労働契約法規定の不合理な労働条件の相違について(通勤手当)
改正労働契約法に関する通知で、(有期と無期の雇用条件について)「とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して特段の理由がない限り合理的とは認められないと解されるものであること。」とされています。
弊社では、通勤手当について、正規職員と有期雇用の間で計算方法は同じですが、上限額が異なります。
正規職員は55,000円が上限で、臨時職員は12,000円が上限の設定です。
この、上限額の相違の違法性についての質問です。
正規職員は異動もあり、遠方への転勤も想定されます。その場合、JR特急を利用したり高速道路を使って自宅から通勤することも想定されます。
一方、臨時職員は異動がなく、臨時職員は上限額の範囲内で収まる場所から通勤することを前提として設計となっています。
有期と無期との間の労働条件の相違が合理的かどうかの判断基準として、異動の有無等も示されていることから合理的な差別である、と考えています。
しかし、遠方から通勤する臨時職員もおり、この上限額に収まらない場合もあります。
この場合であっても、採用時に通勤手当の上限額を示しており、それを承知で応募したのであり、当該通勤手当の上限について違法性を主張することは出来ないと考えています。
現状、違法性や問題点はないでしょうか。
改正労働契約法施行前に採用された非常勤職員は、改正により状況が変わったため違法性を主張できるようにも思えます。
判例がない中ですが、皆さまの見解をお聞かせいただければと思います。
よろしくお願いいたします。
投稿日:2014/04/30 05:53 ID:QA-0058668
- su-soumuさん
- 島根県/公共団体・政府機関(企業規模 51~100人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
5.5万円上限は、 遠方への転勤者に限るのが筋
法20条は、 雇用期間の有期・無期間の不合理な労働条件の禁止に関する定めですが、 その具体的判断は、 詰るところ、 「 労務対価性の濃淡区分 」 にあると推測しています。 職務、 役割など、 業務に直接に関わる基本給など、 労務対価性の強い労働条件に就いては、 両者間で相違があっても、 合理的とされる反面、 福利厚生、 安全管理など、 労務対価性の薄い労働条件に関する相違は、 不合理とされる訳です。 問題の通勤手当ですが、 次のような特性があります。 ① 本来は、労務提供場所までの移動経費は債務者 ( 労働者 ) 負担、 ② 会計上は給与だが、 福利厚生的性格が強く、 労務対価性が薄いので、 地位・勤続年数・考課による区分はされない。 ③ 税法上も、 一定の限度内で非課税とされている。 即ち、 限りなく、 福利厚生色の強い項目なので、 ご引用のような、 厚労省通知で、 「 特段の理由がない限り合理的とは認められない 」 とされているわけで、 それ自体は、 正しい指針だと思います。 但し、 法は、 汎用的ケースに対する基本的判断示しているに過ぎないので、 付帯条件の 「 特段の理由 」 がれば不合理とされない訳です。 ご主張の、 《 「 異動義務の有無 」 が、 「 特段の理由 」 に該当し、 「 通勤手当支給上限額の相違 」 は 「 不合理な労働条件 」 はならないという 》 のも一理あるとは思います。 然し、 考えとしては、 5.5万円上限は、 遠方への転勤者に限られるべきであり、 それ以外は、有期契約社員と同様、 1..2万円上限を適用するのが筋ではないかと思考致します。
投稿日:2014/04/30 12:27 ID:QA-0058675
相談者より
法律の趣旨について「労務対価性の濃淡区分」という非常に分かりやすい説明をいただき、大変参考になりました。
その上での違法性判断についても、一つのご見解をいただき、今後の参考にさせていただきたいと思います。
投稿日:2014/05/06 15:44 ID:QA-0058783大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
不合理な労働条件と通勤手当
通勤手当について、有期社員と無期社員で違いがあるには、合理的な理由があるかないかということになります。ご質問のないようでは臨時社員は異動がなく、近場からの通勤を想定されていますので、正社員と通勤手当の上限がちがったとしても問題はないと思われます。
結果的に上限を超えたとしても、雇い入れ時にそのことを説明し、合意を得ていれば不合理とは言えないでしょう。
改正前~について、この改正は有期契約者に不利になったものではありませんので、そのような危惧はわかりかねますが、
会社として、今までの通勤手当を減額するということになりますと不利益変更となりますので、原則として個別合意が必要となります。
投稿日:2014/04/30 13:16 ID:QA-0058681
相談者より
異動や転勤の有無により条件に差を設けることの妥当性についての見解を示していただき、ありがとうございます。
今後、判例等を注意深く探していきたいと思います。
投稿日:2014/05/06 15:42 ID:QA-0058782大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、確かに通勤手当の異なる支給条件に関しましては、通常合理性が認められないものとされています。
一方で、文面通知にもございますように、 特段の理由があれば合理性が認められる場合もございます。こうした点につきましては、採用時期の改正前後に関係ございません。
文面内容からしますと、当事案の場合、直ちに違法性があるとまで言い切れないでしょう。しかしながら、実際に遠方から通勤する臨時職員もいらっしゃるという事であれば、相応の理由があっての採用と考えられますし、単に非常勤だからという理由で通勤手当支給額に大きな差を設けるのは合理性に欠ける面もあるものと考えられます。
加えまして、恐らくこうしたケースに関しましてはごく少数事例に限られるはずですので、違法性有無判断の結論に関わらず、全額支給される方向性でいかれるのが妥当ではというのが私共の見解になります。
投稿日:2014/04/30 14:28 ID:QA-0058688
相談者より
ありがとうございます。
違法性有無判断の結論に関わらず-ということですが、それでは規程の改正について上層部への説明に困るという実態があります。
と、ここは、説明不足の点でした。
投稿日:2014/05/06 15:39 ID:QA-0058781参考になった
プロフェッショナルからの回答
仕分け
両者は同一条件とはいえないようですので、差があってただちに違法とはいえないでしょう。(ゆえに「差別」だとは思いません)
ただしご提示の「遠方から通勤する臨時職員もおり」が例外なのか、なし崩しなのかは重要です。採用時にこの条件の違いを提示し、了解した上で入社する等一筆取っておくべきでしょう。それでも割合が「例外」とはいえないくらい増えてくれば、別途制度を勘案すべきです。
投稿日:2014/04/30 21:54 ID:QA-0058701
相談者より
ありがとうございます。
ただ、一筆いただいても、制度そのものが違法なら、当該一筆も無効という判断になるような気もします。
投稿日:2014/05/06 15:36 ID:QA-0058780参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
問題が解決していない方はこちら
-
マイカー通勤者の通勤交通費について ほとんどがマイカー通勤者ですが、... [2005/09/14]
-
通勤費について 弊社の通勤費の規定には弊社から1... [2011/10/14]
-
通勤手当の清算による減額と月変 当社では、従業員が引越し等により... [2016/06/23]
-
申請通勤手段と異なる通勤手段による通勤災害について 当社では、従業員に通勤手段、経路... [2012/07/19]
-
通勤費への課税について マイカー通勤者の通勤手当への課税... [2009/11/16]
-
通勤手当の支給 現在、1か月分の定期代を通勤手当... [2006/04/25]
-
通勤途中に不審者 通勤途中に不審者にあったと相談を... [2018/12/19]
-
通勤手当の改定について 当社では「就業規則」に「給与は別... [2014/03/05]
-
通勤手当の支給範囲について 通勤手当の支給範囲について、どの... [2005/12/13]
-
通勤路の申請と自転車通勤 マイカー通勤時に会社へ通勤経路の... [2011/08/03]
お気軽にご利用ください。
社労士などの専門家がお答えします。
関連する書式・テンプレート
通勤方法届
通勤方法の届出テンプレートです。。是非ご利用ください。
マイカー通勤規定
マイカー通勤を許可制にする際に必要な規定の例です。
マイカー通勤申請書
マイカー通勤を許可制で認める際に必要な申請書のテンプレートです。
通勤交通費申請書(定期券)(見本2)
通勤交通費申請書(定期券)のテンプレートです。