みを処遇に反映された社員がいるという結果になっています。

降格制度があると答えた企業(80社)のうち、成果主義人事の導入年と降格制度の導入年の両方に回答のあった47社について見ると、ともに「2000~2004年」に導入した企業は63.8%に達しています。このことから、成果主義による人事制度の改定に伴い、降格を制度として組み込んだ企業が多いことがわかります。

資格・職務と成果のギャップを是正するのが狙い

降格制度を導入している企業には、どのような狙いがあるのでしょうか。

表(2)を見ると、「資格・職務と成果のギャップの是正、公正な処遇の実現」が76.3%と最も多くなっています。以下、「人事考課の公平性・納得性の向上」が59.2%、「従業員の意識改革、職責の自覚の醸成」が51.3%と続いており、この3項目はいずれも50%を超えていて、他の回答よりも割合が高くなっています。

表(2) 降格制度導入のねらい(複数回答)

表(3) 「自己申告」の実施回数は?


降格になる場合の要件(複数回答)で最も多かったのは、「一定期間における考課結果の累積」で79.2%。次いで「組織変更・人事異動」32.5%となっています。資格や等級ごとに基準年限を設けておき、その年限で昇進昇格しなければ降格するという「同一資格内での長期滞留」を要件とする企業はわずか5.2%にとどまりました。各社の降格要件を見ると、過去2年間の評価がいずれも最低評価であった場合に降格となるケースが多くなっています。

最大の問題は「降格者」のモチベーションが低下すること

では、「降格制度」を運用するうえで問題となる点はないのでしょうか。表(3)をごらんください。

表(3) 降格制度の問題点(複数回答)

表(5) 「自己申告制度」の効果は?

その問題点(複数回答)として最も多く挙げられたのは、「降格者のモチベーションが低下している」で35.5%。3社に1社が問題として認識していることがわかります。次いで、「降格させた後の配置が難しい」が30.6%、「評価者の評価が一定でないため、裏付けとなる評価の信頼性の確保が難しい」が29.0%と続きます。

降格させられた社員がやる気を失うというのは、社員個人の格付けとやる気が密接に結びついているということの証明かもしれません。降格の前提となる人事考課に客観性・納得性がないと、制度の運用はより難しくなるでしょう。その意味でも、人事考課の重要性が増していると言えます。

注)
ここでは、労務行政研究所が2005年6月1日から7月15日まで昇進・昇格、降格に関して独自調査を行い、その結果をまとめたプレスリリース(9月15日)を基にして、「日本の人事部」編集部が記事を作成しました。
同調査の対象は、全国証券市場の上場企業および店頭登録企業3653社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上)360社の合計4013社。そのうち137社から回答がありました。
表(1)(2)(3)は、労務行政研究所のプレスリリースに掲載のものを転載させていただきました。

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