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【第10回】ハラスメントの起きない職場にするために管理職ができることは?[前編を読む]

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ハラスメントの起きない職場にするために管理職ができることは?〈職場のモヤモヤ解決図鑑 【第10回】〉

元部下からハラスメントの相談を受けた山下課長。身近に起きた出来事に「もしかしたら自分の部署でもハラスメントが起きているかも?」と不安を募らせます。考えてみると、ハラスメントが起きやすい職場の特徴に思い当たるフシが……。管理職として、ハラスメントが起きにくい職場づくりのために、何ができるのでしょうか?

▼前編はこちら
【第9回】部下からハラスメント被害の相談を受けたら?すべきこととNGな言動を紹介

ハラスメントが起きやすい環境の特徴

ハラスメントはどこにでも発生しうる問題ですが、ハラスメントが過去にあった職場には、いくつかの共通点があります。

① コミュニケーションが少ない

第一にあげられるのが、コミュニケーションの少なさです。ハラスメントは、被害を受けた側が「嫌だ」と拒否できないような力関係の不均等さを利用して行われます。コミュニケーションの少なさが相手への誤解を生み、不公平感被害妄想、ねたみなどの負の感情を膨らませ、ハラスメントを引き起こす要因となります。

② 失敗が許されない雰囲気

精神的な攻撃、過大な要求といったハラスメントが起きる原因として考えられるのが、仕事に対する過大なストレスです。

売上目標を絶対に達成しなければいけない、ミスをするとミスした本人がひどく罰せられる。こうしたストレスは、立場の強いものから弱いものへと向かいます。失敗を許さない締め付けが、ハラスメントを生み出すとも考えられます。

③ 酷使されがちな労働環境

基本的な労働基準の遵守がおろそかになっている労働環境には、注意が必要です。長時間残業の常態化、有給取得がとりづらい雰囲気のある職場は、従業員を酷使することでハラスメントを誘発させる可能性があります。

管理職ができるハラスメントの起きにくい職場の作り方

ハラスメントが起きにくい職場づくりにあたって、管理職ができることはハラスメントへの理解を深めることです。「ハラスメントとは何か」「どのような行為がハラスメントに該当するのか」を学び理解することは、ハラスメントを防ぐ第一歩になります。

ハラスメントの正しい知識を持つ

ハラスメントとは何かを管理職が理解することが、ハラスメント防止につながります。相談を受けた際に「相談者の思い込み」「行為は指導熱心なだけ」などといった一方的な判断は禁物です。

さらに、代表的なハラスメントの類型や種類、具体的な事例を学ぶことも、ハラスメント防止対策に役立ちます。まずは「パワーハラスメント」「セクシャルハラスメント」「マタニティハラスメント」の定義を理解しましょう。

コミュニケーションの仕方を身に着ける

職場でパワー(権力)を持っている管理職は、自らがハラスメントの実行者になる危険性があります。チーム内で部下との親睦を深める、成績不振の部下をフォローする、こうした場面で伝え方を間違えると、ハラスメントになってしまうことも。自らの振る舞いを見直すには、アサーティブなコミュニケーションが役立ちます。

アサーティブなコミュニケーションとは?

本当に必要なこと、伝えたいと思っていることを、適切な言葉で伝えられるのがアサーティブなコミュニケーションです。アサーティブな態度とは、コミュニケーションの問題を「目の前で起きている問題」として捉え、解決を考えながら誠実に対等にふるまいます。それにより、気持ちの良い人間関係が生まれます。

気持ちのよい人間関係を築くコミュニケーション

アサーティブなコミュニケーションの例を二つ取り上げます。

要求、お願いするときのコツ

・相手を責めるのではなく、起きている問題で困っていることを具体的に伝える
・自分の要望、相手に代わってもらいたい行動を具体的に絞って伝える
・相手の事情や心境を想像し、耳を傾けて理解する

怒りで相手を責めないためのコツ

・頭に上った血を下げるクールダウンの方法を身に着ける
・小さな怒りは、なるべくその場で対処する
・自分の怒りを相手のせいにしない
・怒る前に、問題はなにか、自分の感じていること、望むことは何かを整理する

ハラスメントを起こさないマネジメントの工夫

ハラスメントが起きにくい職場づくりには、小さな積み重ねが大切です。部下やチーム内にメンタルの不調や人間関係のいざこざが発生していないか、日頃の様子に気に掛けましょう。

長時間労働の是正、有給完全消化、ノー残業デーなど、部下がリフレッシュできる体制を整えることが大切です。ハラスメントにつながるストレス要因を減らすことも、管理職が取り組めるハラスメント対策になります。

【まとめ】

  • コミュニケーションが少ない、仕事へのストレスが大きいといった労働環境はハラスメントにつながる要因を生む
  • ハラスメントとは何かを理解することが、管理職ができる対策の第一歩
  • アサーティブなコミュニケーションは、気持ちの良い人間関係を生む
  • 部下との接し方や働き方の体制の改善が、ハラスメントの起きにくい職場づくりにつながる

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参考書籍

職場のポジティブメンタルヘルス
職場のポジティブメンタルヘルス-現場で活かせる最新理論
著者:島津明人
出版社:誠信書房
「アンコンシャス・バイアス」マネジメント 最高のリーダーは自分を信じない
「アンコンシャス・バイアス」マネジメント
最高のリーダーは自分を信じない

著者:守屋智敬
出版社:かんき出版
パワーハラスメント<第2版>
パワーハラスメント<第2版>
著者:岡田康子、稲尾和泉
出版社:日本経済新聞出版社

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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