給与過払い金の返還について
退職後の元社員に対して給与の一部について返還を求めておりますが振込が滞っており、
会社として何か対応ができないか困っております。
現実的に難しいとは思いますが法的に追及が可能かどうかご教示頂けますと幸いです。
<給与締日>※前提
末日締め、当月20日払い
※給与計算は当月の15日前後までに完了させ、毎月20日に基本給(諸手当含む)のみ支給しております
※月内の勤務実績に基づいて翌月給与に残業代の支給や遅刻早退、欠勤分の控除を行っております
<事象>
7月末に退職した元社員が退職月である7月に8日欠勤し、8月分(退職後)の給与明細上においてマイナスが計上されております。マイナス分について期日までに振込(返還)を依頼しておりますが入金が確認できず困惑しております。
<相談内容>
締日と支給日の見直しをはかれば本質的に解決できる事象ですがインパクトが大きく社内で熟考する必要があります。そこで現状、上記のような事象について法的(又はそれ以外)に解決する方法がないかご教示下さい。
投稿日:2019/10/15 15:07 ID:QA-0087664
- TEE862さん
- 東京都/情報処理・ソフトウェア(企業規模 31~50人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
原則として全額返還請求が可能だが・・・
▼ 先ず、過誤払賃金の返還請求の法的な定めを抑えた上で、具体的措置を考えるのが明確、且つ、早道だと思います。以下、ポイントを簡潔に列挙します。
① 過払賃金に対しては、使用者に不当利得返還請求権が生じます。使用者側の過失の有無は問われない。
② 本人が過払い事実を知らなかった(善意)場合、過払部分に対し、返還請求できる(民703条)。
③ 本人が過払いの事実を知っていた(悪意)場合、過払部分に対し、法定利息を付けて返還請求できる(民404条)。
④ 使用者からの過払部分についての不当利得返還請求権の消滅時効が発生する(民167条1項)。
⑤ 給与担当者に故意または過失がある場合には、過払部分に就き、損害賠償をさせることができる場合がある(民415条または709条)。
⑥ 賃金は全額払いが原則とされており、原則として、賃金から過払部分を控除することはできない(労基法24条1項本文)。
⑦ 但し、過払部分を賃金から控除するという内容の労使協定がある場合には、例外として控除が認められる(労基法24条1項 但書き)。
⑧ 尤も、使用者が過払いを受けた本人の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的理由が客観的に存在する場合には、相殺は全額払いの原則に反しないとする判例もある。然し、余り、判例に依拠するには、慎重が求められる。
▼ 以上の諸点を踏まえた上で、「過払全額に利息を付けて返還請求」~「本件発覚した時点迄の過払全額返還免除」の幅広い選択圏における決定は、御社次第としか申し上げられません
投稿日:2019/10/16 11:47 ID:QA-0087699
相談者より
基本的な概念が理解でき大変参考になりました。
ご回答頂き有難うございました。
投稿日:2019/10/16 19:02 ID:QA-0087718大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、当人に返還義務がある事は明白ですので、法的な問題というよりもいかにして回収されるかといった実務対応面での問題といえます。
具体的な対応としましては、振り込みを待っているだけでは見込みはなさそうですので、電話や文書で期限を切られての督促をされるべきといえます。それでも反応がなければ直接自宅を訪問されることも必要といえるでしょう。それでも埒が開かない場合には訴訟という手段がございますので、お近くの弁護士にご相談される事をお勧めいたします。
投稿日:2019/10/16 17:52 ID:QA-0087710
相談者より
実務的な対応方法をご回答頂き大変参考になりました。
ご回答頂き有難うございました。
投稿日:2019/10/16 19:03 ID:QA-0087719大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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