上司と部下の間の「評価ギャップ」を解消するには――?
人事評価への納得性を高めるための
目標設定・フィードバック面接と運用法
株式会社河合コンサルティング代表取締役
河合 克彦
4. 部下に納得してもらうための評価結果のフィードバックの仕方
評価は適切に行ったのですが、その結果をフィードバックする時の対応や話法の稚拙さから、納得性を損ねていることがあります。
フィードバックにおいては、事前に日時・場所を決めておき、たっぷり時間をとることに留意します。面接対話の基本的進め方は図表6の通りです。
目標評価フィードバックでは、図表7に示すように、目標項目1つひとつについて具体的に進めていきます。
5. 納得感のある目標管理制度運用とするための対策
目標管理の評価の納得性を高めるための方策をまとめると、次の通りです。
(1)目標設定時が最も重要
評価結果をフィードバックする時になって部下がもらす不満を問題とするようでは、遅いのです。不満が発生する原因のほとんどは、目標設定時にあります。目標設定の際のポイントは、次の2つです。
1. 達成基準を明確にする 2. 達成したときの評価の基準を明確にする
(2)目標は目標に挙げられた内容で評価する
本人の仕事とそれを評価する目の関係を図示すると、図表8のような関係にあります。目標になっているのは本人の仕事の一部です。目標の評価は、目標化された特定の仕事だけを評価すればよいのです。目標以外のことは評価にあたって考慮する必要はありません。丁度目の前にあるものを「虫の目」で見る感じです。
一方、目標以外の仕事(目標となっている仕事を含めて評価する場合もある)は、一般の評価項目(「仕事の質と量」「チームワーク」など)で評価します。これは「鳥の目」で見るように、広い視野で見るようにします。
(3)評価の納得性のベースは上司と部下の信頼関係
評価の納得性は、被評価者の主観です。被評価者が「うちの上司からは評価を受けたくない」と思っている場合は、どんなにしっかり評価を行っても、納得させることは困難です。上司・部下の信頼関係がベースになるということです。
(4)被評価者にも評価に関する基礎的知識が必要
目標の評価は目標に限定されるため、評価に関する知識をそれほど必要とはしないのですが、寛大化傾向や中心化傾向、絶対評価、相対評価についての知識は必要です。
目標の評価は、設定した目標を達成できたかを評価するのですから、絶対評価で行います。ところが、相対評 価の感覚で行ってしまう人もいます。その場合は中心化傾向が起こる可能性があります。中には目標の評価を相対評価で行うとしている企業もあります。この場 合は、企業のルールが相対評価であるためこれに従わざるを得ないのですが、目標の評価を相対評価でどうやって行うのかという疑問が残ります。
かわい・かつひこ ● 京都大学経済学部卒業。(株)富士銀行、(株)富士総合研究所出向を経て、現在(株)河合コンサルティング代表取締役。人事管理を中心としたコンサルティング歴28年。中小企業診断士。著書に、『一次評価者のための目標管理入門』『一次評価者のための人事評価入門』(いずれも日本経済新聞出版社、共著)『要員・総額人件費マネジメント』(日本生産性本部生産性労働情報センター)『役割目標によるマネジメント』(同、共著)『真実の成果主義』(中央経済社)ほか多数ある。
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